第30話 犠牲では終わらない
湯気が曇り立つ室内、カポーンと漫画の如く鳴り響く室内、広くなぜか富士山の絵がどーんと描かれている室内、そして……
「どうした少年、前屈みになって。禁忌の花園で興奮でもしたのかな?」
「悠人さんの為なら私なんでも致しますので、どんな申し付けでも悦んでお受けします!」
「悠人先輩、お背中流しますか?それとも……もっとディープな所を──きゃんっ♪」
「……悠人。私の全部、見て…?」
ここは女性専用大浴場であり、僕はそこに有無を言わさずいるわけで。
そんな所に僕がいれば当然のように生徒会の面々は脳内を桃色にするわけで、僕にちょっかいをかけてくる。
それに、
「わーい♪みんなでお風呂で流しっこぉ!」
「時峰君がいるのに……いいのかな?でも、仕方ないよね、うん」
「ほぉほぉ、ここまで大きいと、何人まで入れるか試したくなるねぇ……時峰君と一緒か……ちょっと恥ずかしいな」
「は、悠人先輩と……お風呂。これは規律違反。……でも、悠人先輩と……うぅっ」
「ふんっ。ワタクシと共に入浴できることに感謝しなさいっ。おーほっほっほ!」
他のメンバーも次々と入って来る。
どうしてこうなったのだろうか。どうもこうも、これは会長の唐突の発言から始まったのだ。
僕は女性陣の姿を見ないのと、理性を保つので精一杯だ。
あれは小一時間前のこと、賑やかな晩餐が終わったあとの会長の一言から始まったのだ。
海の幸をふんだんに使った豪華な和食の夕飯をみんな食べ終わり、休憩がてらの談笑をし始めた中、会長が悠然と立ち上がり腕を上に上げて軽い伸びをしながら一言呟いた。
「うむ。美味な夕餉のあとは、やはり風呂かな。どうかな少年?」
「え?そうですね。ここは露天風呂もあるみたいですし、楽しみでありますね」
僕は単純に食後の風呂について述べたはずなのに、会長は知ってか知らずかわざとらしく声を張り上げ言う。
「そうか!なら私と入ろうではないかっ。少年は私と風呂に入るのが楽しみらしいからな!」
違ぇよ。なんでそうなんだよ。
「いや、違いますからね!?普通に答えたはずでしょっ?なんでそうなるんですか!」
会長の話聞かずの自由奔放さは知っていたが、時と場所を考えてほしいものだ。いや、だからと言ってそんなふしだらな発言をしてほしいってわけではないけれど。控えてほしい。
「ダメです!悠人さんが会長と入るわけないじゃないですかっ!」
そうそう。
「悠人さんは私と入るのですから!ね、悠人さん?」
なんでそうなるんだよっ!?
いい加減、副会長も自重という言葉を覚えてほしい。あと、場をわきまえることを。
そんな僕の叫びは虚しく、会長は話を肥大化させる。
「それならこうしよう。みんなで仲良く共に入ろうではないか。もちろん、少年も一緒にな」
それは僕には聞き捨てならない申告で、もちろん止めたかったが……
「そして少年を楽しませた者が少年と一夜を過ごす権利を持つこととなる!」
そんなことを会長が言い出した為、逃げ出すことも逃れることも反対すら許されず、ただただ流されるままに僕は巻き込まれる。
だって、みなさんが乗り気なんですもの。
僕は今回も犠牲となったのだった。




