夜空
十二月十四日、深夜。
大陸の上空をセントリオ商会の飛空艇が飛ぶ。
西海岸のパーラ湾から東のワグス港。
四十kmの巡航速度で一日を掛けて大陸を横断する
「さて、そろそろ貸した船を返してもらいませんとね」
下着姿のブラウがベッドの上で寝息を立てている隣、オルランは魔法灯のランプの明かりを頼りに筆を動かして戦後の商売についての計画を立てる。
王国軍に貸した千を超える交易船。
戦争の趨勢の決した現在、王国が持て余しているであろうこれをレンタル料込みですべて返還してもらう。
さらにこの度の戦争で得た莫大な利益を元手にヴァルディアから発注した三十五隻の輸送用の飛空艇。
すでに三隻がモリアスに運び込まれ、残りはパーラ湾とワグス港の飛行場を中心に配備する予定。
特にパーラは王国の戦後の経済政策においての要地であり、それに乗っかろうとすでに多額の金をかけて土地の買収と飛行場の拡張、保有する港湾設備の強化工事を行っているほか、護衛として竜騎士の雇用も考えている。
また、北方の魔鉱山の件に関してもこの一か月間で前向きに話を進めており、あわよくば捕獲したドラゴンさえも商売のタネにできないかと思案する。
「・・・・・・」
計画を記す筆が止まる。
脳裏に浮かぶはサクルティスの姿。
同郷の幼馴染であり、一緒に商会を盛り立てた。
仕事においては最も信頼している実力者であり、一番利益の出る交易部門を取り仕切らせた。
「サクルティス、君は今どこにいる?」
彼の声に応える者はいない。
大まかな計画書を記し、甲板に出る。
高空の冷たい風、彼の豊かな髭が大きく揺れる。
すると、飛空艇の後ろから一匹の黒いドラゴンがやってくる。
何事かと思って望遠鏡で見ると、そこには魔龍に乗った銀髪の少女リュー。
訓練所をこっそりと抜け出し、ヘルメットを外しながらパートナーと夜空を飛んでいる。
飛空艇を高速で追い抜いてゆく魔龍の騎士。
すごいものを見たと、内心驚きながらオルランは自室に戻る。
静寂の夜空に包まれて、飛空艇はワグスの港へと向かう。




