第36話 景品では終わらない
クレーンゲームの筐体を前にして僕は苦戦を強いられていた。
奥側でこじんまりとしている、何かのゆるキャラのアクセサリー系のぬいぐるみを狙う。
コインを投入し、狙いを定めてから↑のボタンを押し、所定位置で離して←ボタンを押す。
「……」
ここだ!
ボタンを離すとアームが降りてゆく。ぬいぐるみの頭をかすめ、首もとを掴もうとゆっくりと閉じる。が、引き上げる時にすり抜け空振りを見せる。
「いい加減諦めたらどうです?取れないのなら取れないと──」
「まだだよ。閣利沢さん」
「え?」
首もとには空振りを見せたが、狙い目はそこじゃない。僕が狙ったのはストラップ──つまり紐の方だ。
案の定。アームの先が紐に引っ掛かりぬいぐるみが浮かび上がり、アームの動きに合わせて移動する。
──ポトッ
ゲートに落ちて取り出し口からそれを取り出す。
「取れました」
「……そうですわね」
「あげますね」
「え?」
「貰ってくれないと、取った意味がなくなります。どうぞ、貰ってやってください」
意味がわからなそうに首を傾げる閣利沢さんにぬいぐるみを差し出す。
「……。わかりましたわ。仕方なく、ですけど。受け取って差し上げますわ」
「はい」
僕は受け取ってくれたことが嬉しくなり、自然と頬が緩んだ。
何回か賭けて取っただけはあるな。ぬいぐるみ。
「……その笑みは卑怯ですわ」
「え?何ですか?」
「何でもありませんわっ」
「?」
小さく何か言っていた気がしたのだが、気のせいだったかな?
まぁ、閣利沢さんが喜んでくれたのならなんでもいいか。
さてと、次はどうしようかな。
「はるとくーん!」
閣利沢さんを楽しませる為に次はどうしようかと逡巡していると、のえるさんが手を振って寄って来た。
「どうかしたんですか?」
「ふふん。これ見て見て~っ」
「ん、何をですかってか何これ」
のえるさんが持っていた袋を覗き込むと、のえるさんの三分割した内の一つくらいの大きさの箱が入っていた。
いつの間に取ったのか。
「じゃじゃーん。なんかのプラモデル~!」
新しい玩具を買って貰って、喜んで見せびらかす子供のように袋から中身がわかる風にして取り出して見せる。
それは男の子向けのロボットのプラモデルだった。
パッケージに描かれているポーズが、なかなかどうして様になっている。
「どうしたんですか、それ?何かの景品ですか?」
「うん!そうなんだよ。すごいでしょ~っ。にゃはは」
「すごいですけど、僕はあまり好まないです。ロボットは憧れますけど」
昔は憧れて、僕がロボットだ!とか言って走り回って、妹に笑われいたっけ。そういえば。
懐かしい。
けど成長にしていくにつれ、あまりそういう子供向けとかに目を向けなくなってしまった。
大人になったといえばそこまでだけど、このプラモデルは子供から大人まで人気のものだ。馬鹿にできないものがそこにはある。
「そういえば、綾未さんは?姿が見当たらないんですが」
「にゃはは。忘れてた。ちょっと捜して来るね」
そう言って店内をまた駆けて行くのえるさん。てか、走っちゃダメでしょ。曲がりなりにも大人なのに。
「忙しない人ですわね」
「まったくです」
そのあと僕達は合流し、次の店へ行くことにした。




