第46話 豹変では終わらない
誰にも見付からないように、こそこそと自室に戻ると、戸田君は一人で囲碁をしていた。
しかも、神妙な目つきで。
「戸田君、囲碁できたんだね」
「あ、おかえり。……まぁな。これくらいはできるさ」
「そうなんだ」
猫耳幼女の嘉愛は良さそうね気分で勝手に用意してあった布団に潜り、寝る体勢を取った。
「それで。どうだった?」
「あ、うん。誰にも見付からないで戻って来れたよ」
「そっか。良かったな」
「うん」
日和さんは男だってことを周りに隠しているから、日和さんのことは伏せておこう。
話したらバレる可能性があるから、ここは僕の母を自称する彼女のことだけを話せばそれでいい。
嘘というか、隠し事はあまり好きではないのだけど。
ここは仕方ないと割り切るしかない。
「んじゃ、俺は風呂行って来るわ」
「あ、うん。いってらっしゃい」
「おう」
着替えとタオルを持って部屋から出て行く戸田君。
なんだかんだで空気の読める友人である。
単にお風呂に行きたかっただけかも知れないけれど。
それでも助かる。布団でもぞもぞしているこの猫耳幼女と二人で話したかったから。
「あのさ、君……どこから来たかとか、なんでここにいるのかとか、そういう細かいことはまだ、話してくれてないよね?……いや、無理にとは言わないけどさ……話してくれてもさ──て、聞いてる?」
「……」
返事はない。どうやら屍ではないが、何かしてして気付いていないようだ。
近付いて何かしているのであろう彼女の布団の中を調べるべく、剥ぎ取る。
「……何してんの」
「んにゃ?」
布団の上で何かを口に含んでいた。
というか煮干しを食べていた。
なんでやねーん。
「んにゃって……猫かよ」
猫なのか?猫耳付いてるし。尻尾は見当たらないし。
て、何非科学的なことを言っているのだろうか。別に否定はしないけど。
「〝みた〟にゃ~……くく」
て、あれ……なんかさっきまでの印象と違う?
てか、何その顔。悪魔みたいなゲス顔……女の子がそんな顔してはいけないと思う。
「この際致し方ない。小僧、表へ出ろ」
「へ?海行くぞ」
「どうして?」
「いいから着いて来い」
「あ、ちょっとっ?」
いきなり豹変した彼女を追い、僕は部屋から出た。




