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第20話「ヴェネットのこれから」

 ヴェネットの後ろに整列するスケルトン二十体。

 そして、そのさらに後ろには黒色の大型ドラゴン。


 小さな街くらい簡単に滅ぼしかねない戦力だと思う。


「ありがとうございます。ネロ様。このご恩をどうお返ししたらよいでしょうか」


 なかなかに強大な戦力を控えさせて、ヴェネットがお礼をつげてくる。


 ただでさえ美少女なのに、こちらを見つめてくる瞳が潤んでいて、ひどくドキドキさせられる。


 ヴェネットは目覚めてから一番嬉しそうな様子だ。

 姿形は変わっても、身近だった存在がまた控えてくれている事実が嬉しいのだろう。


 目覚めたらいきなり違う時代で、そこに独りっていうのは心細すぎるもんね。


 けど、お礼って言ってもね。


 お礼のために助けたわけじゃないし、街を滅ぼす気持ちなんかないしなあ。


「じゃあさ、ヴェネットたちが今のこの世界を少しでも楽しいと思えるようになってくれればいいかな」


 ヴェネットやスケルトンたちを見る限り、一般の人に故意に害を与えようとすることはないと思う。


 だったら、せっかく数百年の時を経て再会できたんだ。

 少しでも楽しんで欲しいじゃん。


「分かりました! ネロ様の仰せのままに!」


「ああ、それとその様付けもやめてもらえると嬉しいかな」


「!?」


 俺のお願いにヴェネットが声にならないほどショックな顔をする。

 えっ? なんでそんな絶望的な顔するのさ?


「駄目かな……」


 なぜか俺は弱気になる。


「どうしてもですか? どうしてもわたくしに呼び捨てにさせたいのですか」


「いや……、どうしてもじゃないです」


 ヴェネットの押しの強さ?につい敬語になった。


「よかったです。これからもよろしくお願いします。ネロ様っ!」


 なんか押しきられてしまった。


 俺の後方でセシルさんがレーカと話している。


「レーカちゃん、ネロ君って意外に押しに弱いのね」


「今度からおねだりする時は、あたしも強く言おうかな」


 聞こえてるからね。レーカは今でも十分マイペースで強引じゃん。


「まあいいや……。それでこれからどうする? ヴェネットも一緒に来る?」


 ドラゴンとスケルトンを引き連れてだと街には入れないけど、近くの森で待機してもらったりと、なんとかする方法はあるだろう。


 ヴェネットにとって、知らない時代のこんな森に放置するのもどうかと思うしね。


「そのことについて考えていました。ネロ様のお誘いは、すごくすごく嬉しいのですが……」


「うん」


「わたくしはアビーと騎士団のみんなを連れて、この世界を見て回ろうかと思っています」


 一緒に来たいと言うと思っていたから、ちょっと意外だった。


「ドラゴンとスケルトンは目立っちゃって大変なことも多いと思うよ」


 ヴェネットも美少女過ぎて目立つだろうしね。


「はい、それでもこの時代の世界を回りながら、いろいろなことを知りたいのです。そしてゆくゆくは……」


「ゆくゆくは?」


 亡国のことを調べたいんだよね。どうしてアルサルーク王国が滅ぼされたのか。


「ネロ様のお傍にはべるのです」


「うぇっ!? はべる??」


 俺は耳を疑った。つい変な声が出た。


 はべる、ってあれだよね。

 そばにつき従うみたいな意味の。


「そうです。このご恩はそうでもしないと返せませんし」


 ヴェネットが良い笑顔で宣言してくる。


 あれ? どうしてそうなった!?

 亡国の王女はどこいった??


 俺は変な顔をしていたのだろう。

 ヴェネットはポンと手を打って、何かを思い出したかのように、


「もちろん亡国のことも調べますよ。もちろん……」


 真面目な顔に戻って、ヴェネットは遠くを見つめている。


 まあ、生きる目的は多い方がいいかもね。



◇◇◇



 そんなわけで、俺たちとヴェネットたちは森でいったん別れることになった。


「みなさま~! 必ずいつかまたお会いしましょう~」


 ヴェネットがブンブンと両手を振っている。

 濃い紫色の髪が、風に揺れている。


「ヴェネットちゃん、またね~」


「ヴェネット、じゃあね~」


「姫さん、バイバイ」


 セシルさん、レーカ、アルが名残惜しそうに別れを告げている。

 短い時間だったけど、強烈な出会いだったからね。


 レーカたちもヴェネットの人柄を好ましく思っていたようだ。

 それにヴェネットは、アビーとスケルトンが命をかけて守ろうとするくらい良い子だしね。


「ヴェネット、いつかまた」


「はい、必ず」


 俺の言葉に、ヴェネットがこくんと頷く。


 俺たちはヴェネットたちに背を向け、村に帰るために道を歩き始めた。 


 この時の俺たちが思っていたよりも、遠くない未来に再会の時が訪れるのだった――――。



◇◇◇



「タナリアの森の秘密、解決しちゃったわねー。ヴェネットちゃんも可愛かったし、良かった良かった」


「そうだね。でも、村長にはなんて報告しようかな」


 可愛い女の子が見れたからか、セシルさんの足取りが軽い。

 さっきまでアンデッドにげんなりしていたのが嘘のようだ。


 俺は今後のことを考えながら足を進めている。

 そのままを報告するわけにはいかないだろうしね。


 俺がなんて報告しようか考えていると、


「ネロ、あたし頑張ったよね?」


「ん? ああ、レーカは頑張ってくれたな」


 ドラゴンやスケルトンと戦ってくれたことを思い出す。


「うん。頑張ったからご褒美があってもいいよね?」


「何が欲しいんだ?」


 レーカがいなかったら、間違いなくドラゴンにやられてただろうし。

 あれ? レーカがタナリアの森に入らなければ、そもそも戦っていないような……。


 言ってから、わずかに納得いかない気持ちがわいてくる。


「じゃあご褒美に、帰りは荷台で寝てていいよね? もう眠いのよ……ふぁ」


 あくびをしながら睡眠を要求してくる我らがドラゴン娘。

 帰りの荷台にはシルクバードも載せてるから、結構な重さになるはずだ。


 それに俺も睡眠魔法を酷使したから、魔力が枯渇気味で結構なだるさがあるのだ。


「おま……」


「私も荷台を引くの手伝うよ」


 抗議しようとしたところで、セシルさんからお手伝いの提案。


 セシルさんから、そう言われてしまったら断れない。


「レーカ、分かった。睡眠魔法つきで村まで運ぶよ。もちろん睡眠魔法は濃い目だ」


「ネロ……」


 レーカが瞳を輝かせる。


 どうせやるなら徹底的にだ。


 俺は半分やけくそで、レーカを徹底的に甘やかすことにしたのだった――。


挿絵(By みてみん)

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