失意
十二月十七日。
パーラ湾中央レイグスコ城塞。
湾の四方を無数の魔道砲が守る中、1隻の船が停泊所に到着する。
タラップが降ろされ、両手枷を嵌めたセストリアが二人のガンダル王国兵に挟まれる形で粗末な衣服で連行される。
「....」
国が滅び、フォリエを始めとする同胞さえも全て失った。
今の自分には剣を取って戦う力も、人の上に立つ資格すらない。
自らの意思で、牢への階段を一歩ずつ登る。
狭間からは海を埋め尽くす艦隊が見え、その中には城塞をそのまま浮かべたような魔道戦艦が見える。
百二十メートルはある戦艦。
船首に大口径砲、両舷に副砲を備えており、中央には提督が指揮するための城塞がそびえている。
ヴァルディア帝国製の戦闘艦であり、これまで戦場において一度も沈められたことがない。
「入れ」
促され、牢の一室に入る。
無機質な座敷牢。
波の音と港の喧騒だけが、静かに響き渡る。
「.......」
壁に背を預け、俯く。
牢の扉がガシャンと音を立てて閉められる。
(レイリアは、完全に滅ぶのだな…)
もはや王家の人間は自分以外を除いてこの大陸にはいないだろう。
そして王家の血を引く自分を生かしておく必要もない。
下の階から、階段を登る大勢の足音が響く。
「カレッサか。
私を殺しに来たか?」
鉄格子の先にいるカレッサを一瞥し、力なく声をかける。
「…一つだけ聞く。
陛下のために働く気はあるか?」
「カレッサ、何の冗談だ?
私が祖国を滅ぼした敵に仕えると思うか?
さっさと殺せ。
もう、生きていたくはない」
全てを失った挙句、仇敵から情けを掛けられたことにセストリアのプライドは完全に砕けた。
「そうか。
残念だ」
それだけを言うと、踵を返してカレッサは去る。
しばらくしカレッサの命令の下、レイグスコ城塞にてセストリアの処刑が決定される。




