笑顔
ヨコシマが降り下ろした斧は、
ヨシアキに重くのしかかった。
「クッ・・・」
「どうした?威勢が良かった割りに
そんなもんか???」
ヨシアキは両手で攻撃に耐えていたが、
片膝が地面につき、苦悶の表情を浮かべていた。
まだヴァルハラの力に慣れていない様子に、
ヨコシマは神妙な顔立ちになった。
「これ以上俺の邪魔をするな。
お前の皆を守りたい気持ちはよくわかったよ。
格好いいよ。皆のヒーローだ。
でもな、それは力のない人間がやっちゃいけない。
お前が言うように、俺は自分のことしか考えていない。
あの日を境に、俺は自分の夢を守れなかった。
仲間を守ることができなかった。
それでも自分を守ることに必死だった。
自分を偽ってでも生きることを選んだんだ。」
ヨシアキは何も言い返すことができなかった。
「お前は偉そうに言うが、何も守れてないじゃないか。
一生懸命磨いた、剣道の腕前はどうした!
俺を止めてみろ!!」
ヨコシマは目に涙を浮かべ、攻撃に力を加えた。
「うぉぉぉぉ、お前の好きにはさせない!」
ヨシアキは最後の力を振り絞り、
攻撃を押し退けようとしたが、
ヨコシマの驚異的な力には歯が立たなかった。
「・・・なんだこれ、期待外れだな。」
ヨコシマはすっと斧を上にあげた。
ヨシアキは体の力がフッと抜けたが、
すぐに横から攻撃が襲ってきた。
ヨシアキは呆気ない最後に、
覚悟を決めた。
しかし、ヨコシマの攻撃は、
胴体に当たる直前で止まっていた。
「や、やめろ・・・」
そこにはヨコシマの背に抱き着いたナツキがいた。
ナツキは高速に指を動かし、
ヨコシマの乳首を刺激していた。
ヨコシマは体をくねらせ、
必死にナツキの攻撃に耐えていた。
「あなたは、私たちの歯車を狂わせた。
でも、そんなことはどうでもいいの。
あなたは必死に戦ってきた。
これ以上苦しまないで・・・。」
「ナツキ・・・」
ヨコシマはナツキの攻撃だけでなく、
救いの手を差し伸べられたことで、
心が揺らいでいた。
「確かに、今の俺に力はないかもしれないけど、
皆を守りたい気持ちは誰よりもあった。
そして、周りもそれに応えてくれた。
お前のしてきたことは許されない。
でもお前にもお前の事情がある。
俺たちはそれをずっと引きずって生きるわけにはいかない。
お前をヴァルハラの力から解放してやる。」
ナツキの攻撃に困憊したヨコシマは、
膝をつき、その場にへたり込んだ。
ナツキは咄嗟に、ヨコシマの体を抑え込んだ。
「ヨシ君!今だよ!!」
ヨシアキは下着を下し、
下腹部に天牙を装着した。
「ヨシアキ、、、ヨシアキ!!!」
ヨシアキはヨコシマの菊紋に
天牙を刺し込んだ。
何度も何度も、ヨコシマが複雑な表情をする中、
ヨシアキは繰り返し繰り返し、体を前後に動かした。
「ヨシアキ!!
これからお前にも試練が降りかかる!
お前なら、なんとなできるはずだ。
二人を任せたぞ・・・!
ウゥゥ、アァァァァァァ!!!!」
「ヨコシマ、俺たちは前に進む。
安心して逝け。」
ヨコシマは雄たけびをあげ、体を硬直させた後に、
光となって消えていった。
「ヨシ君!!」
「お兄ちゃん!!」
ナツキとつむぎが、ヨシアキに抱き着いた。
「これで、終わったんだね!
