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攻略不能ゲーム攻略作戦 〜濃厚ホモエンドを回避せよ!〜  作者: めの。
高校生編

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mission79 水族館を満喫せよ!

 前回のあらすじ。

 なんか宮藤と怪しいおっさん達とプラネタリウムに行って寝た。


「プラネタリウム行ってとりあえず寝た記憶はあるんだが……」

『あれは気持ち良い空間だったぷんね。我も2秒で寝てしまったぷん』

「サポートキャラが寝るなよ」


 と、プラネタリウムはともかく本日は土曜日。晴天である。

 桐生と特別なイルカショーとやらを見に水族館へやってきたわけだが。


「おお!」

「わぁ!」


 ほぼ桐生と同時に声を上げた。久しぶりにイルカショーを見た気がするが……なかなかやりおる。

 定番のフラフープのようなわっかをくぐる以外に、豊富なジャンプのバリュエーション、イルカが成功するたびに後ろで炎が上がり、時に音楽や光とともにイルカが踊るように動いてく景色……これなら、イルカショーだけで別料金が取れそうなほどの出来映えだ。


「いや、すごいな!」

「本当! 見てみて、ほーちゃん! 小さいイルカも出てきたよ」

「小さいのにすごい!」

『語彙力がないぷん』

『やかましい!』


 カッスはイルカのプールに放り込んだ。


「あれ、不思議な水音が」

「ショーの演出かな。気にするな、桐生」


 と、話をしていたら。


「きゃあっ!」


 思い切り水がかかった。ここ七列目だぞ。


「わぁ、イルカさん……すごい跳ね」

「これもう何度か来るぞ桐生……ほら!」


 腕で桐生を守ったところで水飛沫はどうしようもない。スマホが濡れたら……と思ったが、そもそもこの時代にスマホはない。まあ、あんまり精密機器持ち歩いている人もいないからアナウンスがされなかったのか……それにしても事前に一言あれば良かったのに。


『書いてあるぷん』

『本当だ』


 アナウンスはなかったが看板に書いてはあった。責任逃れのような気がして、なんだかやるせない気分になる。


「あはっ。でも、気持ち良いねっ!」


 こちらを向く桐生は、朗らかな笑顔を見せる。まあ、桐生が喜んでいるならいいか。俺より余程繊細な服を着ているが、もう夏だしすぐ乾くだろう。ん、繊細な服……?


「でも、かなり濡れちゃったね。ほーちゃんも大丈夫?」

「滅っ!」

「えぇ!?」


 急に自分で自分を殴った俺に桐生はイルカショーで濡れた時以上に驚いていたが、致し方ない。

 桐生のブラウスは白色。ロングスカートは紺色だが、ブラウスは白色。そんなブラウスに合わせた肌着も白色で、下着だけが。


『透けブラぷんね』

『やかましい』


 これどうすりゃいいんだよ。周りの人間……は、背景イラストよろしく前髪の下に深淵が広がっているので、桐生の透けブラにどの程度反応するか怪しいが、あまりこのまま歩いて良いものでもないだろう。桐生も気付いてはいなさそうだし、どう指摘したら……。


「そ、その。桐生。濡れると寒いだろ? 水族館だからTシャツくらい売ってるだろうし、着替えるか?」

「ありがとう。今日は暑いくらいだから、大丈夫だよ」


 お前が大丈夫じゃないんだよ。ああ、もうどう言やいいんだよ、もう!


「とにかく、寒いからこれでも着てろ!」


 理屈として俺の濡れたサマージャケットを着せたところで寒さ的には全く変わらないと思うが、透けブラ対策としては問題ないだろう。後は、桐生が気付かないことを祈るだけだ。なるべく見ないようにしてボタンを閉め――――。


