表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/22

第21話「絶品!鳥料理」

挿絵(By みてみん)


 村に帰ってきた俺たちは、昨日に続き今夜も村長宅で晩ご飯をご馳走してもらうことになった。


 タナリアの森のことを報告しようと村長のところを訪ねた時に、レーカが村長に「シルクバードを料理してっ」と言ったらこうなったのだ。


 村長曰く、食材を持ち込んでくれたのだから、気にしないでくださいとのことだった。

 レーカが大量に狩ったから、多めに提供すれば村長の家にも負担にならないだろうと思うことにした。


「さあ、たくさん召し上がれ」


「「いただきますっ!」」


 村長の奥さんのモリーさんの掛け声に、レーカは待ってましたとばかりに料理を食べ始める。

 テーブルに料理が並んでいくのを見て、よく我慢できたといったところか。


 モリーさんは、そんなレーカを微笑ましそうに見ている。

 雑用で冒険者たちの料理を作ることも多かった俺は、モリーさんの気持ちが少し分かる。


 自分が作った料理を楽しみにしてくれて、それを美味しそうに食べてくれたら嬉しいよね。

 レーカほど美味しそうにご飯を食べる人を、俺は他に見たことないけれど。


 シルクバードの鳥料理といっても、モリーさんの手にかかれば多種多様だ。


 その美味しさに、俺たちは言葉を発することを忘れたかのように食べ続ける。


 香草等で味付けをして焼いたもの、野菜と一緒に煮込んでスープにしたもの、あっさりと茹でてサラダにしたもの、衣をつけて油でカリッと揚げたもの、どれもそれぞれに美味しく目移りしてしまうほどだ。


