真理
「人を殺す…」
ヨシアキは困惑していた。
「そう、ヴァルハラへ魂を導き、神を復活させる。
ヴァルハラの狙いは己の完全復活さ。
それを協力する対価として、君は大きな力が得られる。
さぁ、決めてくれ。僕は君の真理であり、答えは君次第だ。
自分の欲望のために、多くのものを犠牲にできるかい。」
ヴァルハラの力はヨシアキもわかっている。
こうしている間に、ナツキとつむぎがどんな目にあっているか
考えると胸が張り裂けそうになった。
「俺は・・・」
ヨシアキは究極の決断に躊躇していた。
あのヨコシマの衝動は、呪いのようなものに感じていた。
自分がもし、あんな風に変わってしまったら・・・。
しかし、ヨシアキはもうこれ以上大切なものを奪われるわけにはいかない。
このまま何もせず、ヨコシマの好きなようにさせることが、
最も悲劇的な結末に終わってしまう。
「お前にはこの選択の結末が見えるか?」
ヨシアキは真理に問いかけた。
「未来のことは誰にもわからない。
ヴァルハラだってそうさ。
君がどんな世界を作るか楽しみだね。」
その答えに、ヨシアキは少し落ち着きを取り戻し、
決断した。
「俺は、ナツキさんやつむぎ、皆を守るって約束したんだ。
それがどんな道だって、今更引き返すわけにはいかない。
俺に皆を守る力をくれ。」
真理は、小さな声で「わかった」というと、
ヨシアキに触れた。
「真理は常に君の中にある。自分の信じた道を突き進むか、
目を背けて蓋を閉めるのか、それは君次第だ。
君の選択は、希望を生む光なのか、闇を深める呪いなのか、
ゆっくり見させてもらうよ。
ここからは試練の連続だ。負けないようにね。」
真理はそういうとヨシアキの体と重なり、
消え去っていった。
その場は、一瞬だけ静寂に包まれたが、
急に地面が揺れ始め、大きな音が響き渡った。
ヨシアキが扉を見ると、
ゆっくりと開き始め、そこから黒い何かが噴き出ていた。
近寄って見ると、それには様々な表情があり、
まるで怨念を抱えた霊のようだった。
「確かにこれは試練だな。」
ヨシアキは躊躇することなく、手を伸ばし、怨念に触れた。
「どいてくれないか、俺は早くこの先に行かなきゃいけないんだ。」
その時のヨシアキは、慈愛に満ちており、触れられた怨念は、
何かを悟ったかのように、離れていった。
すると、暗闇の先に小さな光が見えてきた。
その光は次第に大きくり、目も当てられない明るさになっていった。
ヨシアキはその先へ向かうように、ゆっくりと歩き始めた。
「ハハーーッ!!嬉しいなぁ!!
つむぎのそんな顔を見れて、今まで頑張ってきたかいがあったよ!!」
ヨコシマは満面の笑みを浮かべ、つむぎの元へ近付いて行った。
「なぁ、つむぎ、いつまでそんな童貞を抱きしめてるんだ。
汚いから離しなさい!ね!」
ヨコシマの物言いに、つむぎはムッとして言い返した。
「お兄ちゃんは、汚くなんてない!
誰よりもずっと綺麗な心を持っているんだよ!
アナタみたいに好き勝手なことしてない!!」
その一言に周りの人間がゾッとした。
ヨコシマの顔から笑みが消えていたからだ。
「そういえば、コイツの顔は見たことあるな。
懐かしい顔だ。そうか、またお前か。
またお前が俺の大切なものを奪っていくんだな。」
ヨコシマは小さく呟き、つむぎを睨んだ。
「言うことを聞かない子は、お仕置きしちゃうぞー??」
そう言い、つむぎに圧力をかけた。
「うるさい!これ以上私たちを苦しめないで!」
そう言われると、ヨコシマは眉間に皺をよせ、
手を大きく振り上げた。
その手はつむぎに向かって降り落とされた。
パシッ・・・
「別に俺は、お前の大切なものを奪おうなんて思ってない。
俺は俺の生き方に従っただけだ。
お前の真理はなんて言ってるんだ?」
ヨシアキはヨコシマの腕を掴みそう言った。
「お兄ちゃん!!」
つむぎはヨシアキの目覚めに歓喜し、
強く抱きしめた。
「う、うるさい!お前らがいなければ、こんなことには
ならなかったんだ!!お前らさえいなければ!!!」
ヨコシマは雄たけびを上げ、斧を手にとった。
「なぁヨコシマ。お前は自分を守りすぎなんだよ。」
ヨシアキはポケットから、赤、黒、白の3つの卵型の宝玉を
取り出した。
「なぁ天牙、また一緒に戦おう。」
天牙を宝玉に突き刺すと、
刃が膨張し、みるみるうちに3倍程の大きさになり、
柄の部分には菊紋が刻まれた。
「つむぎ、目をつむってな。
これから大人の戦いをしてくる。」
「うん、お兄ちゃん、つむぎ達を、
みんなを救って・・・。」
ヨシアキは優しく微笑み、
天牙を強く握りしめた。




