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大海の蜃気楼 ートリアイナ王国海戦記ー  作者: 出羽育造
第1章 灼熱の世界大戦
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第14話 ネアス環礁沖海戦①

「ビンゴ! レーダーに反応、当機の左15度、距離約285kmに敵艦隊です」


 9月26日の早朝、日が上る前にモエン基地を離陸した第11特別航空団の早期警戒機Eー1Aのレーダー員、藤原巧少尉がパチンと指を鳴らして、機長のクリス・ネヴィル大尉に報告した。


 彼らの乗るEー1Aは1年前から配備が始まった最新の機体で、王国でもまだ3機しか配備されていない。その貴重な1機をモエン島に派遣したのだ。E-1Aの最大の特徴は機体背面に大型の円盤型レドームを有している事で、強力なレーダーにより、対空、対水上における警戒・監視を行なうのが主任務である。乗員はパイロット2名のほか、3名のレーダー員が乗り込む。新型のターボプロップエンジン(3,450馬力)2基を持ち、巡航速度445km、最大速度594km、最大高度11,000m、航続距離2,850km、レーダー探知距離約200海里(370km)の性能を持つ。


「毛利、第11航空団司令部に打電。敵艦隊発見、モエン島からの方位137度、距離457海里(約662km)!」

「了解! 直ちに通信を送ります」

「リック、速度を落としてこの位置を保て。敵艦隊の動きを監視する。藤原、敵戦闘機は出ていないな?」

「レーダーに敵機の反応無し!」

「了解、旋回しつつ敵艦隊との距離を維持します。エンジン出力下げ、速力187ノット(約350km/h)」


 ネヴィル大尉は毛利小十郎兵曹に敵艦隊の位置を司令部に送るよう指示した。メインパイロットのリック・ディアス中尉は敵艦隊をレーダーから逃さないよう、速度を失速限界まで落とし、機を大きく旋回させた。


「機長、司令部から通信!」

「なんと言ってきた?」

「空母艦隊から攻撃隊が発艦した。編隊を誘導せよ…です」

「わかった。藤原、編隊がレーダーに映ったら無線誘導せよ」

「了解!」


 ネヴィル大尉は命令を下しながら、副操縦席から遠くを見つめ、間もなく水平線の向こうで繰り広げられる激しい戦いを予感して身震いするのであった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「艦長、魔導波標定機(magic wave locator:MWL)に反応! 敵飛行機械接近、距離250km、機数約150。後30分で艦隊上空に到達します!」

「来たか…。バルドー司令!」

「飛空機母艦からフィンヴァラー全機発艦させろ! 攻撃機を艦隊に近づけるな。トリアイナの猿共を叩き落とせ!」

「全艦に通達。防空戦闘準備!」


 バルドー中将と首席参謀リーツ大佐は人形戦闘兵器フィンヴァラーⅤの発艦と艦隊の防空戦闘を命令し、ミュラー艦長が対空砲の発射準備を命じる。魔導戦艦フェンリルの上空をフィンヴァラーⅤが編隊を組んで飛んで行った。


 フィンヴァラーⅤは帝国における対空戦闘用の主力人型飛行兵器で、全高14.7m、全備重量9.35トン。操縦員は胸部のコクピットに乗り込み、頭部の魔力眼から送られた映像を見て操縦するのは初代から変わらないが、背部に4枚の翼と高出力魔導推進機を2基装備し、最高速度677km/hと帝国の人型飛行機械の中で最速を誇る。武装として、20mm3連装回転式速射魔導砲(手持ち式)、6連装40mm魔導噴進弾×2(両肩部外装式)を持つ。


(行け。猿共をぶちのめして来い…)


 艦橋の窓から飛び去るフィンヴァラーⅤを眺めながら、バルドーは勝利を疑わなかった。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「敵編隊確認。進路前方、距離20km、機数およそ100。健闘を祈る」

「了解、感謝する」


 編隊誘導機の艦上偵察機景雲が双発エンジンを唸らせ、機体を大きく旋回させて離脱して行く。空母伊吹の戦闘機隊長で、第1次攻撃隊総指揮官のデビッド・アンダーソン中佐は誘導機に短く礼を言い、周囲の編隊に目を向けた。


