↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
24/29

8-3 一晩明けての決意

気がつくと寝ていたようだ。

いつの間にかメグミと抱き合ってベッドで寝ていたヴィタリーは、

部屋をノックする音で目を覚ます。

「ちょっと待ってろ」

声を上げてノックの主に答えた。

それからベッドから出てもメグミが怖がったりしないか念のため確認。

すやすやと寝息をたてているのを見てから、鍵を開けた。


「ジョンか。分かってはいたが無事でよかった」

「はい。あの、神サマは大丈夫デスか?」

「ああ、ぐっすり寝てる」

ヴィタリーは体を引いてジョンにもその様子を見せた。


「よかった……」

ジョンも大げさに顔を落としながら安堵の息を吐く。

そしてすぐに顔を上げて、

「シームリャサンから伝言です。

 街に入った獣を大方倒したそうデス。

 街の外へ逃げ出した獣はそのまま放置、

 今は警備隊が街の中に残っていないかの捜索しているとのことデス。

 結界は異常なし、外に逃げた獣は近寄ってこないって言ってマシタ」

「そうか……。手間を掛けたな」


「いえ、ヴィタリーサンは、

 神サマのそばにいてほしいってシームリャサンも言ってたので」

「まったく、

 あのひとは本当に俺たちのことを分かってる……」

ヴィタリーはため息とともにぼやいた。

嬉しそうな、恥ずかしそうな、

困ったようないろいろな感情が混じった声だ。


「神様が起きたら顔を出す、

 それまではよろしくおねがいしますって伝えてほしい」

それから声と顔を直し、

神官として頼み事をした。

「分かりマシタ。

 シームリャサンは面会の部屋で仕事をしているそうなので、

 そこでお待ちしていマス」

「すまないな、

 ご利益をあげようとしたのに怖い目に会わせてしまって」

「いいえ、神サマのほうが怖がってたかもデス。

 シームリャサンも、儀式はやり直せるって言ってたので、

 ご利益のことは心配してません」

「そう言ってもらえるとありがたい」

「デハあとで」

ジョンが出ていくと、

ヴィタリーは再びメグミのそばに寄り添った。


#


「なんで早く起こしてくれないメェ」

神様が部屋を出ての第一声はヴィタリーに対する文句だった。

「儀式を途中で止められて、

 そのうえ怖い目にあって

 文字通り襲われそうな羊みたいに震えてたろ。

 そんな状況でいきなりこの後どうしましょうなんて話ができるか」

「メーは神だメェ。

 その神が治める街のことを考えないでどうするメェ!」

「いつも考えまくってたおかげで、

 神様が部屋で震えてた間も勝手にあれこれしてくれてたんだ。

 こういうときくらい自分のことを考えろっての」

「神はひとのためにいる!

 いつも言ってるメェ!」

「前に偉いひとがサボれば、

 部下がガンバってくれて、

 いい仕事をしてくれるようになるとか言ってただろう?

 もう忘れたのか?

