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9-1 遺跡を止めに

馬車は三台出すことになった。

神様を乗せる馬車を、

護衛や魔術師を乗せる馬車で挟み込み、

守るつもりらしい。


「待たせた」

馬車の準備が終わってすぐに出発できるころ、

ヴィタリーはようやく馬車に乗り込んできた。

先程まで着ていた神官の青い服とは違い、

外で仕事をするときの動きやすい格好。


それならばいつもどおりとも思ったが、

腰から下がる物がいつもとは違う。

「剣なんか持ってたメェ?」

「一応な。

 まさか持ち歩くことになるとは思わなかったし、

 今回使わないで終わることを願ってる」

「そうデスね」


街中を馬車で進むと

まだまだ散らかっている様子が分かった。

崩れた屋台、

散らばる割れた皿やコップに食べ物飲み物。

シームリャの指示で

車道を優先して開けるようにしてあったのか、

代わりに歩道が歩き辛い事になっている。


「お祭り再開できるデショウか?」

「する。そのためにまずは危険を取り除くんだメェ」

散らかった街を出ると

いつもより多くの警備が入り口を固めていた。

さらに見張りのためか魔術師が目を凝らして周囲を見ている。

いつもにぎやかで、

街に入る審査も簡単だったりする

ゆるい雰囲気が全く感じられない。


ジョンはそんな様子に寂しさを覚えている間に、

馬車は舗装された平原の道を走り出した。

平原も警備隊の騎馬部隊が走り回っている。

今のところは何事もなさそうだが、

時折神様が身を震わせるのでもしかしたら、

獣の群れがまだいるのかもしれない。

神様がビクビクするたびに

ヴィタリーが腰の剣に手をかける。


「だ、大丈夫だメェ。

 異常があればすぐに護衛が動いてくれる……。

 遠吠えが聞こえても、

 護衛が動いてないってことは近くにいないメェ」

ジョンに言っているのか、

警戒するヴィタリーに言っているのか、

それとも自分に言い聞かせているのか、

神様はそんなことを言った。


いつもならば世間話や、

神様とヴィタリーの夫婦漫才のような掛け合いに

笑っていた馬車での移動も、

今は重い空気に支配されていた。


だが遺跡が近づいてくるにつれて、

だんだんと神様が不安の汗をかかなくなっていった。

表情も緩やかになってきて、

ずっとうつむいていた顔も、

馬車の進行方向を見るようになっていく。

群れが離れているのだろう。


馬車が足を止めた。

「神様、到着しました。

 今は念の為周囲の確認中です」

警備隊のひとりが報告に来た。


「多分大丈夫だと思うメェ。

 すぐに機械を止めに行く」

「おい、焦るな。

 万が一のことがあるだろ」

「馬車の外は安全確認しましたので、

 降りても大丈夫です」

護衛がそう言うので神様たちは馬車を降りる。


「なんだか、雰囲気……

 じゃなくて魔力の流れが前来たときと違うメェ」

「はい、魔術師たちも

 操作したような流れがあると言っていました」

「機械を動かしたからでしょうか?」

「メェ。こういうのは自然にも良くない。

 古代文明はこんなのを作ってたから、

 自然に仕返しされたのかもしれないメェ」

明日は我が身、そんな表情で神様は歩き始めた。


#


先日もやってきた四角い小さな建物。

中にはすでに護衛が入っており、

その明かりで照らされていた。


「中の安全を確認」

報告を聞いて遺跡に足を踏み入れる。

「うむ、行くメェ」

ここまで順調だからか、

神様もだいぶ安心したような声で階段を降り始めた。


「っていうかメグ――神様は

 ついてこなくていいだろ?」

ヴィタリーはすぐに先導するように神様の前へ。

警備がいても大切な神様を前にするのは嫌なのだろう。

「実際に機械が止まったのを見ないと

 納得できないんだメェ!」

「だが怖くないのか?」

「……怖いけど、

 メーが起こした事件だから、自分で解決するメェ」


「こんなことで責任感じるな」

「こんなことじゃないメェ!

 興味本位とかお金稼ぎのためにメーがしたことで、

 街に人的被害が出そうになったんだメェ!

 お金は大事だけど命のほうが大切だメェ!」

「っても、こんなこと予想できるわけないだろ。

 予想できないことに責任感じるなって言ってるんだ」

いつもの茶番のような言い合いではなく、

神様は興奮した高い声、

ヴィタリーは苛立ちを隠しきれていないような低い声で言い合った。


ジョンにとっては聞き心地は悪いが、

神様もヴィタリーも本気なのが分かるので

横槍を入れたりすることはできない。

どちらも正しい。

ふたりが最善の方向に進むか、

ことが収まってくれるのを見守るしかできなかった。

「それに護衛や魔術師がついてきてるとはいえ、

 神様が襲われることのほうが俺は怖い」

ヴィタリーは目をそらしながら急に弱い声を出した。


「だったら、さっさと終わらせるメェ」

そう言うと神様はヴィタリーを追い抜いた。

駆け足で残りの階段を降りて

遺跡の廊下をサクサクと歩き始める。

「だから、俺より先に行くなって」

(よっぽどヴィタリーサンは神サマのことが心配なんデスね)

ジョンもそう思いながらふたりの後を追う。


駆け足で機械と魔法陣のある部屋につくと

そこにも護衛と魔術師が先にいてくれた。

魔術師は魔法陣を、

怖い魔物を見ているような目で見ており、

周囲よりもこちらに警戒をしている。

「ここですね。

 様子や出ている文字は変わっていません」

ジョンは真っ先に操作した機械の前に立ち、

様子を確認。

見えている文字や記号に違いがないことを伝えた。


「ここを逆にひねったら止まるか?」

神様はそう言いながらつまみを反時計回りにひねった。

「はい、停止に文字が変わりマシタ。

 これで機械は止まりマシタよ」

「うむ、魔法陣も動いてないな」

神様がガラス越しにそれを確認。

同行していた魔術師も魔力の動きを感じたのか、

大きなため息をついた。


「なんとか無事に済んだな」

続けてヴィタリーが肩の荷を下ろしたようなため息。

機械を操作したらなにか起こるのではないかと思っていたようだ。

「怖かったのであっさりと終わって

 拍子抜けしてしまいマシタ。

 デモ、何事もなくてよかったデス」

ジョンも周囲の言葉を聞いてホッと胸をなでおろした。


「メーが街に戻るまでが騒動の解決編だメェ」

「じゃあさっさと帰るぞ」

「撤収準備!」

神様たちの会話を聞いて護衛の警備隊がまた慌ただしく動き始めた。

良ければ評価、

続きが気になりましたらブクマ、

誤字脱字が気になりましたら誤字脱字報告、

とても良いと思いましたら一言でも感想をいただけると

嬉しいです。


雨竜三斗ツイッター:https://twitter.com/ryu3to


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