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ヴァルハラゲート  作者: taxi
14/17

青春6

ナツキは怯えを隠すことができなかった。

ヨシアキの顔を見ると、焦りを隠しきれない表情をしており、

一方ヨコシマは、この狂った状況を楽しんでおり、

卑猥な笑みを浮かべていた。



2人の視線がぶつかり合う中、ヨシアキは手に持った

懐刀を強く握りしめた。


義村と比べ、刃渡り20㎝程度の懐刀では、

圧倒的に不利な状況だと言える。


しかし、この刀も川崎家に代々伝わる

名刀 "天牙”である。


切れ味と短刀ならではの軽さを考えると

使いようでは、勝算はある。



ヨシアキは日本屈指の剣道家である。

余程のことがなければ、負けることはない。



しかし、人を殺したことがない童貞である。



それに比べ、ヨコシマはもう何人もの人間を

殺害しており、ブレーキが壊れてしまっている。

加えて、先ほどの和田のように、

周りの人間に飲み込まれる可能性もあり、

状況としては最悪だった。



「どうした?難しい顔して?」



ヨコシマはヨシアキを嘲笑うように、

声を発した。



「そっちから来ないんじゃ、

 こっちから行くぜ??」



ヨコシマは体を、ふわりと左右に揺らし、

その後、急加速でヨシアキの元へ突進していった。



2人の距離はすぐに縮まり、

ヨコシマは刀を振り上げ、切り掛かってきた。



ヨシアキは即座に左首の方へ刀を構え、

刀同士が鋭くぶつかり合う音が、響き渡った。



「さすが、全国で優勝するお侍さんは違うなぁ!」



ヨコシマがそう言うと、ヨシアキは少し冷静になり、、



「当たり前だ。お前らが遊びまわっている間、

 俺はこれだけしかやってこなかったからな。」


と言った。



「そうだよなぁ。皆が認める人気者だ。

 俺なんかとは大違いだ。」



ヨコシマが言い返すと同時に、再びヨシアキに

切り掛かってきた。



しかし、先ほどと同じ切り掛かり方だったため、

ヨシアキは刀を構えることなく、ヒラリと避けた。



刀を空回りさせていたヨコシマは、派手に床に転がった。



「痛てて・・・。」



ヨコシマは肩を摩りながら起き上がってきた。



「なぁ、もう止めないか。

 俺はナツキさえ、無事なら、それ以外のことなんて

 どうだっていいんだ。

 お前らが何をしようが関係ないし、今日の出来事も

 誰にも話さない。帰らせてくれ。」



始めこそ、ヨコシマの放つ異様な空気に飲まれていたが、

両者の力の差は歴然である。

このまま続けることはヨコシマにとっても得策ではなかったが、



「気にいらねぇ・・・。

 その見下した態度が許せねぇんだよ。

 お前から見たら、俺なんてゴミにしか

 見えないんだろうな。

 それだったら、ゴミはゴミらしいやり方で、

 勝たせてもらうよ。」




怒りがエスカレートしたヨコシマは、

走り出し、ナツキの腕を掴み、

無理やりその場に立ち上がらせた。




「なぁ、お前だったら、助けられるか?」




そう言ってヨコシマは、ナツキを観客たちの元へ

放り投げた。



観客たちは下品な歓声を上げ、ナツキにむさぼりついた。

多くの手や舌がナツキに触れ、ナツキは悲鳴を上げた。



「くそ野郎・・・」



ヨシアキはヨコシマを睨み付けると、

即座に観客たちの方へ飛び込んでいった。



もはや躊躇なく、刀で切りつけていったが、

ラヴに侵された観客たちは、怯むことなく、

ナツキを囲んでいた。



「ヨシ君・・・。」


弱弱しく手を差し出すナツキに対して、

ヨシアキは大声をあげ、ナツキに触れる観客たちを切り付けていった。



「離れろ!!」



6人程度の人間を切り付け、

ようやく、ナツキの腕を掴み助け出すことができた。



「ナツキ、大丈夫か!?」



ヨシアキは汗ばんだナツキの前髪をかき分け、

顔に優しく両手を添えた。



「ふぇ、、、怖かったようぅ・・・。」



ナツキはヨシアキの顔をみて、安心したのか

嗚咽を漏らしながら、泣き始めた。



「ごめんな、こんな目に合わせて。

 もう大丈夫だから。」



そう言ってヨシアキはナツキを優しく抱きしめた。






「お前の答えは、勇敢に立ち向かい、助け出すか。

 果たして、それは正解だったのかな。」




ヨコシマはそう言って、

背後からヨシアキの背中に刀を刺した。




「なぁ、どう思う?」



その問いに、ヨシアキは答えることができなかった。

ただただナツキが大きく、ヨシアキの名前を叫ぶ声を

意識の遠くで聞いていた。



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