その内「外伝 〜ファムの大脱走 〜」とかで短編集に?
いよいよ未知の森に突入!しかしもなみとの痴話喧嘩の熱は未だ冷めやらず…。あの…もなみ…。「…ファタリさんと代わる。」お!おうっ‼なんかファム、久しぶりだな。「聞いてやヒロ!色々大変やってん。」そう言って彼女が語るファムルートのサブシナリオとは?
RPGっぽい異世界なう。
出発前のブリーフィングによれば、森林地帯が約20km、砂漠が約15km。森林地帯の16km地点に河川が流れており、一日目はその周辺でキャンプ予定だそうだ。
先頭は…アベさんと小柄な米兵か。
ばささっ…と肩に黒い鳥が。あ、お帰り、ウィンドウ。早かったな。どうだった?
「見渡す限りこの奇妙な森ね…大きな生物も動き回る植物もとりあえず見当たりはしなかったけど。」
ウィンドウ、アベさんに付いてやってくれないか?普通の森ならともかく…先頭にお前がいた方が気付ける異変があるかもしれない。
「わかった。あなたはしんがり?」
ああ。
「気をつけて。優れた狩人は獲物の列の最後から狙う。役割上は勇者だけど…危ない時は必ず逃げるって約束して。」
…分かった。命あっての物種は俺の信条だ。そうなった時はここ一番の抜群の逃げ足を約束しよう。…アベさんを頼む。
「任せて。魔法に関してはヘマはしないわ。魔術師なめちゃだめよ。」
ウィンドウは飛び上がり、短く滑空すると列の先頭に向かって飛び去った。
あ、前の方歩き始めたっぽいな。
出発か。
ipodのそばかす兄ちゃんの後ろをもなみと並んで歩き始める。
あの…もなみ。
「…昨日はごめん。取り乱して。」
いや、俺の方こそ。ごめん。ウィンドウうんぬんもだけど…俺の子供っぽいところとか気分屋っぽいところとかが…もなみのストレスになってた…んだよな?多かれ少なかれ。
「……。」
役割上の振る舞いもあるし、なるべく理性的に振る舞うよう気をつけるよ。
「……ファタリさんと代わる。戻って来たみたい。回復役がいた方がいいでしょ。英語の通訳がいりそうなら戻るから。」
あ、ああ…分かった。
なんか許された感はない。
もなみのトーンは終始淡々としていて事務的だった。
えと…もなみ…。
その瞬間、くるっと振り向いた彼女の顔がぱあっ、と輝いた。
そのままがばっと抱きついて来る!
「ヒロ!会いたかった‼」
お⁉おうっ!ファム!
なんか久しぶりだな。無事だったか。えらく長いこと戻ってこなかったじゃんか。
「それやそれ!聞いてやヒロ!色々大変やってん。父上ったらひどいんやで。ごはん食べに戻ったら厨房に罠が仕掛けたって…網が落ちてきて捕まってん。」
…なかなか面白い父上だな。
「冗談やあれへん!うち野生のグドォかっちゅうねん!で、みっちり長々お説教。更にォレィグンフから上位司祭の家庭教師が来とってやぁ。木の神聖魔法の猛特訓や。朝から晩まで。休む間もなくず〜っと。ず〜っと。ず〜…っと!まあ…お陰で育成の術はちっとは上達したけど…。」
植物や樹木の育成の魔法か?
そか。お前の使えるの月と木、だったよな。
ちなみにタチの悪い木を一発で枯らす魔法…とかある?
「はあ?なんで木ぃ枯らさなあかんの?畑の野菜や果樹の育ちを良くしたり、収穫量を増やしたり収穫時期を早めたりする為の魔法のが役に立つやん。」
そうか…やっぱそうだよな。いや、必要になることがあるかも、と思って。
「『育成』は加減が難しいねん。とにかく元気にでっかくするならうち得意やけど?」
食人植物を元気にしてもな…。
ん?作物相手ならでっかけりゃでっかいほどいいんじゃね?加減っているの?