 第1次攻撃隊は全て艦上戦闘機「烈風サム」で編成されており、各空母毎に36機ずつの梯団を組んで飛行している。

 烈風は王国海軍の主力艦上戦闘機で、2,320馬力の多段式排気過給タービンエンジンを搭載し、最高速度675km/h(高度6.000m)、 実用上昇限度11,800m、航続距離1,520kmの性能を持ち、機械制御の自動空戦フラップにより格闘性能も高い。また、武装として主翼に30mmと20mm機関砲を各2門を装備している。


 前方に敵編隊が迫ってくる。敵は20機から30機程の梯団5隊だ。アンダーソンは無線通信機のレシーバーを手に取った。


「敵だ。相手はフィンヴァラーⅤ。相手にとって不足はない。全機突撃せよ!」


 空母穂高の艦戦隊第3中隊長のマクシミリアン・リード大尉は、機体をバンクさせて中隊に突撃を合図すると共に、エンジンスロットルを開き、敵の梯団に向かって突撃した。バックミラーには麾下の小隊3機も追従してくるのが映っている。力強い爆音が響き、敵フィンヴァラーのスマートな姿が目の前に迫ってくる。


「お手並み拝見といくか…」


 リードが呟いたとき、先頭を飛ぶフィンヴァラーが手持ち式のライフル砲を向けてきた。魔導光が閃く寸前、リードは機体を左に振った。真っ赤な光の矢が奔流のように翼端を掠める。続けて別の敵が射撃してきたが、今度は右に旋回して躱した。その敵に向かって小隊2番機の阿部早馬少尉が20mmを放った。敵は急制動から上昇に移って火箭を避けると阿部機にライフル砲を撃った。阿部機は急速左横転降下の機動で魔導光弾の雨をギリギリで躱す。敵の2番機は再度阿部機を攻撃しようとライフル砲を向けた。


「馬鹿が、後ろがガラ空きだ!」


 敵が阿部機を追うことに意識が行っている間、右旋回で背後に回ったリードは烈風を突進させた。フィンヴァラーとの距離がみるみる縮まり、照準器一杯に姿が広がる。


「くたばれ!」


 小さく叫び、リードは30mm機関砲の発射把柄はっしゃはへいを握った。両翼から閃光が走り、2条の閃光がフィンヴァラーの翼の付け根に突き刺さった。その瞬間、フィンヴァラーは背中から押されたような姿勢になった。30mm機関砲弾の威力は物凄く、機体の一部と翼が吹き飛び、装甲で守られた魔導推進機をも貫いて爆発させた。フィンヴァラーは炎を吹き上げながらまっしぐらに海面に向かって墜落していく。笑みを浮かべて頷いたリードは僚機の姿を探すと、2番機はリードの背後に付き、3番機と4番機は連携して敵の1番機を撃墜したところだった。


 目を転じると、空域のそこかしこで激しい戦闘が繰り広げられている。素早い機動で烈風に背後や側面に回り込まれたフィンヴァラーが機関砲弾を撃ち込まれて爆発しながら墜落し、連携した攻撃に翻弄されているうちに機関砲弾で正面装甲をパイロットごと撃ち抜かれて海面に叩きつけられる。一方、不用意にフィンヴァラーの前に出た烈風が魔導光弾をコクピットから翼の付け根まで浴びて、風防ガラスやジュラルミンの破片を飛び散らせながら真っ逆さまに墜落し、魔導噴進弾の直撃を受けた烈風は爆散して機体の破片を海上に撒き散らす。戦闘空域は混戦の様相を示してきた。


 リードは乱戦の中、阿部と協同でさらに2機のフィンヴァラーを撃墜していた。リードは不意に殺気を感じた。咄嗟に操縦桿を倒し、機体を横転させた。コクピットを掠めて魔導光弾が滝のように流れていく。垂直降下に移ったリード機と阿部機にフィンヴァラーが追いすがるが、急降下性能に勝る烈風との距離は開いていく。


「よし、振り切った…なにっ!」

「大尉、敵が!?」


 操縦桿を引いて上昇に移った2機の前に数機のフィンヴァラーが網を張るように空中静止してライフル砲を向けていた。


「くそっ、罠だ!」


 上下左右、どちらに舵を切っても避けられない。このままでは撃墜される。次の瞬間、2機のフィンヴァラーが背後から機関砲に撃ち抜かれ、爆発してバラバラに砕け散った。驚くリードの上空を2機の烈風が高速で飛び去った。ちらっと見えた機体番号で、自分の小隊の3番機と4番機だという事が分かった。残ったフィンヴァラーは慌てたように機体を翻して離脱を始めた。危機を脱したリードはレシーバーを手にして僚機に呼びかけた。


