なんか忙しいな。もしかして…人気者?
敵に回せば恐ろしい米軍をだまくらかし、取り入って仲間になることに成功した俺たち。夕焼けの孤島でひとときの休息。「ヒロ。」どうしたエレン。え?剣の手合わせ?いいけど…ええっ⁉アベさんも⁉ ええと、そのあとウィンドウと語って、さらにそのあと先輩と打ち合わせ? 俺需要、赤マル急上昇⁉
RPGっぽい異世界の米軍仮設基地なう。
というわけで現地協力者となった俺たち。
宿として基地のはずれの資材倉庫用の空きプレハブが一つ丸々借りられることになり、今晩はそこで寝ることになった。施設の敷地のすみっこで火を炊き、早目の夕飯。
夕焼けのドモス島は綺麗だ。赤ともオレンジとも違う夕焼けがいわし雲を照らし、海に反射して…絵葉書にして実家に送りたいくらいだ。前後のマイナス材料を無視して景色だけ見るとほんとリゾート地みたいだな。
夕飯は野菜や薫製の肉がゴロゴロ入ったスープみたいの。ラムだっちゃ姉さんと先輩が調理し煮込み中。飯食うごとに皆で分担した荷物は軽くなり楽になるが、手持ち食糧が減って行く不安は一抹増える。
「ヒロ。」
ああエレン。どうかした?
「食事の後、付き合ってくれないか?お前と一度、手合わせしたい、だそうよ。」
肩のウィンドウ・バードフォームが通訳する。
あサンキュ、ウィンドウ。
構わないけど、俺の剣の腕なんてしれてるから…一瞬で俺が負けて終わると思うが、それでも?
「構わないそうよ、勇者ヒロと手合わせしたって仲間に自慢したいらしいわ。」
アベさんが重ねてなんか言う。
「面白そうだな、俺もまぜてくれ。ヒロ、久しぶりに稽古をつけてやる。本気でな、ですって。」
なにぃっっ!練習とはいえ本気のアベさんと手合わせ⁉
…まあ、変な練習三年やるよりアベさんと一回手合わせするほうがずっと訓練効果はあるだろうが…恥ずかしい結果にならないようにがんばろ。
こちらこそ宜しくお願いします、アベさん。
あ、そうだ。ウィンドウ、お前とも話さなきゃな。俺の不思議について相手する約束だったもんな。
「え…ああ、そうね。」
お前が俺の影に尋ねようとしてた質問、まとまったか?
「ええと、…まあ大体は。」
まあ答えりゃ大層なこたぁない、普通の答えばかりになりそうだがな。
それより俺の普段の言動や出来事についてのリアクションを近くで見てたほうが、俺を理解しやすいかもな。
「…どうしてそう思うの?」
俺自身も、俺の事がよくわかってない部分があるからさ。説明しろと言われてもできないようなことがあるかも知れない。お前くらい賢いなら、くどくど質問や説明するよりお前自身の目で俺を観察して分析したほうが近道になるかもしんねぇな。
「…両方がいいわ。」
え?なに?
「両方よ。質問…話はさせて。あなたについて。並行して観察もさせてもらうから。」
ああ、そうだな。それくらいなら影を取られるよりずっといい。実用的に役立ってる心当たりはないが、愛着のある影だ。基本、一生もんだしな。やるのは惜しい。
「…イッショウモン。死ぬまで使えるということね。誰の影だってそうよ。当たり前じゃない。」
わかってるよ。冗談だ。
ところでウィンドウ、鳥の姿で俺の肩にいるのが気に入ったのはわかったから、飯の時くらい一度降りてくれないか?多分、飯が食べづらい。
「そうね。ついでに近場をぐるっと偵察してくる。わたしもこの島のこと、地図と文献でしか知らないし。」
頼む。鳥撃ちの猟師なんてのはいないだろうが、場所が場所だ。気をつけてな。
「大丈夫。心配には及ばない。いざとなれば変化してどうにでもなる。魔術師なめちゃだめよ。」
なめちゃいないが…旧帝国が絡む島ってのがな。いまさらだけど前後の話から察するに旧帝国って高度な魔法を操る国家だったんじゃないのか?