「収穫時期を過ぎて育て過ぎると穂が落ちたり実が腐ったりすんねん。」
ああなるほど。すげえでけえリンゴとかができるわけじゃないのな。
「…リンゴってなに?」
あ、そか。俺の世界の一般的な果物だ。拳二つ分くらいの大きさの丸い果物。赤い皮で実は白っぽい。しゃくしゃくした歯ごたえで味は甘く、少しすっぱい…かな。
「へえ。プリーアみたいなもんかな。」
…プリーアが分からん。
今回は抜け出せなかったんだな。家庭教師に隙がなかったのか。
「そや!それやそれ!巫女仲間にも協力してもろうて何度か脱走しようとしてんけど、どこに隠れてもことごとく見つかってや。」
…巫女仲間、脱走を手伝ってくれたのか?
「うちがする、うちたちの冒険の話がめっちゃ楽しみらしいわ。うちが冒険に参加せんと続きが聞けへんやろ?」
なるほど。巫女とはいえ年頃の女の子たちだもんな。神殿なんかで巫女生活なんかしてるんだし…俺たちの探索行の冒険譚なんて丁度いい退屈しのぎか。
「せやねん。巫女仲間しか知らない隠し戸棚や地下納戸に隠れても見つかって…なんでって⁉なってんけど。」
…ファミリーの諸君、残念なニュースがある。この中に裏切り者がいる。…みたいな展開?
「ちゃうよ!うちの友達にそんな子おらんもん!父上や。うちのぱんつ全部に探知の呪符が縫い付けられててん!信じられんやろ‼」
タンチノジュフ?
「簡単な呪文で居所が地図の上で光って映る追跡用の小っちゃい布の札や。それがうちのぱんつというぱんつ全部に!びっくりするわ!」
…父上。なんか…レベル高えな。
「しかも夜は家庭教師が眠りの魔法かけてくるんやで!うち奴隷やペットやないっちゅうねん!大概腹たったわ!」
徹底してるな。まあ、それだけお前のこと心配してる、ってことだろ?大事にされてるんだよ。
「それは…そうかも知れんけど。」
待てよ?それだけされてよくこっち来れたな。あ、もしかして今ぱんつ履いてな…
バチン!
ってえ!ひっぱたくことないだろ!
「履いとるわ!ヒロが変なこと想像するからや。」
履いてるんだ。だったらまたすぐ見つかるんじゃないか?
ってかその呪符の箇所だけ切り取れば?
「それが…切り取るとぱんつとして成り立たなくなる場所にばっちり縫い付けてあってん…。」
…父上…上級者だな。
で、どうやって誤魔化したんだ?探知ぱんつ、巫女仲間にも履いてもらってるとか?
「んなことしたらその子が処罰されるやん。…まず眠りの魔法にかかったフリしながら抵抗してん。」
…高位司祭の魔法にレジスト?よく耐え切ったな。判定が微笑んだのか。
「咄嗟に精霊降ろしを使ってん。」
え!ファムも使えるの⁉じゃあ電撃で家庭教師もぱんつも黒コゲで、ファムは全裸に…
バチン!
だからっ!アタマ叩くな!馬鹿になるだろ⁉
「なんで雷の精霊やねん!眠りの精霊に決まっとるやろ!」
ああなるほど。眠りの精霊に体を預けてりゃ、上位司祭だろうが法王様だろうが眠りの魔法をかけれるわけないわな。眠りそのものを司ってるコトワリの執行者なんだろ?精霊って。
「せや。うちも使うのはすごい久しぶりやけど。」
癒しの精霊とか…ばかすか降ろせばいいじゃん。強力に治せそうだけど。
「確かに癒しの精霊を降ろして直接術理を施せば強力な癒しができるけど…精霊降ろしは使い過ぎると…術者が人間でなくなるねん。」
えっっ!どゆこと?
「塔で塩になりかかったやろ?憶えとる?」
忘れたくても無理だ。体が塩な上に、心は神様に飲み込まれかかったんだからな。
「太陽神様の御心に触れて…自分が薄まって消えてゆく感じ。精霊を繰り返し降ろすと、段々あんな感じになんねん。」
…そういうことか。魂というか心というか…霊みたいなもののパワーが向こうさんのが強いわけだ。
「最後は身も心も精霊そのものになって、世界の運行に組み込まれるんや。永遠に。」
…怖いな、精霊降ろし。あ!じゃあ、だっちゃ姉さん…じゃねえやラム姉さん、やばいんじゃないか?こないだ一度見ただけだけど…結構ポイント貯まってね?精霊化の。
「せやねん。周りはもうやめろって繰り返し言うねんけど…。」
攻撃力として期待してたんだが…だっちゃ姉さんの今後を考えると10万ボルトは多用できないな。
…で、まんまと夜中に抜け出したのか?