「ひゃ」

「あ」


 胸のボタンを閉めようとしたところで、手が、当たった。


「ごめんっ!」


 離したところで、桐生の視線が胸に向いて。


「ぁ、ぁ……わた、私」


 桐生が、気付いた。


「その……寒い、から」


 もう、ボタンを閉めることはできず……そのまま視線を逸らした。


「そ、そう、だね。寒い、寒いから」


 そのまま、桐生はボタンをすべて閉め終えて。

 お互い嘘をついたまま、ようやく向き直った。


「ほーちゃん……ありがとう」

「どう、いたしまして」


 桐生は俺のジャケットを着て、耳まで赤くして俯いていた。


『ぷぷん。チェックのジャケットを着てきておいて良かったぷんね』

『チェックを愚弄するな』


 合わせやすいだろうが。オタクがよく着る服のイメージも確かにあるけれど。着やすいんだよ。


「あんまり寒かったら、着替えた方がいいけど……」

「い、いいよいいよ! すぐ乾くし、これがいい!」


 桐生は、ジャケットを抱きしめるようにして。


「これが、いい」


 呟いた小さな声は、聞こえなかったけれど。


「じゃあ、行くか?」

「うん!」


 そのまま、水族館を二人で見て回った。カメにラッコにペンギン。サメに、クラゲ……クラゲ、か。

 その、何も考えずに浮いているような姿に、この前の綴原を思い出した。


「どうかした?」

「いや……浮いてるなと思って」

「うん。可愛いね」


 そうして、次の企画展へ足を進める。


「私ね。水族館、誰かと来るの夢だったんだ」

「そうなのか?」

「うん。ミュージアムショップはチケットいらないから、何回か来たりしてね。でも、一人だと水族館はつまらないだろうなって思って。いつも眺めるだけだったから」


 それは、小さい頃の話だろうか。俺や太郎が一度しか会えなかった。幼少期の、知ることができなかった桐生の話。


「だから、今日ほーちゃんと来れて嬉しい! ありがとう、ほーちゃん」

「こちらこそ。イルカショー良かったし、俺は水族館好きだから。何回来ても飽きないしな」


 綴原と来たときから、企画展は変わりないようだ。もう少し時期が違えば、また変わってくるのだろうか。このゲームそんなことまで考えてなさそうだから変わらないかな、多分。


「ほーちゃんは……ここ、誰かと来たことあるの?」

「ああ、この前つづ……委員長と」


 うっかり綴原の名前を出すところだった。この世界では委員長……委員長の名前は知らないな。まあ、委員長で問題ないだろう。


「……委員長と、仲良いの?」

「まあ、副委員長だからな」


 忘れていたが副委員長だった。もうこれ以上それ関係のイベントは持ってこないでいただきたい。


「……楽しかった?」

「まあ、水族館好きだし」


 やけに聞いてくるな。

 と、桐生の方を見てみれば。


「ふーん……」


 なんだか、あんまり楽しくなさそうな。どちらかというと、機嫌が悪そうな。

 腕組みをしながら、珍しい表情をしていた。


「ほーちゃんはお休みの日は色々な子とデートしてるんだね」

「人聞きの悪い……」

「だって、私が知っている限りで、ぴよちゃんでしょ。それから委員長でしょ」

「箱森のアレだけはデートと言ってほしくないけどな」


 太郎もいたし。なんなら宇柚月いろりもいたが。


『そうぷん。宮藤まなみとプラネタリウムでデートもしたし、何ならこのデートが終わったら、春日野みけのとお家デートもするぷん』

『人聞きの悪いことを言うな!』


 思わず叩いた。致し方ない、正当防衛だ。


「え、え? ほーちゃん、その。怒った?」

「ああ……ごめん、その辺にタチの悪い虫がいたから」


 カスのカッスは置いておいて。


「デートなんて言えるもんじゃないのばっかだよ。大抵他の奴らがいたり碌でもないのばっかだ」

「そう、なの?」

「ああ、まともに二人で出かけるのなんて桐生くらいな」


 言いかけて、止めた。

 桐生も、止まって。固まる。


「……次、行こう」

「うん…………」


 企画展を見終わり、この先は――――もう、ミュージアムショップだ。


「桐生、他に見たいところとかあるか?」

「えっと……えっと、ね」


 歯切れ悪く、桐生は下を向いて。

 かと思えば、急にこちらをまっすぐに見る」



「もう一周……しない、か、な。だめ?」



 それは。

 単純に、出口に行かずにこのままもう一度右に曲がればいいだけのことで。

 なのに。

 桐生はそれを言いづらそうにして。でも、はっきりと言って。

 俺は――――。



「別に、いいよ」



 大したことじゃない。

 目的の特別なイルカショーが終わっていたとしても。

 水族館が好きなだけだから。


 大したことじゃない。

 服なんてとっくの昔に乾いているはずなのに。

 桐生がずっと俺の服を着たままだとしても。



 人混みに入ってから、桐生の細い手が、しなやかな指が。

 当たって、握って。そのままになっていたとしても。



 きっと、大したことじゃ――――。



「こ、これ。その、今日のお礼で」



 桐生から渡されたキーホルダーは、片側にマグネットが付いていて。


 それが付くはずの片側は。



 桐生の鞄で静かに揺れていた。




お読みいただきありがとうございました!

最近ギャルゲーできてないので「透けブラでよかったよな…ブラ透けって言い方もあった気がするし、一応調べておくか」で、検索したら検索履歴に残っちゃって大変なことになりました。ばかばか!


そして、センチメンタルグラフティのリメイクのニュースで当時の記憶ががーっと蘇ってきました。

すごい楽しいし面白くてジャーニーもおすすめしたいくらいで、めちゃくちゃ語れてしまうからそれだけでエッセイに投稿したい気分…えみりゅんの口癖は令和でも流行るはずだりゅん…。

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