「そうよ。旧帝国の魔法に比べたら今の魔法なんて路傍の見世物みたいなもの。」
やっぱり。だったら戦争とかも魔法がガンガン使われてたんだろ?魔法兵器とか魔法生物とかさ。
「詳しい記録は多くは残ってないけど、そうね。確かに魔法で動く機械や、魔法で生み出された生物は戦時に限らず利用されていたみたいね。」
じゃあこの島にも…例えば対魔法生物用の結界やら罠やら残ってる可能性もあるだろ?魔法を無力化するようなさ。用心に越したこたねえよ。
「ああ…確かにそうだわ。ウェルトゥの神殿は重要な拠点だったはず。領空に結界くらいあってもおかしくないかもね。…そこまで考えなかった。魔力探知の術法を最大励起させておく。さすがは試練と罠の専門家。ありがとう、ヒロ。」
…やけに素直だな。俺別に試練と罠の専門家じゃねえし。ま、文字通りトリ越し苦労かもだけどな。
「え?なに?」
なんでもない。こっちのことだ。
「じゃ、行ってくるわ。わたしが必要になったら指笛を吹いて。多分聞き取れるから。」
ああ、行ってらっしゃい。
ウィンドウは夕暮れの空に飛びたって行った。
丁度のタイミングで配膳が俺の番に。
「はい。清水君の分。ちょっと多目にしといたげる。今日は慣れないことがんばったから。ご褒美。」
あ、先輩。ありがとうございます。
「ちがう。もなみって呼ぶんでしょ?」
え!あ!そか…えと、もなみ…さん。
「さんはいらない!さあほら、あたしは誰?」
う…もなみ。…あああああっ照れくせえっ!
「よろしい。ね、あとでちょっといい?今後のことなんだけど。打ち合わせしときたくて。」
あ、ちょっと遅くなってもいいです?夕飯の後、二、三先約が…。
「先約?誰の?」
エレンとアベさんと手合わせして、ウィンドウと話する約束に…。
「なんの?」
いや剣のですよ。どっちも俺より明らかに強いから、苦もなくひねられると思う…
「違う。ウィンドウさんよ。なんの話をするの?」
…いや日中、せんぱ
ギロリ
…もなみとウィンドウがもめた時、影やらないけど代わりに俺に質問していいって言っちゃったんで。その辺ちゃんとしとかないと、あいつなんだかんだ理由つけてホントにいつか俺の影持ってっちゃいそうだから。
「そう…わかった。じゃあ声かけて。ケース別に対応を確認しておいたほうがいいと思うの。アメリカの兵隊さんと一緒に動くなら、最低限起きそうなシチュエーションには対処できるようにしておかないと。」
ああ確かに。
せんぱ…
ギロリ
…すいません、一個いいですか?
「なに?」
名前だけ呼び捨てで他が丁寧語って不自然でしゃべりづらいっす。先輩呼びか、さん付けを認めてもらうか、呼び捨てを活かすなら…ためグチになっちゃうか。どれかになりませんか。
「じゃあ…ためグチね。」
わかった。じゃあそうさせてもらうよ。でも先輩として尊敬してるってのは変わらないから。
「よろしい。変に調子には乗らないように。」
へ〜い。
「で、なに?」
もなみは疲れてない?環境は異世界だし、海兵隊の猛者を束ねる大佐と渡り合って乗り切ったわけだが。
「大丈夫。なんだかんだ言って異世界初めてじゃないし。大佐だって別に…ああいうステレオタイプを地で行く理性的な相手は分かりやすいもの。判断基準や反応が予想しやすくて。」
じゃあ逆に感情的な人は苦手なんだ。
「んー…どちらかと言えばね。なんか思い付きや感情で動く人と一緒にいると、振り回される感じになって疲れたりする。」
うん。持ち上げようってんじゃないけど、もなみ自身が理知的な感じだもんな。…俺とか割と感情と二人三脚で生きてるけど、もしかして一緒にいるのストレス?
「………」
え⁉ そうなのっ⁉ 黙っちゃうってことは!
「…そういうわけじゃないんだけど。」
…なにその弱〜いフォロー。やっぱ多かれ少なかれストレスなんだ…。だから選ばれなかったんだなぁ俺。そりゃしかたねぇや。とほほほほ…。
「なんか上手く説明できない。けど清水君が嫌いってわけじゃないのよ。ただその…つまり清水君じゃなくて…ああ、もう!この話はまた今度!あたしの中でも整理しとく!」
きちんと聞きたいような聞きたくないような。好きになった人が俺をストレスに感じるという整理された話。…飯食お。
ずずずっ…う熱っ!えほっぅえほっ‼ げほっほ!ぅえほっ!
むせまくる俺。
「ゥイオ オトゥ リヒュウ、ティクニグ・ウェルトゥ。エブ ルクォ…バルディア。」
アベさんがそう言うと、俺ともなみ以外の仲間が笑った。
多分「落ち着けウェルトゥの騎士。がっつくからだ、馬鹿だな。」みたいなことと思われる。俺ともなみも顔を見合わせて笑った。




