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大海の蜃気楼 ートリアイナ王国海戦記ー  作者: 出羽育造
第1章 灼熱の世界大戦
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第28話 ネアス島攻防戦③

「なにッ、ドアマースが飛行場に? だが、飛行場に向かうには、高さ30mの崖がある。ドアマースじゃ越えられないはずだ。おわッ!?」


 晴嵐改の正面直前に現れたフィンヴァラーがコクピット目掛けて戦斧を水平に薙いできた。鮎貝は操縦桿を押して機体を降下させて躱す。頭上スレスレを鉄の斧が通過した事でグロウが変な声を上げた。


「それが、アルビオン2機がかりでドアマースを吊り下げて飛行してるんっすよ。機体が揺れて数は数えらんねぇっす!」

「本当だ…。やつら考えたな」

「キヤアアアーッ! 大尉、上、上ーッ。よそ見しちゃダメぇー!!」

「うおっ!」


 フィンヴァラーは晴嵐の胴体を跨いで両翼の付け根に足を置き、マナエネルギーの噴射を止めた。重量9.35トンの重量が直にかかり、機体は地面と平行のまま、一気に降下し始めた。フィンヴァラーは止めとばかりに盾を投げ捨て、両手で戦斧を逆手に持って、コクピットに突き刺そうと振りかぶった。そうはさせじと鮎貝は操縦桿を左右に振って機体を揺らし、グロウは上部13mm回転式機銃の発射ボタンを押した。


 急激な機体の揺れでバランスを崩したフィンヴァラーに13mm機銃弾が舐めるように命中して火花を散らし、装甲化されていない翼をへし折った。晴嵐改から投げ出される寸前、フィンヴァラーは戦斧を晴嵐改の胴体下部に突き刺し、20mm機銃に引っ掛けて固定すると、残った翼の推力を全開にして機体を引っ張り上げて晴嵐改に抱きつき、腕や足を動かして晴嵐改の外板を引き裂き始めた。ダメージを受けた機体はフィンヴァラーの重量を支えられず、地表に向かって急速に降下して行く。


「クソッ、エンジン出力全開にしても浮き上がらん。このままでは墜落するぞ」

「いやーん、結婚する前に死ぬのはいやぁー!!」

「そもそもラーチェルの姉御は年齢=彼氏無しでしょ」

「うっさい! 一平だって彼女いないでしょ!」

「お前らは本当に緊張感が無いな! それより、グロウ。航空団司令部にドアマースの件を報告しろ。落ちる前にやるんだ、急げ!」

「は、はいっ!」

「FVの顔が爆撃席の窓から丸見えっすね。オレのケツ穴でも見せたろうかな」

「ワハハハって、バカヤロウ! こっちは真剣なんだ。笑わせるな!!」


 鮎貝大尉の必死の操縦によりサマラス要塞を抜け、ネアス飛行場まであと数キロメートルの地点となったが、過負荷状態で運転していたエンジンが煙を噴き、晴嵐改は力尽きたようにがくりと機首を下げ、フィンヴァラーを下に抱えたまま、サマラス山麓の草地に不時着すると機体を激しく地面に叩き付け、主翼やエンジン、さらにはフィンヴァラーの主翼や手足をばら撒きながら、100m以上も横滑りし続けて停止した。


「…クソ。みんな無事か? ケガはしていないか?」

「だ、大丈夫です…(うう…またおしっこ漏らしちゃった…)」

「し、尻が割れた…っす」

「大丈夫のようだな。機体から燃料が漏れてるかもしれん。急いで脱出するぞ」

「はい…って、やだ、キャノピーが開かない!」

「わかった。待ってろ」


 鮎貝大尉は晴嵐改のキャノピーを開けて操縦席から出た。高田兵曹も大破した胴体の下から這い出て来たが、頭に怪我を負ったようで額から血を流している。


「大丈夫か、一平」

「大丈夫、かすり傷っす。それよりもラーチェルの姉御を出してやりませんと」

「そうだな」

「翼内タンクが破損して燃料が漏れてるっす。火も出てますし、急ぎましょう」


 鮎貝と高田は破損した穴に手足を掛けて機体をよじ登り、操縦席後部のレーダー員席に近づいた。中ではグロウ少尉が内側から緊急開閉レバーを何度も引き、キャノピーを力の限りガンガン叩くが強化防弾ガラスはびくともしない。漏れた燃料に火が迫っている。時間は僅かしかない。

