ホラー映画だとイチャイチャカップルの男が危険
ザリガニを倒したもののボロボロな俺たち。ゲームだとここらで一回全回復できるゆとりが挟まるんだが…非現実的でも現実は現実か。え?隊員が…行方不明?やべえじゃん。見つかった隊員の様子に驚愕する俺たち!一体…どんな奴に、なにされたんだ⁉
RPGっぽい異世界なう。…異世界の森を行軍中。うー…身体が重い。端々が痛い。特にザリガニの背から滑り落ちた時に強打した肩はマジに医者に見せたいレベル。ピカピカだった革の鎧もこすれや傷やメダカだかザリガニだかの返り体液でグチャグチャ。…あー風呂入りてぇ。異世界はこれが何気にキツイ。
異世界の野宿の連泊はそれだけでHP削られる。大体平成を生きる大学生の俺は文明社会の申し子のようなもん。トイレがウォシュレットじゃないだけで「え?」ってなる人間だぜ、自慢じゃないが。風呂には入れないはわ、基本野糞だわ、食いもんは堅いジャーキーだわ、化物はでるわ…。涙目。…吐きそう。
…とも言ってられない。なんせ役柄上、今の俺はこの世界の勇者って触れ込み。米軍に後ろから撃たれない為に…背筋は伸ばしてキリッとしとかねば。隣の米兵の兄ちゃん…ちょっとハアハア言い過ぎじゃね?…よく見ると他の海兵隊の連中より気持ちメタボ?…まあ海兵隊にも色んな人がいるわな、うん。
予定ではスタート16キロ地点の川付近で一日目キャンプ予定だったが、巨大ザリガニの襲撃の体制立て直しの為、9キロ地点で昨晩は一泊した。俺は気ぃ失ってたからよく憶えてねえんだけど。今は16キロ地点を目指して移動中、ってこと。携帯をこっそりチラ見。午前11時か…ぼちぼち昼休憩かな。
森の真ん中にそれぞれ腰掛けて昼食休憩。…またジャーキーか…生野菜食いてえなぁ。中華ドレッシングで。…てか果物食いたい。メロンなんて贅沢言わないからミカンとかオレンジとか…ジューシーな奴。…ファミレスで5千円分くらい食べたい。…帰れたらやろ。それくらいいいだろ。俺、頑張ってるし。
休憩も終わろうかという時、なんだか海兵隊がざわざわバタバタし始めた。なんだ?お偉いさんの視察が急に決まったのか?ファム。「なん?ヒロ。」連中の様子がおかしい…もなみに変わってくれないか?「分かった…ん、ふう。おはよう勇者さん。」…もなみ、実は…「分かってる。ちょっと待ってて。」
あれ…先輩なんか…機嫌いい?「お待たせ。どうも兵隊の一人が行方不明らしい。捜索してるからちょっと待って欲しいって。」…行方不明。この森で?早く見つけないとシャレになんないぞ。俺は指笛を吹く。休憩隊列の先頭付近から黒い鳥が軽く羽ばたきながら飛んで来て俺の肩に止まる。「なに?ヒロ。」
連中の一人が行方不明だそうだ。時間的には1時間は経ってない。探すのを手伝ってやれないか?「構わないけど…手遅れかもしれないわよ?」…いいから探してくれ。手遅れでもお前を責めたりはしねえよ。「そんなつもりで言ったんじゃない。あなたに心の準備をして欲しかったの。もしそうでも…。」
「自分を責めないでね、ヒロ。」分かったよ。気を付けてなウィンドウ、ここは侵入者を食べる森だ。「平気。魔術師なめちゃだめよ。」ウィンドウは飛び立つと森の奥へ消えた。ちょっともう…これ以上の犠牲者は勘弁だ。みんなで生きて帰ろうよ…こんなバカバカしいとこで死ぬのはよそうぜ?
しばらくして…バサバサとウィンドウが帰って来た。また俺の肩に止まる。お帰りウィンドウ。どうだった?「見つけたわ。隠してもしょうがないから結論を言うわね。はぐれた兵隊は既に死んでる。」…そうか。トイレかなんかで離れて…野生動物にやられたか。「それが…死体の様子がおかしいの。」
「案内する。連中の隊長にも報せて。」…ウィンドウに先導されながら森を行くこと約10分。「…ここよ。」こりゃあ…。どういうことだ?ついさっきまで生きてたんだろ?装備一式を身に付けたまま、木に持たれかかって横たわるそれは、磨いた標本のようにとても綺麗な人一人分そのままの…白骨だった。
RPGっぽい異世界なう。これ…うちの隊の隊員?前回行方不明分とか過去にトリップした別の兵隊さんじゃ…。「Private Williams!」あ隊長さん。…やっぱりそうなんだ。がぁぁっ!クソ無力だな俺!…てか何をされた?プライベートさんは。動物にやられたとしても…一時間で白骨って。
プライベートさんを差別するわけじゃないんだけど…流石にホセさんの時ほど泣ける要素がない。正直、生前の印象が無くて…。ごめんね、プライベートさん。ご冥福をお祈りします。海兵隊の人達は使える装備を死体から外し、分担して各々の所持品にした。骨の首から二つの認識票の内の一つが外される。
遺体は…このままなのか。厳しい仕事だな、海兵隊。に、しても…だ。ウィンドウ、どう思う?「私が聴きたいわ。」魔法かも?「太古には敵の時を進めて滅ぼす魔法があったと言われてるけど…彼の装備や服は綺麗だった。人だけ骨にする魔法、なんて聞いたこともないわ。」じゃあ…なんか動物か…?
