第47話 終わりでは終わらない
着いて行くと、海の見える海岸まで歩いて止まった。
ザザーと揺れるさざ波の音が聞こえる夜の海。
藍色と灰色の間の色の雲から垣間見える星は小さく光り放つ。
「おぬしなら別に良いかの。出て来い」
そう言うと、岩場の影から人が──会長が出て来た。
「やあ。少年、幼女と海での夜のデートはいかがかな?」
「え、あ、あの、これは……」
「みなまで言うな。わかってる」
凛として堂々とした態度。
それが当たり前だとでも言うように腕を組んで立っている。
「本当ならば、あと何話か続けても良かったのだがの。時間は時間じゃ。話すしかあるまい」
「さすが守神。一度でもした約束は必ず護ると」
「当たり前じゃ。契りは契り。どんなに小さいことでも守ってみせようぞ。この話でわたしの回が終わるのは心許ないがの。他に方法はあるまいて。堪忍しといてやるさ」
なんだろうか、このアウェー感。自分だけ話に着いて行けていない。
二人だけわかって、僕は物語を途中から読んでいるようなそんな感覚を覚えた。
「えっと……なんの話?」
「すまぬの。こちらの話じゃ」
「少年は話に耳を傾けていればいい。ちゃんと話すさ」
「あ、はい……」
いつにも増して優しい声音で諭すかのような口調の会長。
「では、最初に言っておくかの」
「……」
真面目な顔になり、僕はどんなことを言われるのかと、心の準備をして聞く体勢になる。
「わしは、おぬしの母ではないのだ──!!」
…………はい?
「わしは妖猫、つまり猫の化け物とでも言おうか。神としても崇められてはいたのじゃが、信仰は無くなる一方じゃ。だからおぬしの母、刻芳嘉愛と契りを結び人々から信仰を集める為に色々とな──」
意気揚々と語り始めて数分。
話は理解出来ずに聞いていたが、どういうことなのか一片もわからない。
それに、刻芳とは僕の母親の旧姓だ。
なんでこの幼女が……。
「──というわけで」
「少年はまるで理解していないぞ。琥紗那」
「話の邪魔をするな。──ん、なにおうっ?悠々、本当か!?」
その通りだが、まるでというのは少し失礼ではないか。
僕だってわかる部分はあるのだ。……部分は、少しだけ。
「まあ良い。説明してやると良いぞ。身掛司御の末裔」
「名前で呼んでほしいものだが」
「小娘如き、わしの前には一歩も及ばんっ」
「少年には名前なのにね」
「刻芳の娘と契りを交わした仲じゃ。言霊の支配力と交友関係の権力には逆らえんさ。それに美味い飴もくれたしの」
そう言ってカツカツと笑う。
「少年には皆甘いな。私もだがな」知らないよ。「さて、色々と伝えることがあるのだが……」
数秒考える素振りを見せてから僕を見る会長。
「まずはこの猫耳幼女──いや、妖女についてだな」
「良きに計らえ」
「この幼女はこう見えて何百年も生きる猫の化身、妖猫だ。それはわかるね?」
「……うん、まぁ」
さっきもそんなようなこと言っていたしね。
それに、猫耳がある。ぴょこぴょこ動く。
「名前は琥紗那。元々は森の奥深くの祠に封印されていたのだがな。数年前にその封印を解かれてしまったのだ」
「……封印」
なんて中二病くさいのだ。
そう思ったのは内緒だ。
「実際に200年前、私の先祖、身掛司御と呼ばれた……そうだな。除霊を生業とする退魔師がいてだな、その祖先が祠に閉じ込めたと言う。それを知り、私が直々に封印を解いてやったのだ」
「あれは強引だったな。もの知らずがやって来たと思えば、威風堂々とした立ち振る舞いでそこにおるのだからな。こっちが唖然としたわ」
「そうだったな。そこで私はこう言ってやった」
──契約して、私の執事として働かないか?




