金城鉄壁
十二月十ニ日。
この日、パーラ湾に一隻の飛空艇が降り立つ。
王国軍の軍旗の紋章が描かれた巨大な飛空艇。
タラップが降ろされ、そこから今回の戦役で受勲された太陽を象った勲章を身に付けた将軍カレッサが降り立つ。
「総員、敬礼!」
王国軍の総帥であるカレッサ将軍に対して、集まった全ての竜騎兵が片膝をついて敬意を示す。
「面を上げよ」
カレッサの言葉に従い、全員が顔をあげる。
「此度の戦争は我々の勝利に終わった。
今もまだ残存勢力が抵抗を続けているが、来月の中頃までには掃討が完了するだろう。
みな、ご苦労だった」
麾下の兵団の功労を労うカレッサ。
「そこでだ、諸君たち将兵には特別に年末年始の休暇を与えることとする。
故郷に戻って家族と共に新年と王国の勝利を祝うが良い」
「ありがとうございます!」
将軍からの思いがけない言葉に喜ぶ竜騎兵達。
「だが...」
ごほんと咳払いをして竜騎兵達を牽制すると、カレッサは言葉を続ける。
「諸君たち竜騎兵は王国の花形であり、国民の憧れでもある。
休暇と言えども醜態を晒すような真似は許さん」
「は、承知いたしました!」
竜騎兵達がそう返すと、次はその教官であるアイーラにカレッサが言葉を向ける。
「陛下は今後、西方のヴァルディア大陸との交易により一層の力をお入れになるつもりだ。
その先駆けとして、ヴァルディアより飛空艇の輸入が進んでいる。
今後、このセイバスト海においてパーラ湾の重要度はさらに増してゆくことになる。
決して落とされるような事がないように訓練に勤しめ。
尤も、これだけの守りを抜けるような脅威があるとは思えんがな」
竜騎兵に魔道砲を詰め込んだ要塞、無数の軍艦。
金城鉄壁と呼ぶにふさわしい守りのパーラ湾を一瞥し、カレッサはふてぶてしく笑う。
「時にアイーラ、部下に魔龍を従えている者がいるそうだな?
どこにいる?」
「は、現在は訓練を兼ねて哨戒任務に当たらせております。
もうすぐ戻ってくるかと」
空を向くと、遠くに二騎の竜騎兵。
ワイバーンに先導されながら、魔龍と呼ばれる黒いドラゴンが着陸する。
「驚いた、まだ子供ではないか!」
ヘルメットを脱いだリューの姿に驚くカレッサ。
リューもカレッサの存在に一瞬驚くも、すぐに前に出て片膝を付いて将軍に敬意を示す。