RPGっぽい異世界なう。…団体から離れた一人を狙うってのは動物っぽい気がするけど…。「彼も銃は持っていたんでしょう?なぜ撃たなかったのかしら。」確かに銃声は聞こえなかった。立ちションしてるとこ後ろから襲われたのかなぁ。「そして…白骨に?」そう…その過程がまったく想像付かない。
あと相手の動物も。クマとかオオカミ系とかなら犠牲者は絶対あんな風にはならない。何かしら…魔法か、異世界生物が絡んで…待てよ?そいつは俺たちを…狙ってるんじゃないか?こうしてる今の瞬間も…。急に周りの森が不気味な…敵意のあるものに見える。耳元で虫がプーン!っつってビクッ!となった。
あ!もなみとファム!…ウィンドウ、すまん。みんなの所に先に戻って様子見て来てくれ!「分かった。」ばさぁっ!…なんだかんだであいつ頼りになるなぁ。ってな場合じゃない!急げ。アベさんもいるから滅多な事はなかろうが…イザという時その場にいないのは嫌だ!…どん!うわ⁉前の兵隊にぶつかる。
ipodの兄ちゃん!急に立ち止まるなよ。こっちゃ仲間が気になって…。「グ…ウェェッ!ゲホッゲホッ!ゲェェェ!」…まさかのリバース⁉ちょ、急いでるんだけど…でもそりゃそうか。考えてみりゃ訓練や任務を共に過ごした仲間があんなんなってるんだもんな…。しかも短い間に二人目だ…キツイわな。
あーゆーおーけ?「Sorry…I'm…オッ…オェェェッ!」ダメじゃん。背中さすりたいけど兄ちゃん防弾チョッキみたいの着てて…さすられてる感は届くだろうか?…まあやっとけ。よしよし。「Thank…you,Thir Hiro.」…ぷりーずこーるみーじゃすとヒロ。うぃあーちーむめいつ。
あー…「Pasotti…Private.Enrico Pasotti.Please call me,Enrico.」プライベート・エンリコ・パソッティさんか…またプライベート…あ!階級だ!「プライベート・ライアン」のプライベートか!イタリア系かラテン系かな?…人種のるつぼ、か。
じゃあさっき亡くなってた方は…あー申し訳ない。「プライベート」しか憶えてない。今更聞けないし…。俺、自分で思ってるより薄情なのかな…?このチーム全メンバー仲間のつもりだけど…どっか感覚が麻痺しつつあるのか?…あ!もなみとファム!エンリコ、悪いけど追い越すねっ。
「どうしたの?血相変えて。」もなみ。…よかった。無事か。実はこれこれこうで…。「白骨化してた?この…たかだか一時間で?」うん。しかも身につけてる装備や服は綺麗に身につけたままで、血の跡や乱れは無いんだ。「…不気味ね。」とっても。んでもなみとファムの事が心配になって…。
「見え透いたご機嫌取りね。」そんなんじゃねーよ!俺は本当に…「ファムさんと替わる。敵の動物について心当たりがあるかも知れない。」あ、もなみ…「…人だけを食べて、服着たままの骨を残す動物?」ファム。あ、ああ。そう。この世界じゃ有名な生き物?神話や寓話に出て来たりする?「うーん…。」
「心当たりないなぁ。ごめんなヒロ。うちあんまり役に立ってへん…。」んな事ねぇよ。死んだり腕失うかも知れなかった仲間のケガを治してくれたじゃん。「でも…。」俺やアベさん達が思い切り戦えるのも、万一があってもお前がいると思えるからだ。役に立ってないなんて言うな。「でもうち…もっと…」
「もっとヒロの役に立ちたいねん…ヒロだけの、役に立ちたい。」…ファム。…ありがと。その気持ちだけでも充分俺、頑張る力を貰ったよ。今は…前の冒険の時とは事情も違う。笑っちゃうけど俺、勇者だってさ。だからこの…パーティ全体の役に立つことが、俺の助けになることなんだ。「…ヒロ。」
俺…お前やもなみは勿論だけど米軍も含めて…この仲間全員護りたい。その為にお前は絶対必要だ。だから…。「だから?」役に立ってないとか寂しいこと言うな。あと…急にいなくなったりするな。絶対。約束しろ。これ勇者としての命令な。「…約束します!勇者ヒロ!」ファムは笑って敬礼のマネをした。