 鮎貝は機体外部の緊急開閉装置を探し出すと、急いで蓋を開けレバーを引いた。すると僅かにキャノピーが上がり、機体との間に隙間が出来た。二人は隙間に手を差し込んで持ち上げようとするが、キャノピーはびくともしない。力を使い果たし、息継ぎで手を休めた最中、高田が何かを思い出したように機体から降りてどこかに行ってしまった。一人になった鮎貝は再びキャノピーを持ち上げようとする。グロウは泣きながら自分を置いて逃げるように鮎貝に言った。


「ふぇええ~ん。大尉ぃ~。もういいです。私を置いて逃げてください~。墓標名は「結婚したかった女ラーチェル・グロウ。来世はイケメンハーレムを作りし事を夢見て」にしてくださいね~。ぐすぐすっ」

「イケメンハーレムなら今世で作れ。絶対に無理だと思うがな。必ず助ける。諦めるな」


 そこに鉄の棒を持った高田が戻って来ると、キャノピーと機体の隙間に突き刺して「てこ」原理でキャノピーを持ち上げ始めた。二人で押し続けていると、ミシ…ミシ…と音を立てて持ち上がり始めた。


「いいぞ。もう少しだ」

「せ~の!」


 掛け声をかけ、全体重を乗せて棒を押し下げると、バキン!と金属が壊れる音がしてキャノピーが外れて地面に落ちた。高田はグロウの両脇を抱えて立たせると機体下に降りた鮎貝にポンと投げ渡した。鮎貝はお姫様だっこで受け止める。その際、グロウのズボンが濡れている事に気付いたが、知らない振りをして高田に声を掛けて、機体から離れるためグロウを抱いたまま走り出した。

 三人が走り出して間もなく、機体から漏れた燃料に火が付いて爆発炎上し、爆風で地面に叩き付けられ、グロウは投げ出されて激しくお尻を打って悶絶した。


「ふぎゃっ! 痛ったーい。お尻めちゃ打った~」

「大丈夫か、二人とも」

「大丈夫じゃないっす。額の傷がまた切れたっす」

「ああ…これは酷いな。グロウ、治療してやれ」

「はい。一平、こっち来て」


 グロウが胸ポケットから大型絆創膏を取り出して高田の額に貼っている間、鮎貝は周囲を見回した。彼らがいるのはサマラス山の北西側、現在の戦場からは山陰になっている場所だった。山陰の向こうからは引っ切り無しに砲撃の音と爆発音が聞こえてくる。ふと、晴嵐改に抱き着いていたフィンヴァラーの事が気になって探して見ると、100m程離れた場所に無残な姿で転がっているのが目に入った。鮎貝はグロウと高田を誘って、フィンヴァラーの様子を見に行くことにした。


「手足が取れて、酷い姿だな」

「確か、FVの操縦席は胸の部分にあるんでしたよね(パンツが濡れて気持ち悪い…)」

「脱出した様子はないっすね」


 鮎貝と高田が胴体を探っていると、脇腹の部分にレバーが付いた蓋を見つけた。レバーを動かして蓋を開け、中にあったつまみを矢印方向に回す。すると、圧搾空気が抜ける音がして胸のカバーが跳ね上がった。三人は胴体によじ登って操縦席の中を見ると、銀色のパイロットスーツを着た若い男のパイロットが前方の計器盤にうつ伏せになっていた。計器盤は血で真っ赤に染まり、床に大きな血だまりを作っている。グロウが首筋に手を当てて首を振り、座席の周囲を確認した。


