懲罰
訓練所内に箒をはく清掃の音が静かに響く。
先輩たちが飛竜を駆って訓練に勤しむ中、セストリアを捕らえた功労者であるはずのリューは鎧を脱いで広い訓練所をひたすらに掃除をしている。
理由は単純。
セストリアを捕らえたことで夜間の無断外出がバレたから。
夜間の無断外出は本来は軍規違反であり、脱走とみなされて懲戒処分もあり得るのではあるが、セストリアを捕らえた功労を考慮され、カレッサの認可の下で厳重注意の上に訓練所全体の清掃ですまされた。
「……疲れた」
十二月の夏。
日差しの強さも相まってリューが箒を置いて木陰で少し休む。
遠くには大きな箒で飛行場の掃除をしているチィの姿。
後ろ足で立ち、前足を器用に動かしてゴミを集め、加減したブレスで焼却する。
「・・・・・」
セストリアとの面会を終え、再び訓練所に戻ったカレッサ。
千軍万馬を一息で消し去るという魔龍が、まるで使用人のように箒を持って清掃している姿に、思わず立ち止まる。
「将軍」
「…アイーラ、どうした?」
「セストリアの様子はいかがでしたか?」
「以前会った時とはまるで別人のようであった。
あの様子ではもう何もできないだろう」
「奴隷として売りますか?」
「いや、処刑する」
冷徹に答える。
「先日、セントリオ商会から連絡があった。
奴隷を乗せた交易船が消息を絶ち、計画の見直しを行っている最中だそうだ。
戦費は十分に回収した以上、わざわざ交易の再開を待つ必要はない」
「そうですか。して、執行はいつごろに?」
「十二月三十一日だ。
戦争の後処理は今年中にすべて終わらせる」
はっきりと断言するカレッサ。
そのころ、リューは二人の存在に気が付くと、さぼりがバレないように慌てて箒を手に取り掃除を再開する。




