第48話 月では終わらない
「なぜにまだ続くのかえ」
「それは書き手の都合というものだし、そういうメタなことは言わない約束だよ。滅多なことだけにね」
「いきなりわけのわからないことを二人して言わないでよ……」
雲で空に陰り月や星が隠れる。
微妙や光加減が二人の姿を神秘的に映り込ませる。
だけど話の内容が内容なだけにその印象も台無しだ。
「えっと……それで、何の話でしたっけ?」
「少年が私に残りの生涯を捧げるという話だろう」
「そうでしたね──って、なると思ってるんですかっ?そんな強引に話の内容を捏造しようとしたってダメですよ」
いつもこの人は……大事なところでふざけるのだから。困ったものだ。
「そうだぞ。悠人はこのわしと世界の中心でこのお腹の子との一生を叫ぶんだぞ」
「どうしてそうなるの!?しないよっ?しないからね!?」
会長は今までのことがあるから(いやなのだけど)耐性は付きつつあるけど、まさか猫耳幼女からも援護射撃が来るとは思わなんだ。
「というか、僕達そういう行為は一度もしてないから!ありえないこと言わないでくれるかなっ?」
「なんじゃ、したいのか?」
「したくないよ!する気もさらさらないしね!」
「……ちょっと乙女心が傷ついた」
仮にも何百年と生きている奴が乙女心とかあるのか?
いや、わからないけど。
「こんな無駄なやり取りしてないで、話を戻しましょうよ」
「そうだな」
キリッとした顔立ちになって
「私は復活したばかりの琥紗那にこう言ってやったのだ──愛は正義ではなく、一つの欲であると」
「さっきと言ってることが違うっ!」
「少年は何か不満でも?」
「ある!あり過ぎて困るくらいにね!」
ボケが洗練されていてわけがわからなくなる。
もう、本当に。わけがわからないよ。
「さてと。そろっと行こうかの。月は満ちた」
「え、月?てかどこへ?」
「タイムリミット、というやつだ」
「少年。言わずでもわかるだろう」
二人の真面目な顔付き。
そうか。『別れ』なのか。
短い時間だった。
「じゃあの……悠人」
そして、彼女は月の光に混ざるように……消えた。
「て、え、あれっ?」
「どうした少年」
「今消えて……」
「そうだな」
神妙な顔して空の月を見上げる会長の姿はどこか儚げで、これ以上追求することは許されない気がした。
「いや待って」
「まど何かあるのか」
「綺麗に話を終わらせようとしてますけど、おかしいですよね?人が消えるとかまだ訊いたことの答えが返って来てないこととか」
「気にするな、少年」
「気にします!」
肌寒い夜の風に当たりながら、僕と会長は月を見上げていた。
あとから聞いた話によると、会長は紅紗那にこう言ったらしい。
「私の友達にならないか。妖しき少女よ」




