mission84 墓参りを完遂せよ!
前回のあらすじ。
雨が、上がった。
「良い天気になって良かったー」
「うん、最高の墓参り日和だね!」
世の中に最高の墓参り日和があるのかは知らないが。
「古井戸くん……やつれているね…………」
「何せ寝てないからな……」
そう。昨日みけの家に泊まって、一晩中みけの枕になり、家に帰ってきたら即墓参りの流れだったので、寝れてもいないし体力回復もできていない。機嫌も良くないの悪い三拍子が揃ってしまっている。
「ほーちゃん、昨日はみけの家に泊まったんだもんね」
「ぴょっ!?」
やめろ太郎。箱森に余計な情報を与えるな。
「あ……そう、そういうこと。そういうこと、ね! いたしちゃったのね!」
「いたしてねぇよ! 冗談でもそういうことを言うな!」
「ひっ! ごめんなさい、調子乗りましたっ!」
つい語気が荒くなってしまった。相手が箱森だから問題ない気はするが気をつけよう。機嫌が悪いからと言って人に当たるのは三流だからな。
『いたす勇気もなかったぷんねぇ』
『死ね』
『ぷんっ!?』
危ない危ない。語気が荒いな、本音が漏れないようにしないと。
「で、箱森のお母さんの墓はどこだ?」
公園墓地にはたどり着いたものの、墓は無数に建っている。あそこの空気が澱んでいるところじゃなければ良いんだが。
「あそこだよ!」
ひときわ空気が澱んでいるところだった。
「お前は本当に期待を裏切らないなっ!」
「え!? お墓指さしただけなのにっ!」
まあ、偶数で来たから大丈夫だろう。箱森が何かやらかさなければ……多分。
「随分……怯えているね…………」
「奇数で来るとヤバい墓なんて怯えない方がおかしいと思うが……」
「まあ……奇数で来ちゃったしね…………」
「え――――?」
ここに来たのは、箱森と笹川、太郎に俺の四人で。
パミュリャンを入れたとしても、そうなるとカッスも入れて6名の、はずじゃ。
「着いたよー。あ、草刈ってもらってる。ラッキー!」
着いてみれば、箱森家の墓の隣には、座っているあめふらしがいた……あめふらし!?
「ひぃっ!?」
「大丈夫……今は、無害…………」
「なんでお前はそんなに落ち着いてられるし、そんな判断できるんだよ!」
「あ、あめふらしだー」
「ぺちぺちすんなドラゴン! 何? 俺がおかしいの!?」
太郎が触っているとあめふらしは紫の液体を吐き出した。当然、それは太郎にかかって。
「ほーちゃんー、濡れたー」
「濡れたどころじゃないだろそれ! 何、シミ抜きとかした方がいいのそれ!?」
「ほーちゃん、さっきから何を騒いでるのー? もう、真面目に墓参りしなさいよ」
「箱森には見えてねぇのかよ、ああもう!」
仕方がないので、太郎の手を引いて水道まで行き、Tシャツについた謎の液体を落とそうとする。
「ん……ふぁ、ぁん、くすぐったいよ、ほーちゃん」
「変な声出さないでくれるっ!?」
久しぶりにドキッとしたわ、畜生!
「もう……あとは、家帰って何とかしよう」
「おなか冷たいから脱いじゃおうか」
「さすがに公然わいせつ罪とかになるからっ!」
嫌だ……なんで墓参りに来てそれ以外のことで疲れなきゃいけないんだ……。
『日頃の行いぷん』
『死にさらせっ!』
『ぷんっ!?』
太郎と一緒に戻ると、掃除がある程度終わったようで箱森は花を切っていた。笹川は……何してるんだ、アレ。少し遠くに立って手を伸ばしている。とりあえず放っておくか。
「お花が……いっぽーん、にほーん」
「ふざけた数え方するなよお前はっ!」
「ひぃっ! だ、だって、雰囲気出した方がいいかと思って」
「箱森は余計なこと考えるなよもう!」
「お線香の火つけとこうかー」
「ドラゴンは……いつも落ち着いていて、すごいな」
箱森の挙動に一憂一憂している俺がアホみたいに思えてくる。
『一喜一憂じゃないぷん?』
『箱森で俺が喜ぶ要素がない』
たまには一喜させてほしいもんだ。
「で、笹川は何してるんだよ」
「除霊……」
嫌な言葉が聞こえた気がした。離れておこう。
「あれー、ほーちゃん。なかなか火が付かない」
「ライターの火が切れたのかもしれないな……うん。こりゃ、もうないな」
「そ、そんな……! お線香の火がないんじゃ、お墓参りできないよ!」
箱森のお母さんがそこまで線香の火にこだわっている感じはしないが。
「ぼ、僕、急いで買ってくるよ!」
「おい、待てドラゴン! 別にそこまで」
「頼んだわよ! 赤来戸くん!」
「そこまでしなきゃならんか、本当に!?」
太郎が高速で行ってしまった。仕方ない……しばし待つか。
「あーあ……人間も奇数になっちゃったね…………」
「ちょっと待て、笹川。今、なんて」
言いかけたところで、空気が塗り変わった。
背中に氷でも突っ込まれたかのような、嫌な怖気と。息もし辛くなる、暗く澱んだ空気。
「さ、笹川。これって」
「うん……呼んじゃった、みたい…………」
俺は、何も呼んでないけれど。
『ギシャァ――――――――ッ!』
そこには、ヤマタノオロチがいた。やまたの、おろち?
「さぁ……いくよ、古井戸くん…………」
轟音とともに吐き出される炎。どこから取り出したのか、槍でそれを防ぐ笹川。
そんな光景を見て。俺は。
「えー…………?」
天を仰いで……スタッフを呪うことしか、できなかった。
お読みいただきありがとうございました!




