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8-1 神様と見て回るお祭り

「朝からにぎやかデスね」

街に出るとジョンは普段とは違う雰囲気を感じた。

街を歩くほとんどのひとは陽気な顔をしている。

子供もたくさん出歩いており、

大人もすでにお酒を口にしているように顔を赤くしているものも多い。

そんな様子が神殿の窓からも見えた。


「今日はお祭りだメェ!」

「前からお祭りのことは聞いてましたけど、

 どんなお祭りなんデスか?」

「お祭りは年に一度、

 街全体に神様のご利益を与える儀式と、

 それを祝った宴会だ。

 年に一度ご利益を与えるのは

 多分他の神様がいる街でも同じなはず」

「デスね。

 ボクのいた街は神殿への寄付が多いひとだけが

 ご利益をもらえマシタ」


「ケチな神様だメェ。

 神はひとのため、ひとは神のため、

 助け合って世の中は動いてるのに」

「だが神殿からご利益を買っていると考えれば、

 神様のいう経済活動と同じだろう?

 むしろ神様はタダで配ってると言われても

 おかしくないんじゃないか?」

「そんなことないメェ!

 メーが祭りをすることで、

 ひとが街に集まったり、

 お金を使ったりする。

 だから経済が回るんだメェ」

「だからって、

 街の住民でもなければ仕事をしにきているでもないやつらにも、

 ご利益を与えるのはどうかと思うが?」

「ひとが集まることに意味があるメェ!

 それにそうしないと、

 ジョンのようなヤツにご利益が与えられないメェ!」

「ボクもご利益をもらえるんデスか?

 すでにパラメータに補正を受けてるのに?」

「もちろんだメェ。

 だからちゃんと街の中にいるんだぞ!」

「はい!」

 ジョンは明るく返事をした。


「そして今日は祝日!

 昨日も言ったが、

 飲食店とか屋台を出すひとたち以外は

 みんな休みだメェ!

 ジョンも今日は仕事探しを休みにして

 街に繰り出すメェ!」

神様がさらに明るく宣言すると

ジョンの手を引いて神殿を出ようとする。

愛らしく小さく、

慈愛に満ちたてが神様の方から触れてくる。

そんな驚きの出来事に恐れ多いという気持ちと、

文字通りかわいらしい女の子と手をつないでいるという事実が

ジョンの心臓を音を立てて跳ねさせた。

「神様、分かってるとは思うが昼過ぎまでだぞ。

 それからは準備があるからな」

「分かってるメェ!」

「ホントかよ」

ヴィタリーは渋々神様のあとを追った。


#


「すごい、普段見ないひとやお店がたくさん出てマス」

こうして街に出てみると

より雰囲気の違いが分かった。

いつも以上に活気が満ちており、

いるだけでも楽しい気分になれそうな場所になっている。

「この日は馬車も通行禁止にして、

 お店を出させるメェ」

神様の言う通り、

普段馬車が行き来する大きな道は

露店や屋台が並んでいる。

名前の聞いたことのないお菓子や、

聞いたことない街の名前を名乗りながら客引きをしていた。

食事時ではないが匂いにつられそうになるし、

つられてしまった子どもたちも多い。


「だが出る店も

 くじ引きで決めることになるほど来るんだよなぁ」

「ただのくじ引きじゃないメェ。

 詐欺まがいの商品を出してる店とか、

 お祭り価格を超えた値段設定をした店は一度は注意、

 二回目同じことをしたら出店できないようになるメェ。

 だからこうしてメーたちが見て回って、

 悪いことをしてる店はないか確認するメェ」

「なるほど。

 ただ遊びに来てるだけじゃないんデスね」

神様は相変わらずない胸を張って偉そうに言い、

ジョンが納得したようにうなずいた。


「いや、どう考えても遊びに来てるだろ。

 店の様子を見て回るだけなら神殿の職員でいいんだから」

それに対してヴィタリーは目を細めて言った。

「ヴィタリーは祭りを楽しみたくないのかメェ?」

「神様が変なことしないなら楽しむ時間を貰えるかもな」

「メーはいつも真面目に街のことを考えてるメェ!」

「なんでも自分でやりすぎなんだよ」

「自分の目で確認しないでどうするメェ!

 職員たちやヴィタリーの目や考えも信頼できるが、

 メー自身の目で見ないと分からないことも多いメェ」

「まあまあ。

 お祭りなんですから、

 仕事の話は置いておきマショウ。

 神様も時間に限りがあるようデスから……」

ジョンは『また始まった』

『どんな日でもふたりはいつもどおり』だと思いながら、

手招きするような仕草とともにふたりをなだめた。

「そういうことだメェ。ジョンはよく分かってるメェ」

「俺は神様の儀式がちゃんと成功するか心配なだけだ」

ヴィタリーは顔をそむけた。

不機嫌、というよりは本当に心配しているような表情だ。


「ヴィタリー、メーを信じて。

 今年もちゃんとやるから」

神様は聞いたこともない優しい声と、

見たこともないような優しい表情でヴィタリーに声をかけた。

いつも優しいがそれ以上の優しさを感じる。

それ以上に神様が

ヴィタリーにこのように接しているのを初めて見るので驚き、

ジョンは思わず顔を固めてしまう。

ヴィタリーもその様子を珍しいと思ったのか、

気まずそうに目を落として、

「……分かったよ」

と納得した。

すると神様はにっこりと子どものような笑みを浮かべる。


「それじゃこの通りからしらみ潰し見て回るメェ。

 ジョンもほしいものがあったら、

 銀貨一枚分までならメーが買ってあげるメェ」

「子供の小遣いかよ……。

 俺も出すからなんでも遠慮なく言えよ」

「いえ、結構デス。

 それにほしいのはお祭りの屋台でおいてあるようなものデハないので……」

「なんだ? 言ってほしいメェ」

「本だろう?」

「はい!

 でもいくら庶民でも買える値段設定とはいえ、

 銀貨一枚では足りないデスから」

ヴィタリーの答えにジョンは

大きな声と早口で返事をした。

ヴィタリーは首を引きつつも、

少し口元を緩ませて小さくうなずく。

神様はそんなジョンを腕を組んで見ていた。

「そっかー。ヴィタリーと違って大人だメェ」

「子供なのは神様だろ」

それからまた神様とヴィタリーの言い合いが始まった。

良ければ評価、

続きが気になりましたらブクマ、

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とても良いと思いましたら一言でも感想をいただけると

嬉しいです。


雨竜三斗ツイッター:https://twitter.com/ryu3to


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