「大尉、ここの部分見てください。シートベルトの固定器具が壊れてます」

「墜落の衝撃で壊れたんだな。それで、前面の計器盤に顔をぶつけたんだ。顔が完全に潰れてる。ほとんど即死だったろう」

「敵とはいえ、かわいそうですね」

「そうだな…」


 鮎貝は敵兵の認識票を取った後、手を合わせて冥福を祈ってからフィンヴァラーを降りて周囲を確認した。要塞に行くにしても徒歩で山越えをしなければならず、仮に行けたとしても激しい迎撃戦の最中では邪魔になるだけだろう。南西方向に目を転じると遠くにドアマースや装輪戦車を運んでいる様子が見える。つまり、第11師団や第2師団司令部にも危機が迫っているという事だ。鮎貝は思案した後、グロウと高田に告げた。


「飛行場に戻るぞ」

「ええっ! 敵の狙いは飛行場の確保だと思います。危険です!」

「いや、奴らは戦列を整えてから進撃するはずだ。それには若干の時間の猶予が生じる。敵が基地に到達する前に到達できれば、残っている飛行機で離脱する」


「も、もし間に合わなかったら…?」

「王国兵らしく、銃を手にして戦うだけだ」

「ですよね~(泣)」

「銃剣突撃っすか! 日本人の血が騒ぐっす」

「アンタは能天気でいいわね…」


 鮎貝大尉、グロウ少尉、高田兵曹の三人はネアス基地に向かって急ぎ足で移動を始めた。


「姉御、おしっこで濡れたおパンツとズボン、基地に着くまでに乾くといいすっね!」

「う、うるさい! 余計なお世話よ、ドスケベ!!」

「貰ってあげてもよろしくてよ♡」

「誰がお前なんかに! 私の聖水濡れおパンツはイケメンマッチョにしかやらん!」

「お前らなぁ…。その余裕とお気楽さが羨ましいよ…」


 二人のあまりに能天気な会話に、鮎貝大尉は深くため息をついた。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「シスコンリーダー、聞こえるか。こちらアルファリーダー」

「聞こえます。敵が砲撃ラインに突入。ロリコンマスター大隊は前進、射撃開始しました。当中隊も間もなく射撃を行います」

「いや、よく聞け。敵の一部が航空軍司令部とネアス飛行場に向かっている。シスコンリーダーは中隊全車を率いて救援に向かえ。あそこには軽装備の守備隊と数両の装甲車両があるに過ぎない。事態は急を擁する。シスコン大隊は敵機甲兵力を排除し、飛行場を防衛せよ」


「命令受領しました。敵機甲兵力撃滅のため、直ちに発進します。しかし、飛行場に向かう進撃路は無いはず。敵はどうやって…」

「アルビオンがドアマースや戦車を空輸したらしい。地上攻撃を行った晴嵐改が見たとの事だ。その晴嵐改は通信を送った後に撃墜された」

「アルビオンが!? なんてこった! 皆聞こえたな。大隊全車右旋回、全速前進!」

「頼んだぞ。こっちは任せろ」


 ユウキの率いるシスコン大隊24両(トリシューラ6両、トライデント18両)は、エンジンを全開にして、排気管から黒煙を吐き出して半埋没陣地から飛び出ると、土砂を跳ね上げて前面戦場から離れ、北西方向に移動を始めた。

 不整地を土砂を跳ね上げながら進むトリシューラの中でユウキは第2中隊長グレッグ・モートン中尉、第3中隊長リチャード・スレイダー中尉に指示を出す。


「モートン隊は俺の隊と一緒に駄犬(ドアマース)を迎え撃つ。スレイダー隊は飛行場に向かい、群がる害虫共を蹴散らせ。トリアイナの戦車は奴らの魔導戦車とは一味違う事を思い知らせてやれ!」


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「ロリコンマスター全車前進。接近する敵を叩け!」


 増派機甲師団第2戦車大隊を指揮するエドワードは、トリシューラの無線機に叫んでレシーバーを叩きつけるように置いた。砲塔上部に装備されたカメラから送られる映像を見ていた、砲手の紅林武雄軍曹が敵接近を報告する。


