抗うもの達
十二月十五日、旧レイリア王国領北部、ノーザリア森林。
増水したガナダー河の流れる轟音が響き渡る中、セストリア率いるレジスタンスはガンダル王国軍に気付かれないように森の奥地に小さな拠点を築いた。
遺跡からの道中、通過地の小規模な農場を襲撃しては同胞を解放し、戦力を増強。
また、王国軍の追撃を遅らせるべく、ガナダー河に架かる橋をモンスターの仕業に見せかけて焼いた。
「ワグス港を狙う」
簡素な木造の家屋。
伐採したての木の香りが漂う中、セストリアはそう宣言すると、農場から奪い取った資料をテーブルの上に広げる。
「本格的な反撃の手始めとして、まずは主要な兵站地であるワグス港を落とす。
資料によると、収穫した作物の大部分はワグス港に集められ、ガンダルに運ばれる。
レイリアの国民からから搾取した食料だ。
私達の手で必ず奪い返す」
強い意志で決断するセストリア。
「しかしセストリア様、この港を攻略するには人数も物資も足りません。
同胞を解放して戦力を集める作戦も、限界が近いです」
第二王女でもあるセストリアに諫言するフォリエ。
農奴とされた同胞をガンダル王国から解放し、レジスタンスに編成していたセストリア達。
しかし、今の状態では小規模な農場を襲うのが精一杯であり、その上で王国の対応も農場の警備兵を増員するなど素早く、行き詰まり感が強くなっている。
「....ガンダル王国軍に反感を抱く勢力があるはずだ、それと手を組もう。
どんな見返りを要求されるか分からないが、このままよりはマシだ」
「行き当たりばったりですね...」
ぽつりとつぶやくフォリエ。
全てにおいて余裕がない現状、長期的な計画を立てられる時間はない。
「しかし、何を対価に交渉しますか?
こちらが差し出せるようなものなんて…」
「...」
沈黙。
勢いで言ったはいいものの、生きるだけで精一杯の自分たちには何も取引材料がないという現実がとても重くのしかかってくる。
結局、この日は何も進展のないまま日が暮れる。
目立つことを警戒して火を焚くことができないため、夜の番だけを残して就寝する。
「・・・・・・」
月夜だけが降り注ぐ深夜。
夜の見張りを頼まれたサスとイリアムの兄妹。
木の上にのぼり、弓を背負って遠くを見張る。
一帯に響くガナダー河の音。
音を頼ることができないため、その分を目や嗅覚などの感覚を研ぎ澄ませて警戒する。
「...何かいる」
視界の奥になにかの存在を捉えたサス。
気から木へと飛び移り、その正体を確かめに行く。
「ミノタウロス!」
視界の先にいたのは牛獣ミノタウロス。
牛の姿をした二足歩行のモンスターであり、手には巨大なハンマーを持っている。
「ブモォオォオォォ!!!!!」
森中に響き渡るミノタウロスの怒声。
縄張りをの森を荒らされたと思って激怒したのだろう。
「ミノタウロスだ!イリアム、セストリア様に伝えろ!」
叫ぶサス。
直後、彼の登っていた大木がミノタウロスのハンマーの横振りでへし折られ、サスが落下。
全身を仰向けに地面に打ち付ける。
「イリアム、ごめん」
彼が最期に見たのは、自身めがけて振り下ろされるハンマーだった。




