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7-2 やっぱり怖がりな神様

「結局遅くなってしまったメェ……」

神様は馬車の中で肩を落としていた。

「神様が

『こんな板切ればっかりじゃなくて

本の一冊くらいあるはずだメェ』

 って言って聞かないからだろ」

「似てないモノマネやめるメェ!」

そんなやり取りを聞いて、

ジョンは笑いをこらえたが

手綱を握る護衛の男は吹き出していた。


「だから今日調べる必要はない

 って言ったんだが」

「だって、いい観光地になるかもしれない要素を

 後回しにしたくなかったんだメェ。

 それにちょうどよくジョンが来てくれたから

 今日の調査だってうまくいった。

 もしジョンが仕事を見つけてたら、

 ジョンはこの調査に同行しなかった。

 だから今が一番いい機会だったんだメェ」

「巻き込まれたジョンがかわいそうだわ」

「でも僕のおかげで仕掛けを見つけられた。

 なら、お役にたててうれしいデス」


「ほら見ろ!

 ジョンはいい子だメェ。

 ヴィタリーもひねくれてないで

 もっとジョンの素直さを見習うメェ」

「はいはい」

「それにしても、今日は馬車が多いですね」

神様たちの馬車の前にも、

たくさんの箱を載せた馬車が走っていた。

中身は果物なのが分かるが

どこから来たのかまでは分からない。


「祭りのために来るひとや物が多い。

 それに明日には車道が封鎖される。

 だから今のうちに馬車が必要な荷物は行き来させてるんだ」

「今日に限っては遅くまで仕事を許してるメェ。

 だけど祭りの当日は

 飲食とか警備とかみたいな必要な仕事を除き、

 仕事をすることは禁止だメェ!

 みんな祭りに参加して飲み食いして、

 ご利益を受け取るメェ」

神様は機嫌を直したように楽しそうな声で語った。


「なるほど。

 デスがお祭りの印象も違いマス。

 神サマに感謝を捧げるために賛美歌を歌ったり、

 何時間も不動で祈りを捧げたり、

 神サマが儀式を行ったり

 ……そういうのではないんデスね」

「儀式はするメェ。

 でもそんなつまらなそうな祭りはしないメェよ」

ジョンの疑問に神様が答えるとそこで馬車が止まった。

「ほらやっぱりこんな日に外に出るもんじゃないだろう」

あともう少しで街に帰れるということろで、

文字通りの足止めされた。

それを愚痴るとヴィタリーは肩をすくめる。


ジョンがどうして止まっているのか

遠くを見ると、

入り口で荷物の確認や

街に入るための検査などを行っているようだ。

その人数や物の数が多く、

時間がかかってる。

「神サマの馬車だから

 優先なんてことはないんデスね」

「当然。みんな働いてるんだし、

 メーだけ順番を守らないのは許されないメェ」

神様が誇らしげに言うと、

遠くから獣の遠吠えが聞こえた。

「ひっ!?」

すると神様は馬車の隅っこに寄って

ガクガク振るえだす。


声が聞こえたからか、

馬車の横を警備隊の男たちが

慌ただしく走っていくのが見える。

「大丈夫だって、

 遠いし、警備の連中も動いてる」

「だけどアイツら足が早くって、

 あんな距離あっという間だメェ」

「寄ってこれないから遠吠え出してるんだろう。

 それに俺のほうが足が速い」

「違うメェ。

 あれは仲間と連絡をとってるんだ。

 なんて言ってるのかは分からないけど」

「分からないのに話をしてるのが分かるのか」

馬車が少し前に進むがすぐに止まった。

ジョンはもう一度馬車の外を見てみるが、

まだまだ時間は掛かりそうだ。

進行方向の逆を見ると、

まだまだ列ができているのも分かる。


「ヴィタリ~、入り口のヤツに、

 メーの馬車を優先的に入れてくれって頼んでくれ~」

「今さっき横入りとかはしないって言ったばかりだろ」

「だって~」

「だったら先に歩いて入るか?

 馬車の入り口だけが混んでるんだから、

 歩きならすぐだぞ」

「馬車の外出たら襲われるメェ」

「襲われないっての……。

 もし襲われても、

 警備のヤツラが最優先で守ってくれるし、

 警備がやられたら馬車に乗ってても関係ないし」

「めぇ~」

「最悪俺が神様を担いで走ってやる。

 一度は逃げ切ってるんだ」

「メーを担いだたら足が遅くなるメェ。

 それにジョンはどうするメェ」

「神サマの身が優先デス」

「だそうだ。

 それにジョンだって体力つけてるんだし、

 簡単には死なないだろ」

「メェ」

弱々しい鳴き声を口にした。

まだまだ迷ってるようで目も泳いでいる。


「どうする神様。

 馬車に乗ってガクガク震えて待つか、

 振るえながらも入り口まで走るか、

 どっちが安全か考えてみたらどうだ?」

「歩く……。街に入ったら結界で安全」

「よし、そうしよう」

神様の決定を聞くなりヴィタリーは立ち上がり、

「聞いてのとおりです。

 怖がりな神様は先に帰るからあとよろしくおねがいします」

「はいよ」

ヴィタリーが手綱を握る護衛の男性に声をかけた。

それから馬車を飛び降り、

神様に手を差し出す。

左右を見渡し、

どこからも獣が走ってこないことを

耳を澄ませたりして確認した。

それからようやく神様は馬車から降りる。


「ジョンはどうする?」

「僕もついていきます」

ジョンも馬車を降りて街まで歩き始めた。

神様はずっとヴィタリーの手を握ったままだ。

先を歩くふたりを見ていると、

薄暗いというのもあって神様とその神官には見えない。

まるで仲のいい兄妹が家に帰るその後姿だ。


(なるほど、

 ふたりはやっぱり恋人ではなく家族なんデスね)

そう思ったジョンは自然と口元が緩むのを感じた。

馬車の入り口は混んでいたが、

ヴィタリーの言う通り徒歩で入る分には時間はかからなかった。

見慣れた街に入るなり神様は胸を張って言う。

「と、遠吠えが聞こえなくなった。

 やっぱりメーの街は安全だメェ」

「はいはい。そうだな」

それでも神様はヴィタリーの手を離そうとしなかった。

良ければ評価、

続きが気になりましたらブクマ、

誤字脱字が気になりましたら誤字脱字報告、

とても良いと思いましたら一言でも感想をいただけると

嬉しいです。


雨竜三斗ツイッター:https://twitter.com/ryu3to


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