 それが今起こったんだ。

 シームリャさんやアンドレたちがすごかったのが分かってよかっただろう?」

「言ったけどそういうことじゃないメェ!」


言い合いをしている間に謁見の間にやってくる。

「おはようございます。

 神様もお元気になったようでなによりです」

「よう! お前らの言い合い、ここまで聞こえてたぜ。

 つまりいつもどおり戻ったってことだな、ガハハ!」

「改めて、おはようございマス」

すでに話し合いを進めていた

シームリャとアンドレ、ジョンが笑顔で挨拶をしてくた。

神様もヴィタリーもその顔を見て、揃って頭を下げる。


「シームリャ、世話をかけたメェ」

「助かりました」

「いいえ、おふたりの手助けをするために

 わたくしはここにいるんですから、当然です。

 のちほど部屋の隅でガクガク震える神様の様子をお聞かせいただければ

 それで報酬は十分」

「そんなの絶対に教えないメェ!」

「あら残念……。

 ですがこれほどの冗談が言えるほど街は平和に戻っています。

 今は街の後片付け、祭りのやり直しの準備、

 狩った獣の調理が進んでいます。

 怪我人も少数、

 大きな怪我は骨折程度で亡くなった方はもちろんいません。

 先にジョンくんにご報告してもらったとおり、

 結界は異常なし。

 ですでの逆にどうして群れごと街に侵入されたのかそれが謎でした」

シームリャはそう言いながら

地図を持ち出して大きな机の上に広げた。

普段は街の工事計画を話し合ったり、

交通のことを話し合ったりする大きな机だが、

今は被害報告などが書き込まれている。

そして街を囲うように『異常なし』の文字が書かれれていた。


「狩猟団からの聞き取り調査の結果、

 この獣たちの群れは遺跡の中や周りを寝床にしていた群れのようです」

「調査のときにはいなかったメェ」

「そりゃあの機械?

 魔法陣? のおかげでいなくなってたんだろう?」

「ヴィタリーくんの言う通りです。

 そして遺跡の調査報告からして、

 皆様が遺跡を動かしたので群れはさらに遺跡を離れた。

 狩場も同時に失い、

 過去の事件から味を覚えた餌を嗅ぎつけて

 街を襲いに来たのではないかと推測できます。

 彼らにとってひとよりも羊の方がおいしかったのでしょうね。

 だから神様だけが狙われた……」

シームリャは淡々と説明した。

それでも説明に対しこの表現で良いのか迷っているように、

目線は泳いでいる。

神様はまったく気にせず声を上げる。


「だがそれじゃ結界を破られた理由にならないメェ」

「おそらく遺跡の魔術が街にまで干渉したか、

 効果を吸い取ったか、上書きしたか……。

 いずれにせよ遺跡を動かしたの原因でしょう」

「モンスター避けが機能しすぎたってことでいいです?」

ヴィタリーの要約にシームリャはうなずく。


「遺跡を住処にしていた群れはあれだけじゃないぜ。

 ヤツらは昼夜問わず活動するし、

 また襲いに来るんじゃないか?」

アンドレが嫌そうに予想を語ると、

「じゃあ遺跡を止めにいかないと!」

神様は焦った大声をあげた。


「街の外は獣がいるのに?」

「これ以上来られたら街に被害が出るメェ!

 それに獣はメーを狙う!

 だからメーが街から離れれば街に獣が寄らなくなるメェ!」

先程のヴィタリーにぶつけていた苛立った声とは違っていた。

自分に無理やり言い聞かせているような、

やや追い詰められたような声を上げる。

それから、

「怖いけど、メーが街を守らないと」

神様は手を強く握り、

祭りとはまた違う神様のような目をこちらに向けた。

ヴィタリーはあからさまに顔をしかめて反対の意を示す。

それでも神様は顔を変えない。


「こうなったら神様は聞きませんからね」

しばらくにらめっこをしていると

シームリャがため息といっしょに言った。続けて、

「アンドレさん、護衛を付けられますか?」

「警備隊の一班を護衛に出す。

 だが毛をむしられないように気をつけろよ」

アンドレがにっかりと笑いながら言った。

昨日一番戦ってたはずなのにとても元気そうだ。

「街の方はわたくしたちにお任せください。

 ですがお早いお帰りを願っています」

シームリャもにっこりと笑い、ていねいに礼をすした。


「ボクも、行きます。

 古代イポーニア語が読めるので、

 お役に立ててください」

ジョンは自分の胸に強く手を当て、

自ら声を上げた。

怖いが自分もお世話になった街に恩返しがしたい。

「ヴィタリー、メーについてきてほしい」

周囲も含めてここまで言われてしまいヴィタリーは頭を乱暴にかく。

「分かったよ……。

 馬車を用意してくれ、一番頑丈なヤツをな」

良ければ評価、

続きが気になりましたらブクマ、

誤字脱字が気になりましたら誤字脱字報告、

とても良いと思いましたら一言でも感想をいただけると

嬉しいです。


雨竜三斗ツイッター:https://twitter.com/ryu3to


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。