行方不明の海兵隊が残したデジカメが見つかっても、俺は見ない‼
ウィンドウのまさかの行動が原因で、気まずい感じのもなみと俺。軍師と勇者が痴話喧嘩中って…生々しすぎないか? いよいよ到着した『侵入者を食べる森』。もう名前がイヤ。見た目は…。 ‼ …なんだこの森⁉ そこで俺たちが目にしたものとは⁉
RPGっぽい異世界なう。
6輪の装甲車に分乗し、西進して森を目指す。
RPGキャラチームは同じ車両。
もなみとは朝、挨拶したきり、一言も口を聞いてない。
ウィンドウは空気を読んで、俺から離れて鳥形態で空から追尾中のはずだ。
見た感じはいつものもなみ…だがどこか近寄り難いというか、話しかけづらいというか。
もともと理知的な表情なことの多いもなみ。
ちょっと硬い表情になるとこう…月は無慈悲な夜の女王、みたいな。
ファム憑依状態の時はくりっとかわいい感じなのに、女の子って表情次第で別の人みたいになっちゃうんだなぁ。
うーん…これから厳しい魔境ステージが2面ほど連チャン予定なんだが、軍師と名義だけとは言え勇者が痴話喧嘩中…。
僧侶不在で、いるのは回復魔法使えないバーサーカー属性だっちゃ巫女…。
一番頼もしいのが、だまくらかして取り入って味方にしてる米軍…。
だまくらかし続ける為にウィンドウは召喚獣モードにはなれないし…。
RPGっぽい異世界って書くけど、こんなシチュエーションのRPG見たことない。
大抵、幼馴染の元気っ娘ヒロインとかクールな長身の剣士とか年齢不詳の色っぽい女魔導士とか獣人だけどフワフワかわいくて語尾が「ニャン」の奴とかさ。
健全な青少年もそうでない諸々の人々も、「一緒に冒険したらドキドキ楽しそう」と思える仲間と、しょぼいお使いから段階的に市町村規模、国家規模、世界規模…下手すりゃ宇宙規模、の事件に絡んで行くよな。
ぽんっと異世界に放り込まれて、涙目になりながら生活してたら急に国家規模の事件に命がけで巻き込まれて、三四回死にかけながらクリアして、現世に戻ったと思ったらまた異世界に引き戻されて、ちぐはぐギクシャクなどんちゃかパーティーと宇宙規模の事件解決に挑む俺って…。
ある意味、真の勇者?
あ、ごめん。シャベリン。
ちょっと蹴った。
足元に寝かしてあるんだもん。
槍って車両に持ち込むと邪魔だな。
装輪装甲車、思ったよりサスペンションが効いてて、非人間的な乗り心地ではない。が、よく揺れる。文字通り道無き道をガンガン走ってるんだろう。
ん?スピード遅くなった?
ちょっとした斜面をゆるゆる登ってく感じ…。
その後装甲車は更にスピードを緩めると、ついに止まった。
着いたか。
最後尾に座ってipod聞いてたそばかすだらけの若い兵隊さんがビッとイヤホンを耳から引き抜いて車両後部のハッチを開けた。
うわ…暑い!
なんかむわっと真夏日の熱気が…!
まだ早朝と言っていい時間帯なのに。
荷物を手に外に出る。
地面に降り立って振り向くと…。
うおっ!森ってこれ?
基地のそばの広葉樹林と規模が全然…ってかなんか樹木の種類!
熱帯雨林に似てるけど…色が。緑もあるが所々、紫やら青やらエンジやら…海藻サラダみたいな。しかもなんか…樹という樹が。…背が高い。三〜四十メートルはゆうにある。
植物には違いないんだが、なんか木質の幹の樹木でなく、太っい茎の草?大人三、四人が伸ばした手ぇ繋いで抱きつく位の。
それらが、ずどん、と真っ直ぐじゃなく微妙にカーブして…びろーん、ってな感じ。
広葉樹だ針葉樹だってより…なんか色々だな。
でけえカイワレみたいのが群生してるかと思えばブロッコリーみたいのがそこかしこに付いた背の高いのがあったり。緑のワタみたいのが岩にへばりついてたり。
あ、木質の木もあるじゃん!…と思ったら巨大な倒木…でかっ!これヤクスギが丸々倒れたくれえあるぞ?しかも倒れてから相当年月経ってるな、こりゃ。
風雨で激しく侵食されて丸太っぽくない…枝分かれしたカツオブシ(削る前)みたいな感じ。
しかもそこかしこに…。
なんだこの森…自然の森か?これ。
ビジュアルだけ眺めると完全に悪い夢。
しかもなんつうか…他の惑星の未知の植物…とかじゃなく、どっか見憶えあるんだよな。
気持ち悪い。落ち着かない。
なんだろ?この感じ。
俺の肩にウィンドウがばささっと降りて来る。
どう思う?この森。俺この世界の植生についてはよく分からんが、なんか違和感あるんだけど。
「とても弱いけど魔力が働いてる。根っからの自然の植物ってわけじゃなさそうね。」
侵入者を食べる森、か。
毎度の勘ぐりだが…この木々、
動き出すんじゃあるまいな?
「なんとも言えないわ…今の有効射程で感知するかぎりは、細い樹木に添え木をする程度の本当に簡単な弱い魔力しか感じない。けど植物そのものが肉食の動的性質のものなら魔力では判別できないし…。」
そういう植物ってこの世界でメジャー?
「いいえ。少なくとも塔の蔵書の記録にはない。神話やおとぎ話に、信憑性の低い記述が散見される程度。」
…けど海兵隊は帰って来なかった。
「用心しながら進むしかないわね。もなみから目を離さないで。何かある時、彼女が一人目にならないように。」
お前…もなみの心配、してくれるのな。サンキュ。
「勘違いだわ。優しいなんて思わないで。私は魔女よ。正真正銘のね。正直に言うともなみが心配なんじゃない。ただ…。」
ただ?
「もなみに何かあれば、ヒロは悲しむんでしょ?とてもひどく。」
……。
「…少し先行して斥候をするわ。用があったら指笛を吹いて。何があるかわからない。けど確実に何かある…いる、と言った方がいいのかしら。くれぐれも、気をつけて。」
ああ、お前もな。ウィンドウ。
返事の代わりか、黒い鳥はけーんっ!と鳴くと俺の肩から飛び立った。
小さくなって行く影を見つめて俺はぼそっとつぶやいた。
あのな、ウィンドウ。
お前…自分で思ってるほど、魔女じゃないぜ?