「ジョージ、アイク、助かったぜ。戻ったら一杯奢ってやる。さあ、敵はまだまだ多いぞ。続け!」


 4機の烈風はエンジン・スロットルを全開にして敵編隊の中に突っ込んで行った。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「くそっ、手強い。これがトリアイナの飛行兵器なのか」


 フィンヴァラー隊を統括する指揮官、エルンスト・フォス中佐は戦闘空域よりさらに上空に遷移して戦闘の様子を俯瞰していた。スケリア戦線ではヴィマーナを寄せ付けなかったフィンヴァラーが敵に翻弄され、苦戦している。


 速度性能は両者に差は無い。瞬発力や上下方向の運動力はフィンヴァラーの方が勝っているが、加速力と旋回性能、全体的な機動力は相手が上回っている。また、フィンヴァラーは人型故にどんな場面でも即座に対応できる万能機であるが、主兵装である手持ち式の回転式ライフル砲は、敵を照準してから発射する際の操作に微妙なタイムロスが生じてしまう。ほんの数秒であるが、敵はその隙を見逃さず、高度な機動で射線から逃げてしまったり、反撃に出て逆にやられてしまうケースが出ている。


 特に腕が未熟な操縦者にその傾向が見られ、敵を攻撃するのに夢中になるあまり、周囲の警戒が疎かになって、その隙を突かれて撃墜される機が多かった。また1機、魔導推進機を機関砲に撃ち抜かれ、爆散するのを見てフォス中佐は毒づいた。


「敵機も撃墜しているが、撃ち落とされる機体はこちらの方が多い。各戦線で敵を寄せ付けなかったフィンヴァラーがこうも苦戦するとは…」


 歯噛みするフォス中佐のフィンヴァラーに別の機体が近づき、通信を送ってきた。


「隊長!」

「ミネア少尉か」


 声の主はフォスの副官を務めるミネア・ローゼン少尉だった。


「隊長、敵の編成が少し変です。攻撃機がいません。戦闘機ばかりです」

「なにっ!?」

「事前情報では、トリアイナの飛行機械母艦には戦闘機と攻撃機が搭載されているはず。でも、この空域には戦闘機しか見えません」


 周辺空域を見回すが、確かにトリアイナの攻撃機の姿はない。小癪な戦闘機だけが飛び回っている。


「何故戦闘機だけを…。やつら、何を考えている?」

「隊長、敵です!」


 ミネアの叫びにフォスがフィンヴァラーの視線を下方に向けると、2機の戦闘機が急上昇して来るのがモニターに映った。


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 第1次攻撃隊総指揮官のアンダーソン中佐は、戦闘空域から離れた上空で戦闘の様子を俯瞰していた2機のフィンヴァラーを発見した。


「あの2機は…。位置取りから見て指揮官機に違いない。島津准尉、俺は先頭のヤツを殺る。お前は後続の機を墜とせ。できるな?」

「任せてください!」

「よし、行くぞ。付いてこい!」


 アンダーソンは無線通信機のレシーバーを叩きつけるように置くと、スロットルを全開にして操縦桿を手前に引いた。多段式排気過給タービンが高速回転音する甲高い音と共に機体がグイグイと加速、上昇していく。敵もこちらの接近に気づいたのか散開して、魔導ライフル砲を乱射してきた。アンダーソンは右に、島津は左に舵を切りながら機体を捻って弾幕を躱す。


「接近を阻もうって腹か。狙いも何もあったもんじゃない。だが、甘い!」


 弾幕を抜けたアンダーソンの烈風は、フィンヴァラーの頭上を跳び越すと、そのまま垂直上昇しながら、今度は推力を徐々に落とした。烈風は機首を上に向けたまま減速・空中静止し、真横に失速反転して垂直降下に移った。フィンヴァラーはボディ前面を上空に向けた。位置をそのままに、機体の向きを変える見事な機動にアンダーソンは目を見張っていると、フィンヴァラーはライフル砲を乱射しながら魔導噴進ロケット弾を全弾発射してきた。