ずっと一緒に居られるんだね!!」
ナツキは涙を流しながら、
ヨシアキの胸に顔を当てた。
「ヨシ君、、、つむぎの心を開いて、
ヴァルハラの力を手に入れたけど、
私のヴァルハラゲートも・・・
その・・・開いてほしいな・・・。」
ナツキは顔を赤らめながら、
ヨシアキの顔をみた。
「ナツキ・・・まだ俺にはやるべきことがある。」
ヨシアキはジャックの顔を見た。
「なぁヴァルハラ・・・。
お前は俺たちを出会わせてくれた。
父さんの夢も叶えてくれた。
でもそれは、お前が神として復活するためだったんだな。」
ジャックはヴァルハラとして話始めた。
「そうだ。
川崎教授を利用し、ヴァルハラゲートを復活させ、
私は少しずつ力を取り戻した。
しかし、ナツキを通して作り出した戦士達を
ヨコシマが次々殺してしまってな。
あと少しで、復活できそうなんだが。」
ヴァルハラは少し考えた後に、何かひらめいたように
話し始めた。
「そうだ、ヨシアキ君。
あと少しで私は復活できる。
私が復活すれば、ヴァルハラゲートの力も
ヴァルハラの戦士達も必要ない。
ナツキもつむぎも私の呪いから解放し、
自由にしよう。望むようなら悪い記憶も消そう。」
良い提案のように感じた。
これから普通に生きていく上で、
ナツキとつむぎを苦しめるヴァルハラの力から解放される。
それは願ってもないことだった。
ヨシアキはその提案に乗ろうとした。
「ダメだ!!!」
振り返るとそこには、ヨシアキの父の姿があった。
「父さん!!」
「ヴァルハラは力を取り戻し、
地球を破滅させ、神界へ復帰する気だ。
私もヴァルハラの力を得て、色々知りすぎてしまった。
これ以上ヴァルハラの好きにさせてはいけない!」
「ク、、、川崎教授、、、生きていたのか。」
「あなたがヨコシマ君を使って私を消そうとしたようだったが、
彼は最初から気が付いていたよ。
あなたがバーニーズを利用して、ヴァルハラの戦士を増やそうとしたことを。
彼はそれを防ぐために、損な役回りをしたんだ。
それによって被害が最小限で治まった。」
「父さん、、、それは本当?」
川崎教授は静かに頷いた。
「ヨシアキ、ヴァルハラを封印する。」
「でも、ナツキとつむぎが・・・。」
「お前は彼女たちに、ヴァルハラゲートとしての役割を
これからもやらせたいのか!?」
ヨシアキは、ナツキとつむぎの顔をみた。
彼女たちを守るといったヨシアキが、
彼女たちを封印しようとしていた。
「ナツキ・・・つむぎ・・・。」
するとナツキは優しく話しかけた。
「ヨシ君。大丈夫。
あなたは私に名前をくれた日のことを覚えてる。
私たちは同じように一人ぼっちだった。
でも、あの日から、あなたと過ごした素敵な日々が
私に人生の楽しさを教えてくれた。
辛いこともあったけど、あなたがいたから頑張れた。
私はヴァルハラのために生まれた存在。
ヴァルハラから離れることはできない。
でも、あなたのことを守りたい。
それに・・。」
ナツキはつむぎの顔をみた。
「つむぎ、こっちにおいで・・・。」
ナツキは近寄ってきた、つむぎを抱きしめた。
「つむぎ、幸せになるのよ。
ヴァルハラの純血じゃないあなたは、
ヴァルハラがいなくなっても生きていける。
これまで辛いことばっかりだったかもしれないけど、
ヨシ君と一緒に前に進んでね。」
「ママ・・・。」
つむぎは「離れたくない」の一言が出かかったが、
必死に我慢した。
「タカシさん、行きましょう。」
ナツキは川崎教授の手を取り、
ヴァルハラの元へ向かった。
「こ、こっちへ来るな!!!」
川崎教授は魔剣ドグマを振りかざし、
ヴァルハラは瞬時に腕で防いだ。
するとナツキが背後に回り、
ヴァルハラの乳首を刺激した。
「や、やめろーー!!!」
「ヨシアキ!!つむぎと一緒に離れてるんだ!!」
川崎教授はドグマを装着し、
ヴァルハラの菊紋へと刺し込んだ。
「さようなら、ヴァルハラ。
さようなら、ヨシアキ。」
「アァァァァァァァ!!!」
ヴァルハラとナツキ、
そして川崎教授は、光となって消えていった。
全てが終わった。
ヨシアキは切ない気持ちになっていた。
戦いから解放された安堵よりも、
心に大きな穴が開いたような感覚だった。
つむぎも、今まで張りつめていた緊張の糸が切れ、
大きく泣き出した。
「ママ、、、ママーー!!」
ヨシアキはつむぎを強く抱きしめた。
「つむぎ、ごめんな。辛い思いをさせて。
守るっていったのに、、、。」
実の母と父を失ったつむぎは、
しばらくの間、泣き続けた。
。
1週間たっても、つむぎは話しかけてくれなかった。
思い出の詰まった部屋には、
2人で生活するには寂しすぎた。
しばらくして、つむぎが2階の窓から、
外を眺めていた。
ボーっとしているので、少し危ないなと思いながら、
ヨシアキは様子をみていた。
外でアゲハ蝶が飛んでいた。
つむぎが手を伸ばし、蝶に触れようとし、体勢を崩した。
「危ない!!」
ヨシアキは咄嗟につむぎを抱きしめた。
すると、そこには見覚えのある景色があった。
「やぁ、久しぶりだね。
これで話をするのは、3度目だね。」
そこには真理がいた。
「なぁ、俺たちはこれからどうすればいいんだろうな。」
ヨシアキは、少し弱音を吐いた。
「そうだね。ヴァルハラもいなくなったことだし。
彼女元気ないもんね。」
真理も悩んでいる様子だった。
「そうそう、手に入れた力は無暗に使わないようにね。
ヴァルハラがいない今、ゲートを開くとどうなるかわからない。」
ヨシアキは疑問に思った。
「ん?ヴァルハラがいなくなった今、
もう力は使えないんじゃないのか?」
「いや、ゲートは繋がりがある神とのやりとりをする扉だから、
新しい神を見つければ、また自由に力を使うことができるよ。
扉の先に消えていった、大切な人も呼び戻せることができるよ。」
「それってつまり・・・?」
「お兄ちゃん?」
つむぎが呼ぶ声で、ヨシアキの意識は現実に戻った。
「つむぎ、、、今の話聞いてたか??」
「うん、聞いてたよ。
二人で、ママとパパを呼び戻そう。」
そこには、つむぎの無邪気で可愛い笑顔が
眩しい程、輝いていた。
終わり