「半分正解やな。そのまま抜け出してもぱんつで見つかるし。やから衣装部屋から二十枚位ぱんつ持ち出して、巫女仲間とばらまいてん。色んなやり方で。」
夜な夜なぱんつをばらまいて回る巫女軍団…中学生が考えた都市伝説?教義とかに豪快に反してないか?
それでも結局、一個一個見つかったら…時間の問題で捕まるんじゃ…?
「まあな。でもみんなノリノリでや。工夫してぱんつが移動するようにしてくれてん。」
ぱんつに命を与える魔法…エンチャント・ぱんつ、とかか?
「バルディア!どんな魔法やねん!そないな魔法があるかいな。樽に入れて川に流したり、肉に縛り付けて野良ティーシャにやったり…」
野良ティーシャ?犬か猫みたいな奴かな?
「巡礼者の荷物に紛れ込ませたり…そのうち誰かが祭祀用の浮き灯篭を勝手に出してきて…」
ウキトウロウ?
「紙でできたこれっくらいの袋の口に火種が下がってて…火をつけると飛んでくやつ。」
ああ…ラプンツェルで飛ばしてた奴か。見る度に火事にならないか心配になる小型の熱気球みたいな。
「ラプン…なんとかは知らんけど、多分それや。最後は教会のテラスから、みんなで一個ずつぱんつをくくりつけた浮き灯篭を、夜空に飛ばしてん。」
あー…幻想的なラストだな。ほのかに光りながら夜空に舞い上がる幾つものぱんつ、か。
…どんなサブイベントだ。
ま、参加した巫女ガールズにはいい思い出になりそうではあるが。
ダミーはそれぞれが移動するようにばらまいて…で、結局ファム本体はどこに隠れたんだ?
「シーツ破いて結んだ作ったロープを窓から下げて、如何にも外に逃げたでーって見せかけて、衣装部屋に隠れてん。」
…探知されても元々ぱんつ置き場だから探されないって寸法か。
なんか…ファム、賢いな。
「やろ?布団袋に食料と水と潜り込んださかい、ちょっとやそっとじゃ見つからんと思うで。」
そか。お前はお前で大変だったんだなぁ…。
「今頃大騒ぎやろうけど…父上が悪いねん。年頃の娘のぱんつに片っ端から呪符縫い付けたりなんてした罰や。」
それでも逃げ切ってるわけだから…ある意味、お父上の処置は適切か…やや不足だったと言ってもいいのかも。この娘にしてこの親ありって感じ。
「それよりもなみ、どしたん?元気なかったみたいやけど?」
ああ…実は昨日一悶着あってな。
「何があったん?ヒロ、なんかしたん?もなみに。」
してねーよ!
されたんだ、ウィンドウに。
あいつ俺のこと…その…好きだったらしくて。急に抱き締められたりしたんだよ。
「はあ?なにそれ。ヒロはされるがままやったん?」
だって実験だから目ぇつぶってじっとしとけって言われたんだもん。
「今時七つの子供でもそんな見え透いた手には乗れへんで。」
…悪かったな。
で…それをもなみに見られて…。
もなみ、泣きながら怒っててさ。事情を説明したり謝ったりしたんだけど…とりつくシマがなく。
「……。」
なんか…すまん。ファム。俺…隙だらけでグダグダで…。
「…大体ヒロは鈍すぎんねん。うちなんてすぐ分かったで。ウィンドウはヒロに気があるって。最初にヒロの影が欲しいって言った時。」
…すげえ初期だな。ほとんど出会ってすぐじゃねえか。
「…ヒロはな、損得抜きに誰彼構わず優し過ぎんねん。もうこれ以上…ライバル、増やさんとって。」
彼女はそう言うと俺の手を取って、きゅ、と握った。
俺は何も言わずに、彼女のその手を同じだけの強さで、きゅ、と握り返した。
【作者より】お気に入り登録して下さってる皆様、ありがとうございます!
今回もきちんと結末までたどり着けるよう…頑張ります。




