第35話 ゲーセンでは終わらない
午前の10時過ぎ、僕は商店街のショッピングモール、ゲーセン前にいた。
「はるとくん!次あそこ行こうよーっ」
「学園長、待ってくださいよ~っ」
「まったく。なってないですわ」
「あはは……」
のえるさんが目の前のゲーセンを指差し中に入って行き、それを綾未さんが追って、閣利沢さんが呆れる。
そんな光景を新鮮な感覚で見る。
「ゲーセン!、ゲーセン!」元気にはしゃぐのえるさん。
「うわ、中うるさいよぉっ」初めてのことで慌てる綾未さん。
「わたくしは遠慮しますわ」踵を返して近くの喫茶店へ入ろうとする閣利沢さん。
「あ、ちょっとっ?」
何故こうなったのか……それは数時間前に遡る。
* * * * *
にゃむ君が部屋から出たあと、戸田くんを起こして身支度をしたのち、会長に呼び出しを全員が受けて大広間に集合した。
まだ寝ている者は省き、来れる人だけ集まった。
いないのは華妃野さんと月島さんに、あとは……千道寺先輩かな。
それ以外は全員いる。見渡す限り。
「それで、今度はなんですか?」
会長が腕を組み仁王立ちしている。
そんな会長に代表として質問を投げかける。
「いやなに、昨日のビーチバレーの優勝者には少年を1日貸切の権利を得るという約束だったからな、その報告だ」
まだ有効だったのか。いやまぁ、そうなのだろうけど。
てか忘却されていなかったのか……残念。
「そういえば、そんなのあったな……て、なんだよ」
戸田君が発言すると、みんなが鬼のような形相で戸田君を一点を見詰める。のえるさんには覇気がないけど。依代さんなんて半目で怒ってるようには見えない。
「戸田さんは黙っていて貰えますかというか黙ってください今大事な話をしていますので」
「……あ、はい」
副会長が戸田君を一蹴して黙らせる。
なんかいつにも増して凄みがあるな。
「なんだ桃香、興味あるのか?」
「はい。そりゃあもうありまくりですっ」
「あっはっは。けどまぁ、今回は出番はないから安心しろ」
「そそそそんなぁ!」
「ふくく。まぁ、試合に勝ったチームと言ったからな。勝利者に権利を渡さないと不公平というものだろう。私は負けたしそれは桃香も同じことだろう」
「それはそうですけど……無念です」
「私もせんぱい一人占めにしたいです!」
「…………依も」
生徒会面々が口々に物申す。
僕の意見なんて聞く耳持たないだろうな……人権無視の強制なんだから。はぁ。
「それでそれで、勝ったのどこだっけー?」
「Bチームだよ、学園長」
「あれ、Bチームって誰だったっけ?」
本気で忘れていたのか……のえるさん。
「ワタクシ、学園長、それとえっと……」
「綾未です!綾未麻瑠っ」
「そう。綾未さんの三人ですわ」
「だそうだが?桃香」
口元を吊り上げ厭らしい顔をする会長に敵視線で睨み返す副会長。
僕は何も言えずに黙々と傍観しているしかない。
「……ぐぬぬ」
なぜか歯を食いしばる副会長。
そこまで何が不満なのか。
「というわけだ。Bチームの者は悠人と一緒に行動しろ。それ以外は適当に過ごせ」
「また主体性も何もない……」
紅燗さんが不満そうに呟く。
「ま、私は楽しめるのならなんでもいいがな」
「ぶっちゃけましたね」
「ここの最寄りの駅から隣町に行くと、ちょっとした商店街がある」スルーか。「そこに行くといい」
「え、僕達がですか?」
「そうだ。地元とは違って、雰囲気だけでも楽しめるだろうと思ってな」
なるほど。見慣れた風景より、初めて訪れる土地の方が新鮮味があって楽しめると、そういうことだろうか。
「ま、本当のところどこでもいいのだがな。ここら辺には海くらいしかないし、どうせならデートらしくショッピングでも楽しめればと思った次第だ」
デートって……。
「それに、少年とのイチャイチャを邪魔されたくないだろう?海より隣町に行ってデートでもしてくればいい」
「ワタクシは何でもいいのですけどね」
「あ、私も……時峰君が良ければどこでも」
「わたしもー!楽しめるならどこでも!」
三者同意。
てかイチャイチャって……。
「そういうことだ。少年、精々楽しむといい」
会長の含み笑い。
何か企んでいそうだが、まぁ、たまにはこういうのもいいかな。なんて思ったり。
というわけで、僕と綾未さん、閣利沢さんとのえるさんは隣町まで移動する事になった。
全員集まった意味はあったのか、甚だ疑問だが、それはあまり深く考えない事にしよう。
* * * * *
それで、今はショッピングモールの中になぜかあったゲーセンに入っていた。
僕はそれとなく閣利沢さんも楽しめればと、ゲーセンに誘ったが、僕がリードすればという条件付きだった。
「まーるん、次はあれだよーっ」
「え、まーるんって私のことですかー?!」
のえるさんはガンシューティングのゲーム筐体を指差して、そっちへと走って行く。
それを追いかける綾未さんはさり気にあだ名を付けられていた。
「閣利沢さん、何かやってみたいのとかありますか?」
「特には。言ったはずですわ。ワタクシはこういう所に来るのは初めてと。お任せしますわ」
「わかりました。では、こちらへ」
僕は閣利沢さんを誘導する。
まだ始まったばかりの今日。どうなることやら。




