第67話 伝言では終わらない
仰向けになって空を見上げていると、そこに水玉模様が突然広がった。
「──うわっ!?」
びっくりして上半身だけを起こしてみると、一年生の嵐咲ユリアちゃんが笑顔満開にそこにいた。
「こんにちは、悠人先輩」
「あー……うん、こんにちは。ユリアちゃん」
「はい!ひさしぶりに悠人先輩に会えて、みぃはハッピーです!」
大げさだな。なんて思いながら立ち上がろうとすると、
「あ、そのままで大丈夫ですっ」
なんて言うから座り直すと──
「みぃもシットしますから!」
──ぽふんっ
僕の膝の上に乗ってきた。
「甘えん坊な妹が増えたみたいだ」
「みぃは甘えん坊ですか?」
「そうだね」
「みぃは妹ですか?」
「妹みたい、だけどね」
「悠人先輩がマイブラザー……嬉しいです!!」
ちょこんと座っていたユリアちゃんは突然振り向き抱き付いてくる。
「ちょちょっ?」
「悠人兄さん!すりすり~♪」
いつもより甘えたがりな彼女をあやしながらまったりと過ごす。
心なしか、時を忘れてしまいそうになり、自然と頬が弛む。
「そういえば悠人兄さんに用事があったのでした」
「用事?」
「はい。華妃野さんから、すぐに生徒会室集合だって会長さんが言ってたと伝達を伺いまして」
「……そういうのはさ」
「はい?」
「一番最初に伝えるものだよ!」
「ソーリー!悠人さんに会えた喜びでド忘れてしまったのです……っ!」
と特に慌てた様子もなく、だけど申し訳無さそうな顔をして嬉しいことを言ってくれる。
だがしかし、この場合は喜んでいる場合じゃない。
「わかった。とりあえず行ってみるよ、ありがとう!」
「はい。See you.」
僕は急いで生徒会室へと向かった。
「すいません、遅れました!」
生徒会室の扉を勢いよく開けてみると、僕以外は既に全員集合していた。
「遅いぞ少年。大事な話をしていたというのに、少年はまったり後輩と屋上で日向ぼっこか。偉くなったものだ」
「なんで知ってるんですか。あ、いえ、遅れたのは申し訳無く思いますけどっ」
急いで乱れた呼吸を調え、
「それで、何の話ですか?」
「いやなに、勝負下着はどんなのにするかを一人一人話していたところだ」
「アホですか!?」
脳内ピンクにも程がある。
「ちなみに榧蔵女史、君はどんな勝負下着だ?」
「ひ、光は……」
「いや光、律儀に答えようとしなくていいから!」
というか光もいたのか。あまりにも自然でわからなかった。
「榧蔵女史には生徒会に入って貰い、雑用処理班になってもらう」
「唐突ですね!て、雑用処理班?なんですかそれ。僕の雑用係とは違うんですか?そんな役職聞いたことないんですけど」
「そうだな。少年は『生徒会補助人』として生徒会役員申請してあるが」そんな役職名だったのか「榧蔵女史はそのさらに補助として生徒会の犬──雌犬になって働いてもらう」
「言い直した方がダメな感じになってますよ!?」
会長は何を考えているのか、光まで生徒会役員に仕立て上げたのか。
それにしても無理矢理である。よく申請が通ったものだ。
「よく申請通りましたね」
なのでそのまま訊いてみる。
「桃香がちょいと、な?」
「そんな意味深な言い方は止めてください。ちゃんと正攻法で通しましたから!」
「正攻法って、どんなですか?」
「……」
光の純粋な質問に無言で応える副会長は、にこりと笑ったまま固まってしまった。
何か黒いことでもしたのだろうか。
「そうだぞ少年、桃香は黒いんだ」
「僕の心の中をさらっと読まないでくださいよ、会長」
「今日の桃香の下着は黒。勝負下着だ」
「と思ったら全然違った?!というかまだ引っ張るんですねっ!」
会長に隙も何もあったものじゃない。
「悠人さんといつでも添い遂げられるように身に着けています」
聞きたくなかった情報ありがとうございます!
「かわいい女の子は皆大好きだぞ」
聞いてませんし、僕もかわいい女の子は好きですけど、度がありますから。
「ちなみに私の勝負下着は情熱溢れる赤だ」
「本当にどうでもいい情報ありがとうございますね!」
「うむ。少年も私の下着にご執心なようだ」
「変な曲解やめてもらえます?!」
「悠人さん!私ならいくらでも好きな下着にしますよっ!?」
「そういうことじゃないですよ!というか副会長まで乗らないでください……!」
「はるとせんぱい!」
「な、なにさ……」
「私もいつも勝負下着です!」
「……そっか」
「なんか雑になってません!?」
「悠人……」
「えっと、何かな──ぶっ」
依代さんに呼ばれ振り向くと、頬を少し赤らめスカートをたくし上げ、まるで誘惑するかのようにこちらを下から見上げるようにして僕を見ていた。
「ちょ、何してんのっ?!?!!」
「……サービス」
「そういうのいらないから!というか早くスカート降ろして、お願いだから……っ」
なんでこうも会長のピンク脳に便乗して変な対抗心を持つのだろうか。
もっと普通にしてくれていいのに。あ、これが彼女達の普通なのか。
そう思ったら悲しくなってきた。
「悠人様」
「何、光」
「その、光も今日は勝負下着でございます」
「……そっか」
「悠人様が何故か疲れたような優しい目を向けてくださってます……!」
シュンとした光に脳内ピンク色な生徒会面々。
もはやこれ、どう収集したいいのかわからない。
とりあえず頭を垂れる光をなでながら考えた。
──帰って寝よう




