第34話 寝起きでは終わらない
二日目の朝、僕は何かお腹辺りに重さを感じて目を覚ました。
手で身体を支え、その重さの正体を見てみる。
「……すぅ…ん、……んん……」
意外なことに、黒い猫──もとい、にゃむ君の姿がそこにあった。
黒猫の着ぐるみのような猫耳と尻尾が着いた黒いパジャマ姿で、お腹の上で丸くなっている。そう、まるで猫のように。
もしかして、にゃむ君の癖なのかな?だとしたら、かわいいかも知れない。いや、別に変な意味はないけれど。
だけどこの状況は少しまずいと思う。日和さんと月島さんと同じ部屋で寝ていたはずなのに、僕と戸田君がいる部屋……しかも僕の布団に紛れ込んでいる。バレたらどうなることか。想像しただけで身震いがする。
考え過ぎかも知れないし、もしかしたら杞憂で終わるかも知れない。てかそうであってほしいと切実に思う。
起こそう。うん。
「にゃむ君、起きて」
とりあえず身体を揺すってみる。
ゆさゆさゆさゆさ。ゆさゆさ。ゆさゆさゆさゆさ。
……。
…………。
………………。
ゆさゆさ。起きない。
「……どうしよう。今はまだ早いから、みんな寝てると思うけど……」
戸田君はぐっすりだけど。
大の字になっていびきをかいて眠っている。この様子だと当分起きそうにない。
「にゃむ君……起きて」
「……すぅ……すぅ……ねこ」
「猫?」
あぁ、寝言か。
「猫はにゃむ君だと思うけど……」
猫の着ぐるみパジャマだし。
「……ねこまみれ……はるとせんぱい……ふふ」
「どんな夢を見てるんだ……にゃむ君は」
とにもかくにも、早く起こさないと……誰かにバレでもしたらまずい。色々と。
「でも、どうしたら……」
にゃむ君は今猫の恰好をしているってことはわかるのだけど……猫の物真似でもしてみたら起きてくれるかな?猫好きみたいだし……そんなわけないか。
けど試しだ。
「……に、にゃあ…」
猫の手を作って猫の鳴き声を真似してみた。
誰も見てないからって、結構恥ずかしいものがあったけど。
「…………猫?」
なんか反応した。
もしかして、本当に手応えが会ったのか?
「……にゃあ…っ」
もう一度猫の真似してみる。
「──猫さん……!」
「わぁっ?」
余程猫が好きなのか、いきなりにゃむ君は僕に抱き付いて来た。予想だにしない展開だった。
「すりすり……はぅうっ」
「ちょ、ちょっとにゃむ君っ?やめ──」
「猫さん大好きぃ!」
これは本当に予想外。
まさか効き目がこれほどとは……脱帽です。
「落ち着いてにゃむ君っ。僕だよ、僕。時峰悠人だよっ?」
「……うにゃぁ……悠人、先輩?」
「そうだよ」
「………………ふにゃ」
ようやく落ち着いたみたいだ。
その眠たそうな眼で僕を一瞥したあと、顔を赤くして縮こまった。
「って、また寝たらダメだからね?」
「……はいぃ」
先程の行動が恥ずかしいのか、布団の中に潜り込む。
まぁ、無理もないとは思うけども。僕も驚いたし。思い出すと少し気恥ずかしい。
「じゃあ起きようか」
「……はい」
布団から出て、女の子座りで目の前でまだ恥ずかしそうに俯くにゃむ君。なんかかわいい。失礼だとは思うけど。
これが猫の魔力か……なんてね。
「にゃむ君はとりあえず自分の部屋に戻って。見付かるとまずいからさ」
「はい。……えっと」
「何?」
「この事は内密に……お願いします」
「うん。了解」
「ありがとうございますっ。では、失礼致す」
そう残して部屋から出て行く。
さてと、今日もまた始まったな。
「戸田君も起こさないとな」
そろっといい頃合いだし。
早起きは三文の得ってね。
今日も楽しい1日になりますように。




