第31話 ただのお風呂タイムでは終わらない
なぜか戸田君だけ仲間外れ(戸田君は来たがっていたのだが、みんなが反対した)で、僕はただ一人女子風呂で個性的な面々の女の子達に囲まれている。
これはもう……今更感が半端ない程に逃げられる気がしない。ここは成り行きに任せ、何事もなく終わる事のできるよう我慢するしか……ないっ。
「さぁて、始めようか……少年」
なにを!?
……いや、ここで突っ込んだら会長の思う壺だ。
舌なめずりをしている会長は獲物を狙う獣の目をしている。
──ヤられる……っ!
蛇に睨まれた蛙のような気分だった。
今一度言おう……なんでこうなった。
みんなはきっと会長の言葉に躍らさせているだけ。そうだと思いたい。
というか、ここ、女性専用のお風呂だよね……。
「……会長」
「どうした少年。やっと私と子作りする決心が着いたのか?」
「違いますよ!」
「いけませんっ悠人さん!」何が。「ガツガツ攻め込むような会長さんより、なんでもかかってこい!な私の方がヤりやすいと思うんで思うんですっ!」だから何が!?
会長の一言は余計である。
「は悠人君、ま、まだ私達には早いと思うな……!」綾未さん……達って何、達って。
「悠人先輩、会長とではなく。是非私とシましょう!」君は張り合わないで、華妃野さん。
「にゃはは。はるとくん、もってもて~♪」これはモテではないですよ、のえるさん。「なら私も混ざっちゃおうかなー?にゃはは」
「……お願いだから、そういう冗談はやめてください。のえるさん」
「にゃはは。はーい」
てか、貴女が率先してこの場に止めを利かせないといけないんですがね。学園長として人として。
こうなって話が進まないから、会長の脳内真っピンクな発言はやめて欲しいのだ。
「えとですね、この旅館は僕達だけの貸切ではないんですよね?」
「そうだな。この辺は割と来る人も多いから、貸切には出来なかった」しようとは思ったのか。貸切に。
「だから気になって……この女子」「の裸体が神秘的な」「風呂は──って、言葉と言葉の間に妙な単語入れないでください!。誤解されますからっ」
なんでこうも人の話をねじ曲げるのか。もう少し真面目にしていてほしい。
これが会長クオリティと言われればそれまでだが。
「……はぁ。このお風呂も貸切ではないですよね?一般客とか来ないか心配なんですよ。今は誰も居ないからいいですけど、これから来ないとも限りませんし」
「そうなったらこの状況を受け入れて貰い、そのままこっちに混ざって一緒に気持ち良くなろうではないか」
「迷惑にも程があります!」
「まぁ、冗談だが」心臓に悪い冗談だ。「今の時間帯のみの貸切ならしてある」
「……相変わらずやる時はやるんですね」
「あぁ、ヤる時はヤるぞ」
なんかイントネーションと言うか何というか、会長の言う意味はなんだか違う気がする。気のせいであってほしいけど。
「それに、この方が盛大に少年をもてあそ──誘惑できるからな」
「なんで言い直したんですか。弄ぶって言いそうでしたよね」
この場合、弄ぶのも誘惑するのも大して変わらないと思うが。
「そんなわけで、少年をあらゆる手段で誘惑をし、虜にした者が今回の勝利者だ」
また会長のお遊びが始まったよ。
当人の確認というか、意志を無視して。今更なんだけどね。
「それで、その判断をするのは誰なんですか?」
彼女らに視線が行かないように必死に目を閉じ前のめりにしながら訊く。
「もちろん少年だよ。この場にいる少女達は参加者だからね。少年が審判をしてくれるとこちら側としては助かる」
ですよね!
てか、もとからそのつもりでしょうが、あんたは。
こちら側としては精神衛生上の毒でしかないので、この際早く解放してくれるとありがたい話だ。
そう簡単にはいかなそうだが。
「わかりましたよ……もう好きにしてください」
「よし、その言葉は男に二言はないってことでいいな」あれ、僕なんか早まった?「なら始めようっ。強化合宿一日目第二回戦、『チキチキ少年を虜にするのは誰だ』ー!」
──ワイワイパチパチ
反応はまちまちだが、やる気がそれなりにあるのは間違いない、参加者らしい彼女達。
……はぁ。
僕には、既に気力が残されていなかった。