 多数の光弾と噴進弾が豪雨のように襲い来る。アンダーソン素早く操縦桿を動かし、左右に翼を振るとともに、機体を回転スピンさせて敵弾を躱ながら一気に距離を詰め、両翼に装備された30mmと20mm機関砲を同時に発射した。


 真下に放たれた太い火箭と、それより心持ち細い火箭がフィンヴァラーの胸部と胴体に命中して火花と共に金属片をまき散らす。

 フィンヴァラーは多数の弾痕を穿たれ、胴体を分断されて高度を落とすと、空中で爆発した。


「た、隊長! フォス中佐!!」


 ミネア少尉が絶叫する中、フォスのフィンヴァラーは粉々に砕け散り、破片を海面にばら撒いた。フォス機を撃墜した烈風は海面近くで水平飛行に移ると再び機首を上げて上昇に移った。目の前で総指揮官機を墜とされた屈辱に、ギリっと歯噛みしたミネア少尉は仇を取ろうと上昇してくる烈風に向かって降下態勢に入ろうとした。その眼前を2条の火箭が飛び抜けて行った。


「どこに行くってんだ。お前の相手は俺だ!」

「くっ…このっ!」


 ミネアの操縦するフィンヴァラーの前を1機の烈風が横切った。翼と胴体にトリアイナ王国の、尾翼に丸に十字の紋章が描かれている。


「王国海軍飛行准尉、島津敏久参上!王国に仇なす害虫共、我が正義の鉄拳受けてみよ!」


 相手に聞こえないにも関わらず、大袈裟に名乗りを上げたのは、島津敏久准尉。彩雲操縦員だった島津豊久を父に、帝国皇女でフィンヴァラーのパイロットだったフレイヤを母に持つ、生まれもっての飛行機乗りだ。義に厚く、怯懦を嫌う熱き心を持つ漢で、空母伊吹飛行隊きっての有名人である。当然操縦技量も一級品。愛機に戦国武将島津家の家紋を描いてはいるが、苗字が同じというだけの理由だけで、島津家とは縁もゆかりもない。


 島津はフィンヴァラーの左後方に回り込むとスロットルを開いて加速・突進した。照準器のディスプレイに映る敵の姿が大きくなる。島津は20mmの発射把柄を握った。両翼から発射炎が閃く。しかし、フィンヴァラーは4枚の翼を大きく開いて急上昇し、火箭は空を切った。


「やるな!」


 毒づいて上方を向くと、背面転回した敵がライフル砲を構えるのが見えた。島津は操縦桿を強引に左に倒して機体を横転させた。その瞬間、ライフル砲から発射された多数の光弾が機体を掠め、下方に流れ去る。

 島津は操縦桿を前方に押して機体を降下させた。フィンヴァラーがライフル砲を撃ちながら追い縋って来る。急降下性能は烈風の方が上だ。人型はその形状故に急降下は不得手であり、距離が少しずつ開いていく。頃合い良しと見た島津は操縦桿を手前に目いっぱい引き、スロットルを開いた。


 強烈な遠心力が島津を座席に押し付け、烈風が機首を上げて上昇を開始した。フィンヴァラーも翼の偏向ノズルを動かして烈風に追従してくる。垂直面での旋回格闘戦だ。視界の中で空と海が入れ替わる。島津の烈風は再び急降下して円弧を描きながら上昇に移る。この機動にフィンヴァラーは付いてこられない。


 宙返りの頂点に達したところで、島津は操縦桿を緩め、左フットバーを踏み込んだ。烈風が左に回転し、水平飛行に転じる。さらに、左フットバーを踏み、操縦桿を目いっぱい手前に引いた。烈風が横転して独楽のように回転する。強烈な遠心力に耐え、機体を水平に戻すと目の前にフィンヴァラーの背中が現れた。


「もらったぁ!」


 島津は30mm機関砲の発射把柄を握った。両翼から発射炎が走りフィンヴァラーの左翼と左腕を吹き飛ばした。エネルギー源の精製魔鉱石が小爆発して機体を破壊し、機体の制御を失わせる。それでも、フィンヴァラーは機体を半回転させると残った右腕に装備されたライフル砲を撃って来た。


