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ヴァルハラゲート  作者: taxi
12/17

青春4

静寂な空気が漂っていた。

扉の隙間から漏れる音楽が、耳についた。



「嫌だと言ったら?」


最初に口を開いたのはヨシアキだった。

ヨシアキは義村に軽く手を添えた。



ヨコシマが、軽いため息をつくと鋭い目線を送った。



「なぁ、ここは俺たちのアジトだ。全員お前の敵だ。

 そんな中でそんな物騒な物を持ってても、お前に良いことなんてないぞ?

 まぁこんな所に、どうしてそんな物を持ち込めるんだろうな、香西?」



香西は肩をビクッとさせたが、渋谷が話に割って入った。



「まぁまぁ、ヨコシマ君。香西君は和田君と同格ですよ。

 僕らは今回イベントのゲストですが、序列を守ってください。」



ヨコシマは舌打ちをして、壁に背を預けた。



「ほら、香西君、、、仕事仕事!」



渋谷がそう促すと、香西は慌てたように、ヨシアキの元へやってきた。



「すまんのお、わいが少しの間預かっとくけん、

 おとなしく渡してくれんか?」



さすがのヨシアキもこのままではラチが空かないと判断し、

大人しく香西に義村を渡した。




「さて、それでは本題です。

 ヨシアキ君。君にお願いしたいことがあります。」



渋谷が優しい口調で言った。



「ナツキを誘拐するような奴らの話なんて聞けると思うか?」



ヨシアキは苛立った様子で問い返した。



「まぁ考えてみてください。

 そういう状況だからこそ、聞くしかないと思いませんか?」



「お願いってなんだ?」


ヨシアキは少し間をおいて答えた。




「簡単なお話です。我々バーニーズはこれから、

 もっと広い範囲で活動をしたいと思っています。

 しかし、君もご存じの通り、我々のイメージは

 悪い所だけ浸透しています。

 そこで、多くの活動で人々の信頼を得ている君と

 ナツキさんの2人で、広報部員をして仲間入りしてもらい、、

 クリーンなイメージを広めていって頂きたいんです。

 もちろん無料で働けとは言いません。それでは君も面白くない。

 月に100万円支払います。それに加え、この地域で絶大な人気を誇るナツキさんを

 我々バーニーズがお守り致します。

 いかがでしょうか?とても良い話だと思いますよ。」


渋谷がヨシアキを勧誘したい旨を説明した。

それを聞いて、ヨコシマは含み笑いをしたが、渋谷は気に留めなかった。




「広報って、要はお前らの薬をする仕事の手伝いをしろってことだろ?」


ヨシアキは話の核心を突こうとした。



「いいえ、手伝いなんて必要ありません。

 君がバーニーズにたまに遊びに行くとだけ言ってくれればいいんです。

 それ以外は、今まで通り剣道の練習をしていただければ結構です。」



「それでお前らになんのメリットがある?」



「要は、あなたみたいな真面目な方が通っているという話が上がれば、

 バーニーズのお客様が増えます。それだけで十分なんです。

 そこからどうするかはお客様の自由なんですから。」



「そんな話に俺が乗ると思ってるのか?」



「今の状況をよく考えてください。

 我々はこの地域では絶大な力を持っております。

 あなたの弱みも簡単に手中に収めることができます。

 あなたは従うしかないんです。

 それでお金ももらえるんだから、良い話じゃないですか。」



「汚い奴らだな・・・」


ヨシアキは怒りが沸々と沸いてきた。

そこで、渋谷が指を鳴らした。

すると、香西ともう一人の男がモニターを運んできた。




「今のステージの様子です。」


そこには、制服をビリビリに破かれたナツキが紐で縛られた姿が映っていた。

ナツキは目隠しと猿ぐつわを噛まされていて、何もできない状況だった。



”皆さま!本日はお越しいただきましてありがとうございます。

 今回主賓の和田でございます!!さてさて本日は満席御礼でございます。

 本日の皆様お楽しみのメインディッシュはこちらです”



和田はそう言って、ナツキの縄を絞めた。ナツキは、

嗚咽のような声を出し、口からはだらしなく涎を垂らしていた。



「君の怒りはわかりますが、この状況を止められるのは、

 権力者である私だけです。どうです?

 彼女を助けたくありませんか??」



もはや、ヨシアキに選択肢はなかった。



「本当に俺たちのことを守ってくれるんだろうな?」



「ええ、約束しましょう。

 そうしなければ、君の活動に支障がでますからね。」




ヨシアキは不服だが、この場を乗り切るための決断をした。




「それでは、ヨコシマ君、あなたはもう用なしです。

 処分については、辰巳の方から連絡させます。」



渋谷の横にいた辰巳と呼ばれた男が近付いてきた。



「用なしってどういう意味だ?」


「言葉通りです。もう必要なくなったので、

 消えてもらって結構です。

 君のできることはもう全てやって頂きました。

 私が期待しすぎた所もありますが、

 まぁこの程度だったのでしょう。

 今までお疲れ様でした。」



渋谷は冷たく言い放った。



ヨコシマは自分の音楽の道を断たれ、

大切な仲間や知り合いを全てダメにされた。

それでも協力してきたつもりだった。

渋谷という悪の根源に逆らうことができなかったからだ。


その結末がこれだった。


ヨコシマは今までしてきたことの馬鹿さ加減に呆れた。


渋谷は根っからの悪党だ。


少し考えればこの結末も理解できた。


しかしヨコシマは、自分が使い捨てされる人間だとは

認めたくなかった。




「し、、、渋谷さん、、、。」



「なんでしょうか?」



「今まで大変お世話になりました。

 不甲斐ない俺のせいで、あなたの役に立つことができなくて・・・。」



「いえ、かまいませんよ。これからはヨシアキ君に頑張ってもらいます。

 彼には、あなたにないカリスマ性が漂ってますからね。」



高笑いするバーニーズの連中の中、ヨコシマも笑い声をあげた。


ヨコシマは、香西の元へ向かった。




「香西さん、いつも失礼な発言をしてすみませんでした。」

ヨコシマは香西の前で礼をした。



「ええで、気にすんなや!これから大変やと思うけど、

 まぁ頑張れや!」


そう、香西が左手でヨコシマの肩に手を当てた瞬間に、

香西の右手にある義村を、ヨコシマは奪い取った。



ヨコシマが布を解き、日本刀を露わにしてから一瞬の出来事だった。



義村によって香西の右手は下に転がり、向かってきた辰巳の首は宙に舞った。



香西と絢子の叫び声が部屋に響き渡った。




「な、、、こんなことをしてどうなるかわかってるのか!?

 お前死ぬぞ!!?」


渋谷が取り乱し、今までにない表情を見せた。




「やっとアンタのその顔が見れたよ。

 俺はもう自分の人生に飽きたよ。これ以上続けたって

 良い結末なんか待っちゃいない。無駄に消費するくらいなら、

 お前ら全員殺した方が、人生が浮かばれるよ。

 お前らの悪事がここで止まることを考えれば、逆に感謝されるかもな。」



刃についた血を振り落とし、ヨコシマは渋谷の元へ近付いて行った。



「すぐに死ねると思うなよ?」


そう言い放ち、ヨコシマは義村を渋谷の体へ振り落とした。



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