 美味しいものを食べていると、一日の疲れが取れる気がするし、幸せな気持ちになるよね。


 レーカは自分の前の大皿に全ての料理を集めて、満足そうに食べている。

 リリアは今日もレーカの隣で、ニコニコだ。


 まだしばらく村に滞在することだし、モリーさんに料理を教わろうかな。

 今後のレーカの食事のためにさ……。


 食事がある程度進んだところで村長のトーマスさんが話を切り出してくる。


「それにしても、やっぱり英雄様は凄いですね。たった一日で数百年謎だったタナリアの森を解決してしまうなんて。それに精霊様まで連れているなんて」


「ほんとねえ。まるで物語のようだわ」


 トーマスさんの言葉に、モリーさんが相づちをうつ。


「もともと近づかなければ問題無かった森ですし、勝手に入って申し訳ないくらいです。アル……ええと、精霊のことは他言無用でお願いします」


 アルのことは一応ね。

 絶対秘密というわけではないけど、あえて広めるメリットはないからね。


 なんとなくこの人たちなら大丈夫かなということで、アルは姿を現して食事中だ。

 アル用に小さめのテーブルを用意してくれた。


 セシルさんの近くにアルのテーブルを配置したから、セシルさんが嬉しそうにアルの食べる分を取り分けている。


 アルは精霊だから、食べなくても大丈夫だけど、食べてもエネルギーの補給ができるらしい。

 それに美味しいものは美味しいらしく、嬉しそうに揚げ物を食べている。


「これ美味しいね。味は違うけど風味が懐かしくて、ケ〇タッキーを思い出すよ」


 アルは、“日本”で食べた鳥料理を懐かしんでいる。


 アルに言わせると「日本の食文化は、三千世界中で最高」らしいからね。

 鳥料理も、牛肉料理も、ありとあらゆる料理の最高のものを食べられる国と聞いている。


 牛肉一つとってもその絶品ぶりに、他の国の人が「俺が今まで食べていた牛肉はサンダルの底だった!?」なんて驚愕したという逸話があるらしい。


 日本……、どんな桃源郷だよって話だよ……。


「精霊様の喜んでもらえるなんて、村中に自慢してまわりたいわ。内緒ってことだから黙っておくけれどね」


 モリーさんが喜び、旦那である村長のトーマスさんは、ちょっと得意気だ。


「ねえねえ、レーカちゃんはどれが一番好き? リリアはスープのが好きなの」


 リリアがレーカに、好きな鳥料理を聞いている。


「ん~……(モグモグ)」


 きっとどれも好きなのだろう。それぞれつまみながら、悩んでいる様子だ。


 まあ実際、どれも美味しいもんね。


「…………」


 リリアがキラキラした目でレーカを見つめている。

 答えを待っているのだろう。


「…………(モグモグ)」


 レーカは美味しく食べつつも、答えに窮しているように見える。


「「…………」」


 なんとなく気になって、みんなの視線がレーカに集まる。


 視線に気づいて、キョロキョロと焦った様子のレーカ。


 レーカは、真剣な表情で自分の前の取り皿を見つめる。


 そして、


「これは、あたしのだからねっ! あげないんだからねっ」


 自分のものだと主張しながら、凄い勢いで鳥料理を食べるレーカ。


 どれが好きか選んだからって、取らないってば。

 まあ、どれも凄く好きだってことは、よく分かったよ。


「キャハっ、レーカちゃん、可笑しいね。ママの料理はおいしいもんね。リリアの分も食べていいよ」


 何が面白かったのか、リリアは嬉しそうに自分のお皿もレーカに勧める。


 ところが、


「駄目よ、リリア。自分の分の肉はしっかり食べないと、強くなれないわよ」


 レーカは、きっぱりと断る。

 

 いっぱい食べたいけど、人の分まで食べたいわけではないようだ。 

 発想がなんとなく肉食獣のソレな気がするが。


「はいはい、まだまだいっぱいありますからね」


 モリーさんが、追加の大皿を持ってきてくれる。


 俺たちは存分に鳥料理を味わったのだった――――。


 ちなみに俺が一番好きだった鳥料理は、アルが「フライドチキンうまうま」と言いながら食べてた揚げたヤツだ。

 外側はカリカリしていて、かぶりつくとジュワーと中の肉汁が出てきて、口の中が幸せになった。

 その余韻がしばらく続いたのも素晴らしかった。


 ……本当に作り方、教えてもらおうかな。



◇◇◇



「なんと……、それは大変でしたね……」


 村長の声には驚きの色が感じられる。

 村長のトーマスさんに、タナリアの森の件を報告しているところだ。


 俺の隣にセシルさん、テーブルを挟んだ向かいにトーマスさんが腰掛けている。

 モリーさんは、食事の後片付けをしている。


 レーカ、リリア、アルの可愛いトリオは隣の部屋で、仲良くくっついて寝ているところだ。

 セシルさんがうずうずしていたけど、こっちの話に参加してもらうことにした。


 トーマスさんへの報告は、いくつかの情報は伏せておこなった。


 全部伝えたら、村が大騒ぎどころか、領主の軍隊が出て来かねないからね。

 ドラゴンとスケルトンの集団とか、事情を知らない人からしたら、恐怖以外の何ものでもない。


 報告した点は、うっかりタナリアの森に入ってしまい、そこでスケルトンと戦闘、これを撃破。

 タナリアの森の中心で、呪われた祠を発見したから、これを魔法で浄化。

 今後は徐々に元の森に戻り、イメリアの森と一体化していくだろうということ。

 まだ呪いが残っているから、しばらくは安全のために立ち入らないようにしてほしい。


 大体そんな感じで伝えた。


 まあ、嘘は言っていないと思う。


 セシルさんが、トーマスさんに確認してくれる。


「村長、村のみんなへ伝えるのと、タナリアの森へはまだしばらく今までのように近づかないようにしてほしいわ」


「分かりました、セシルさん。それにしても……、冗談で言っていたわけではないですが、誠に英雄様ですね」


 村人や衛兵への報告は村長に任せることにした。


「その英雄様っていうのは、やめてもらえると嬉しいのですが……」


 慣れない感じがしてソワソワするから、その呼び名はやめてほしいのだ。


「ネロさんが嫌なら止めますが、心から凄いと思っているのは本当ですよ。リリアをネロさんの嫁に出してもいいかと思う……ほ……くっ」


 トーマスさん……。

 なんでそんなに辛そうな顔を……。

 無理に嫁に出さなくていいから。


 村滞在の一日目から、なんだか大変だったな。

 明日は何をしようか……。


 村の中でのんびり過ごすのもアリかもしれないね――。

レーカのLINEスタンプが完成しました。

詳細は活動報告にて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