「ドアマース接近、距離1,200! さらに、スヴァジルとグルファクが左右に展開しつつあり!」

「装輪戦車は第2、第3中隊に任せろ。先頭のドアマースに照準!」

「了解!」


 エドワードが指揮するトリシューラはガクンとつんのめる様に急停止すると、砲塔を僅かに動かして先頭を進むドアマースに照準を定める。ドアマースは全高18m、全備重量は60トン以上。その1/3は強化装甲で占められ、手持ち式120mm魔導衝撃砲、肩部に75mm多連装ロケット砲。左前腕部に内蔵式20mm6連装回転式魔導砲等のほか、近接戦闘用のヒートアックスを装備した重武装の機体であり、古代の剣闘士を機械化したような姿は1,000m以上離れていても威圧感を感じる程だ。事実、その圧倒的戦闘力でオスマニア戦線では最終防衛ラインを粉砕し、エウロペ戦線では条約機構軍を圧倒して戦線を押し下げている。


「駄犬(ドアマース)共…。他の地域では敵無しだったそうだが、トリアイナに手を出した事、死んで後悔させてやるぜ。撃て!」

「撃て!」


 紅林が引き金を引く。砲口が轟然と火を噴き、120mmAPFSDS弾が音速を遥かに超える速度で撃ち出される。ロリコンマスター1が発射した砲弾は、先頭を歩くドアマースの最も厚い胸部装甲がぶち抜き、魔導ジェネレータ内のマナを誘爆させた。爆発で上半身が十字に裂かれて地面に落ち、続いて下半身が壊れた繰り人形のように崩れ落ちた。


 指揮官機が爆散した事に驚愕した後続のドアマースの進撃の足が止まった。西田少佐とエドワードの戦車隊はその隙を見逃さない。トリシューラから発射された砲弾は、いかなる戦場において魔導砲を跳ね返して来たドアマースの装甲をやすやすと貫き、内蔵ロケット砲弾や魔力変換炉のマナを誘爆させて金属的な叫喚と共に機体を引き裂き、炎の塊にする。また、ある砲弾はドアマースの胴体を貫通して撃破すると、後続機の魔導衝撃砲に命中、衝撃砲のエネルギーを誘爆させて上半身を爆砕した。


「スゲェなおい、1発で2機を撃破したぞ。誰の戦車か分からんが、お前らも負けんじゃねぇぞ。次の目標、左翼先頭の駄犬だ。よく狙えよ」

「了解!」


 操縦手のジョージ・マクレガー少尉の返事にエドワードは頷くと、次の目標を指示する。砲弾は装填手のケイン・ミルズ伍長によって装填済みだ。砲手の紅林が照準を定めて、掛け声と共に引金を引いた。


「撃(て)ッ!」

「右旋回!」


 発射した砲弾はドアマースの胸部装甲を撃ち抜き、ただの鉄屑に変える。仕留めた獲物に拘り続ける必要はない。すぐさま次の獲物を見つけ、右旋回を命じた。

 今度の敵は140ミリ魔導砲を搭載した8輪装甲戦車スヴァジル。敵の車長はトリシューラが強敵と認識したのか、短砲身砲を向け、魔導砲を発射しながら突進してくる。


「次の目標は前方のスヴァジルだ。ヤツは装甲が薄い。弾種、徹甲弾!」

「了解…。装填完了!」

「目標距離300m。発射!」


 鈍い音と共にスヴァジルの正面に開いた穴から炎が噴き出し、爆圧に押されて砲塔が外れ、軽々と舞い上がる。その後、火柱が噴き上がり、スヴァジルの車体を乗員もろとも焼き尽くす。