 敵機を破壊したことで油断した島津はこの攻撃は想定しておらず、呆気に取られて一瞬対処が遅れた。慌てて操縦桿を左に倒したが、躱すより早く魔力の光弾が烈風の右翼を撃ち砕いた。衝撃が機体を揺るがし、揚力を失って真っ逆さまに墜落する。海面がぐんぐん近づいてくる。


「チックショウッ! オレとしたことが…。相討ちとは情けねぇ。母さんにどやされるぞ、こりゃ」


 島津は酸素マスクを引き千切るように外すと、座席の脱出レバーを力いっぱい引いた。風防が跳ねあがって風圧で吹き飛び、座席下のロケットモーターが作動して座席ごと機外に押し出され、パラシュートが自動的に開いた。周囲をアンダーソンの烈風が旋回する。パラシュートで漂いながら、島津は無事であることをサインで送った。アンダーソンは翼を振って飛び去った。


「墜落地点を中佐が報告してくれるだろ。救難機が来るまで海水浴か。美人な女の子と一緒なら嬉しいんだが…。さて、あいつはどうなったかな」


 下方を探すと水没するフィンヴァラーを発見した。そのすぐ近くに脱出ポッドらしきものが浮かんでいる。やがて、着水した島津は座席ベルトとパラシュートロープを外し、座席下のレバーを押した。座席の下からゴムボートが飛び出し、自動的にボンベから炭酸ガスが送られて膨らんだ。島津は泳いでボートにつかまると、サバイバルキットを載せ、自分も乗り上がった。一息ついて敵の脱出ポッドを見るが、出入り口が開いている様子が無い。訝しがるも確認しようと、備え付けの小型パドルでボートを漕いで近づいた。


「出入り口は何処だ。搭乗員が脱出した形跡はないようだが…。もしかして、動けなくなっているのか?」


 ドンドンと外板を叩き、声をかけて外板に耳を当てると、中から微かに声が聞こえた。


「おい、中に誰かいるのか?」

「助けて。ドアが故障して中から開けられないの。このままでは沈んでしまう」

「お、女!?(オレって、女に落とされたの!? まさか、母さん並みに性格キツイ!?)」


 それでも島津敏久25歳。熱き心を持つ漢は目の前で危機に陥った人間を前に逡巡はしない。それが敵であっても、モヒカンヘッドでデビルメイクをした世紀末に生きる様な女であってもだ。

 ポッドの周囲をよく見ると、空を向いた方向に扉の取っ手があった。ボートが流されないよう、サバイバルバッグの中にあったロープで自分のベルトと結んでから、ポッドによじ登り、取っ手をガチャガチャと動かしたが、扉は開く気配がない。


「ロックされているのか? ロック解除機構があるはずだが」

「扉の近くに、赤い三角印があるはず。そこの蓋を開けて緊急解除レバーを押して」

「あ…ああ。分かった。これか?」


 島津は解除レバーを力いっぱい押すと、ガクンと音がしてポッドの一部が跳ね上がった。


「おい、大丈夫か…って、おわっ!」


 開いた扉から中を覗くと、若い女性兵士が拳銃(魔導銃)を構えていた。声をかけて救助しようとした島津は一瞬呆気にとられたが、指がピクリと動くのを見て、反射的に体が動き、女性兵士に飛び掛かった。その瞬間、頬を魔導光弾が掠め、皮膚を裂いて血が飛び散る。島津は女性兵士の背後を取ると、両腕を前に回して強引に胸を揉みしだいた!


ったぁ!」

「きゃあああああっ! いやぁぁっ!!」


 狭いポッドの中に女性兵士の絶叫が響き渡り、銃を手放した。島津は銃を蹴り飛ばし、安全を確保すると、女兵士の大きな胸の感触を楽しみながら制圧することに成功した。

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― 新着の感想 ―
ミネア、いくら敵だからって、助けてくれた相手をいきなり殺そうとするのはどうかと。 逆襲されてこっぴどい目に遭わされても、当然としか思えません。 そもそも、そんなことをしたら、殺されても文句は言えない。
 ヴァナヘイム軍には、「まず戦闘機のみを送って制空権を確保する」という発想が無かったのでしょうか? 追伸  ヴァナヘイム艦隊のバルドー中将が勝利を疑わなかったのは、フィンヴァラーⅤがそれまで常勝無敵だ…
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