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フォセストリア戦記  作者: 影光
二章 表 軍事介入
22/77

取引

「そうですか」

 省内の宿舎。

 会議の結果を聞いたガロンが、静かに落胆する。

「たった一ヶ月の準備期間で最大限の効果を出すとなれば、敵の情報は不可欠だ。

 一度の攻撃で、敵の兵站をピンポイントで破壊する。

 それが最低条件だ」

「……」

 エルの言葉にガロンは考える。

 ガンダル王国の事情に精通しており、現在接触できる人物。

 それに一人だけ、心当たりがあった。

「閣下、次の会議まで、少し時間をいただけますか?」

「何をするつもりだ?」

「ガンダル王国の情報を集めてきます」

 エルからの許可をもらい、車に乗って国防総省から離れていくガロン。

 首都を通る高速道路を走ること、およそ二時間。

 海警局の収容施設が見えてくる。

「第二海軍中将のガロン・エルカウラです。

 現在収容されているサクルティスとの面会をお願いしたい」

 ウルスラ海で人身売買の容疑で拘束されたサクルティス。

 調書ではガンダル王国に属するセントリオ商会の幹部であり、交易部門における最高責任者である。

 面会の手続きを終えて一時間後、職員に案内される形で面会所へと向かう。

 金網で隔てられた部屋。

 二人の職員を伴ってサクルティスが金網の向こうにやってくる。

「お久しぶりです」

「…」

 あくまで丁寧に接するガロンに対し、サクルティスは「何の用だ?」と返す。

「取引をしましょう、貴方とその部下を釈放する代わりに、我々にご協力いただきたい」

「何!?」

 まさかの話に驚くサクルティス。

 さながら、暗闇の中に一筋の光が差した如く。

「…単刀直入に言います。

 ガンダル王国軍の兵站に関する情報を教えていただきたい」

 職員の了承の下、押収した地図とペンを専用の入り口から渡す。

「我々は、レイリア王国の救援のため、ガンダル王国を攻撃目標に軍事介入を計画しております。

 王国民の犠牲を最小限に抑えるため、急所である兵站の要衝をピンポイントで攻撃したい。

 ご協力願えますね?」

「な…」

 絶句するサクルティス。

 ガロンの口調は穏やかではあるが、その内容は「協力しなければ圧倒的軍事力で王国を壊滅させる」という旨。

「ま、待ってください。

 私はただの交易商で…」

「押収した帳簿によりますと、貴方の商会は王国軍からの依頼も受け付けているようですね?

 なら、今回の戦争における軍需物資の輸送も任されているはず」

「…その通りです」

 観念したのか、口を割る。

「ガンダル王国の主な輸送手段は、海上です。

 陸路はモンスターを避けるために、交易に使われる主要な道路しか使いません。

 大陸を流れる大きな川がありますが、上流が雨期のため水流が激しく、今は使われておりません。

 …こことここ、そしてここです」

 地図に記された港と陸地の主な交易路を赤線でなぞるサクルティス。

 パーラ湾とワグスの港、そしてガンダル王国からレイリアの首都へと続く主要な交易路。

「パーラ湾には軍船が、ワグスには当商会から借り上げた輸送船が多数停泊しております。

交易路の途上には商業用の都市がいくつかあり、最低限の守りしかありません」

「王国軍の次の攻撃目標はわかりますか?」

「おろらく、残存戦力の掃討に取り掛かっているころかと」

「わかりました、ありがとうございます」

 地図を受けとり、すっと立ち上がるガロン。

「ほ、本当に釈放してくれるんだな!?」

「もちろんです。

 当国において貴方の身の安全を保障いたします」

 そう言って海警局を去るガロン。

 一週間後、サクルティス達は嫌疑不十分として釈放され、政府の保護観察下に置かれる。

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