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フォセストリア戦記  作者: 影光
二章 表 軍事介入
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ガロンとエレナ

 エルとヘルブレードがチェスの対局している頃、国防総省の四階のカフェのバルコニー席にガロンとエレナはいた。

 山岳に建てられているとあって、バルコニーからは遠くの大統領府を始めとする首都の壮観な景色が見える。

 高所特有の清澄な風にエレナの白灰色の髪が揺れる。

「魔王様の付き人には慣れたか?」

 白いガーデンパラソルの下、席に座りながら同じ中将のエレナに問いかけるガロン。

 目の前には彼が注文したコーヒーとチョコレートケーキが置かれている。

「正直、疲れる」

 手すりに両手の平を付き、マントを靡かせながら背中を向けてガロンにタメ口で答える。

 年齢はエレナの方が遥かに下ではあるが、軍では歳よりも階級が絶対視される。

「閣下のおとぎ話の趣味に付き合わされる上に、上陸した街を護衛もなしに動き回ったりと自由人すぎる。

 この前なんか海洋竜の縄張りを航行中に艦橋で居眠りをされていた」

「...お前も大変だな」

「そういうガロンこそ、女帝様に振り回されているのではないか?」

「まあな」

 女帝ことエル・ゼナ。

 国益を第一に考え、滅私奉公の精神を持つ一方、高慢であり非情な一面を持つ

「三ヶ月前の北方への遠征では「観戦武官に徹する」と言って艦隊司令官を俺に委任された。

 モンスターの攻撃でメリオスも危うく沈みかけた」

「メリオスを沈めかけるモンスターか、それこそ私たちの出番ではなかったのか?」

「当初は試験航海と現地で行われるモンスターの討伐作戦の観戦武官を兼ねて向かった。

 だが、想定を超えるモンスターの危険性にメリオスとミラオスを提督の判断で参戦させた」

 当時のことを振り返るガロン。

 頭に光輪を浮かばせた、五百メートルはある蛇型の竜。

 どの既存種に属さない分類不明種であり、あらゆる存在を喰らい尽くす巨竜。

 ひとたび現れれば海は血のように赤く染まり、霧に包まれる。

 そんな常軌を逸した存在に、現地のハンターたちは果敢に挑み、そして勝利を収めた。

「....」

 コーヒーをすするガロン。

 直後に、店員がいちごのパフェを持ってくる。

 最高級品のイチゴとクリームをふんだんに使った贅沢で豪華なメニュー。

「どうした?」

 怪訝な表情でガロンの対面の席に座り、スプーンをとる。

「ペルーダ補佐官のことだ」

 コーヒーカップを置き、納得のいかない表情で続ける。

「あの日、ペルーダ補佐官は北方での作戦のほとんどを国家機密に指定した。

 箝口令が敷かれ、閣下や司令長官を含む全員が口外を禁止された。

 報告書も、モンスターの名前を始め、参戦者の名前や現場の地名まで、ほとんどが検閲された。

 当然受勲もない。

 おかしくないか?

 取り逃したのならともかく、やつは討伐された。

 情報を公開しても、国家にとって何の脅威にはならないはずだ」

「....あの方に関しては、私も分からないことが多い」

 パフェを食べ進めるエレナ。

「ただ、私は国民を守る一軍人として、職務を遂行するだけだ。

 たとえ語られることがなくても、私は戦う」

「...そうか。

 話を変えよう。

 今回起きた、異世界からの大陸転移...

 互いの出方次第ではおびただしい犠牲が生まれることになる。

 どう考える?」

「...」

ガロンの問に、表情を曇らせるエレナ。

「...十中八九、この件は俺たち第二海軍が受け持つことになる。

 どうすれば犠牲減らせると思うか?」

「らしくないな」

 パフェを食べ終わり、スプーンを置いて口を開く。

「氷狼と呼ばれる君がそう考えるとは、らしくない」

 目的のためなら手段を選ばない、冷徹非情な様子から氷狼と呼ばれるガロン中将

「俺が手段を選ばないのは、あくまでも作戦遂行の為だ。

 無駄な犠牲は出したくない」

「ん...」

 口元を拭きながら、大きな数字の書かれた伝票をガロンに差し出す。

「対人戦の仕事は貴方たち。

 犠牲を出さない方法も貴方が考えるべき。

 じゃ」

「....」

 ガロンと伝票を置いてカフェを出るエレナ。

 ガロンの財布が、少しだけ軽くなった。

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