「敵はまだまだ多い。絶対に深追いするな。縦深陣地に引き込んで確実に撃破するんだ」

「大隊長、敵歩兵が突撃してきます!」

「車載機銃で薙ぎ倒せ!!」


 エドワードは戦車のモニターを確認する。味方戦車は後退しつつ砲撃を加え、敵を確実に破壊している。だが、味方の危機を救おうと敵歩兵が対戦車兵器を手にして突撃してきた。その敵兵に対し、戦車の車載機銃だけでなく、王国側の歩兵も機関銃や自動小銃、迫撃砲、擲弾筒で迎撃する。血煙渦巻く戦場はどちらが優勢なのか分からず、未だ混沌としている。


 一方、指揮官機を含む十数機のドアマースや多数の装輪戦車が、王国軍戦車の砲撃によって、装甲をぶち抜かれ、爆発炎上する様をドアマース302中隊の中隊長エルネスト・ガンメル中尉は呆然と眺めていた。


(信じられん…。120mm魔導衝撃砲すら跳ね返す、ドアマースの魔力強化装甲(magic‑enhanced armor)が、こうも簡単に撃ち抜かれるとは…。スケリア、オスマニア、エウロペの各戦線でも魔導砲で撃破された記録はほとんどない。それがどうだ。敵は魔法でも使っているというのか。トリアイナの悪魔どもめ…)


 ガンメルは、麾下の302中隊全機に命じた。


「302中隊全機に次ぐ。中隊左翼展開しつつ全速前進。左側面から敵戦車部隊を襲う。急げ!」


 ドアマース本体から分離した302中隊だったが、その動きは読まれていた。彼らがエドワードの中隊側面に移動を完了した時、数百m先の灌木が白煙に包まれた。ドアマースのパイロットが白煙の意味するものを悟る前に、激しい熱に焼かれ、機体もろとも爆散した。


「アルファ1から全車、中隊規模の敵は撃破した。敵は混乱している。一気に押し返すぞ、駄犬と取り巻きの戦車共を叩きのめせ! 前進!!」


 西田少佐の号令一下、24両の戦車はディーゼルエンジンを轟然と鳴り響かせ、灌木から一斉に飛び出し、隊列を乱したドアマース部隊を半包囲すると120mm砲、105mm砲を発射した。トリアイナの戦車砲と帝国の魔導砲が交錯する。激しい砲撃戦は無限に続くと思われたが唐突に終了した。戦車砲を打ち尽くしたトリアイナ側の戦車隊が潮が引く様に後退して行ったのだ。


 砲撃戦が行われた戦場には10両程のトライデントA2の残骸と、数えきれない程のドアマースが骸を晒し、装輪戦車のスヴァジル、グルファクが絡み合い、燻っている。また、周囲には機関銃弾や魔導銃に撃ち抜かれた両軍の歩兵が死体となって斃れ、辛うじて息がある者は呻き声を上げて助けを求めるが、やがてその声も途絶えていく。


 破壊されたドアマースの下から辛うじて這い出たガンメル中尉は、顔中を流れる血を拭ぐおうともせず、呆然と帝国軍の墓場となった戦場を眺めていた。これ程の損害を出したにも関わらず、敵に与えた損害は僅かに過ぎない。ガンメルはその事実を受け入れられないでいた。


「あ…悪魔だ…。トリアイナは悪魔だ…。悪魔でなければ、俺達が誇るドアマースが、装輪戦車がこれほど完膚なきまでに叩きのめされる訳が無いはずだ…。こんなことが…あってたまるか。ぐふっ…!?」


 突然、胸に激痛が走り、熱いものが込み上げ、口から血を吐いた。ガンメルが下を見ると胸から剣が突き出ている。ゆっくりと振り向くと額から血を流し、ぼろぼろになった戦闘服を着た王国兵が銃剣を背中から突き入れていた。ガンメルは震える手で腰のホルスターから魔導拳銃を抜くと、王国兵に向けて引き金を引いた。王国兵は額を撃ち抜かれ、どさりと音を立てて地面に斃れた。


 ガンメルは光を失った目で王国兵を見つめる。そして、30年前に王国攻略の途上で戦死した祖父の顔を、祖国に残して来た妻と子供の顔を思い浮かべ、心の中で謝ると王国兵の上に重なるように倒れ、事切れた。

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