決議
「以上が、本作戦の初動案となります」
会議室に、エルの発言が静かに響く。
チャーリー長官の前には、議会提出用にエルが書き直した、赤い印が記入されたフォセストリア大陸の地図と攻撃目標と空母部隊の布陣案を記したパーラ湾とワグス港の地図。
パーラにはタモン長官の指揮する第二機動艦隊。
ワグスにはエルが指揮する第一機動艦隊と陸軍上陸部隊、特殊作戦一個中隊を向かわせる計画。
「上陸地点にワグスを選んだ理由としましては、この地には輸送船が多く配置されている一方、脅威となる軍艦、とくに砲艦が少なく、短期の攻撃で上陸時の脅威を排除しきれると判断いたしました」
「そうか、わかった。
奇襲決行の日付けは?」
「十二月三十一日です」
「よろしい。
現在、開戦に向けて内務省を中心に戦時体制への移行及び、軍需品の生産輸送の計画を大至急で進めている。
本会議終了後、この案を大統領府に提出、戦時体制に完全に移行する。
もう後戻りはできない。
全員、覚悟を決めろ」
「ハッ!」
長官の言葉に出席者たちは覚悟を決める。
会議を終え、国防総省の門から次々と公用車が出てゆく。
「…」
車に揺られながら、後部座席に乗るチャーリーは首都の景色を眺めながら、次の計画について思案する。
終戦計画。
戦争は始めるよりも終わらせる方がはるかに難しい。
レイリアの民がそうであるように、王都を落としたところでその瞬間に戦闘が終わるわけではない。
むしろ、その後の掃討戦や政治的混乱の終息など、戦争よりも遥かに複雑で難しい問題が起こる。
(我々の目的はあくまでもレイリア王国の救援と外交から得られる国益だ。
ガンダル王国を滅ぼすことではない)
未知の大陸で起きた事案、慎重に事に臨まなくてはならない。
首都高速を走ること三十分、大統領府に着く。
護衛官のボディチェックを済ませ、大統領に面会する。
「本議会にて決議された決議書です。
ご確認をお願いいたします」
分厚い決議書を受け取る大統領。
長い条文を、相応の時間を掛けて読み進める。
「理解した、近いうちに国民たちにも公表する。
最善の結果を期待する」
「は、承知いたしました」
大統領に一礼し、チャーリーは大統領府を出る。




