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攻略不能ゲーム攻略作戦 〜濃厚ホモエンドを回避せよ!〜  作者: めの。
高校生編

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mission82 雨は、未だ降り止まず

 唇を掠めた柔らかな感触。目に入ったのは黄緑色の――――。


『グビェー! 死にかけたぷん!』

『早く尻をどけろっ!』


 カッスを掴んで投げ飛ばす。激しく水しぶきが上がったが、まあご愛敬として。


「みけ、大丈夫か?」

「ぁ、ぁ……うん」


 そういえば、俺に口にカッスの尻が当たったということは。

 あの狭い隙間に無理矢理入り込んできたカッスの顔は、みけの。


「…………その、ご愁傷様」

「何が!?」


 謎の慰めを受けて、みけが後退した。とりあえず、そろそろ上がるか。

 さすがにカッスの尻が当たったのはいただけないので、シャワーで口を洗っていると。


「ほーちゃん……そんなに、嫌だった?」

「ん? 何が」


 唇を押さえているみけを見て……先ほどの出来事を思い出す。もしかして、みけは。


「あ、みけ。それ勘ちが」

「うわぁぁぁああああん!」

「一歩遅かったのかよ! ああ、クソ!」


 へたりこんだみけを撫でて宥める。クッソ、それもこれもカッスのせいで!


「違うって! あれはキスじゃなくて」

「キスだったもんっ!」

「いやキスだったんだけど、俺とじゃ」

「ほーちゃん以外にいないもんっ!」

「いたんだよ!」


 その言葉に、みけは泣きじゃくりながら、涙でいっぱいの瞳をこちらに向ける。


「誰が……」

「えっと」


 こんな時、この世界の住人が納得してくれそうな答えは。


「かまいたち」


 ごめんな、かまいたち……便利に使ってごめんな。


「かまいたちなんていないもんっ!」

「あめふらしはいたのに!」


 なんであめふらしは許容して俺の嘘は許容してくれないんだよ! 嘘だからか!? 嘘つくしかないだろ、ああもう!


「え…………」


 先ほどとは違う、柔らかな感触。

 少し塩味が混じったそこから唇を離すと、そのまま指で涙を拭った。


「ほら……その、違うだろ?」


 さすがに唇にはできなかったから、頬に。

 まあ、外国人ならよくやっているのを見るし、ここなら……許容範囲だろう。


「みけ?」

「ぁ……うん」


 今度は、頬を押さえて。


「ちがった」


 その言葉と、涙が止まったことに胸を撫で下ろし、みけの頭に手を置く。


「みけ」

「うん……」

「俺…………」


 伝えよう。ずっと……思っていたことを。



「服が着たい」



 そして、できればその前にもう一度湯船につかりたい。寒い。

 みけはようやく俺を呼びに入ってきてから、今までずっと俺がすっぽんぽんだったことに気付き。


「ご、ごめんなさいー!」


 高速で風呂場から出て行った。やれやれ。


『はー、焦ったぷんねぇ』

「お前のどこに焦る要素があったんだよ!」


 もう一度湯船につかり、カッスを沈めて風呂から上がった。

 と。


「服は、どうすりゃいいんだ……?」


 こういうとき、立場が逆なら男物の服を女の子が着るイベントが発生するのだが。


「あ、ほ、ほーちゃん。服とか、下着がなくって。それで……みけのの、まだ使ってないのならあるんだけど」

「俺に女物の下着を!?」

「ごめんね。でも、それしかなくって」

「それしかなくてもその選択肢はねぇよ!」


 そして、こんな時にどうしたらいいかの知識は俺にはないが……とりあえず、タオルを上半身にも下半身にも巻き付けて脱衣所を出る。もしかしたら、他に何かあったのかもしれないが、まあ、もうこれでいいや。夏で良かった……。


「そういや、みけ。家には誰もいないのか?」

「うん。今日はみけの、一人なんだ」

「じゃあいいか……」


 帰っていきなりこんなタオルマンがいたら通報されてしまうところだった。危ない危ない。


「あ、あの。ほーちゃん、ドライヤー」

「ああ、悪いな」

「乾かして、いい?」

「別にいいけど……」


 正直、短いし夏だから使わなくてもすぐに乾くと思うけど。そんな俺の思いとは裏腹に、みけは、かなり丁寧にドライヤーをあててくれた。いつもなら髪が熱くなったら終わり程度で乾かしているが、遠くから温風になるように調整して、空いた左手で髪を撫でて、梳いて。


「柔らかいね、髪」

「そうか……?」

「そうだよ。みけのは、好き」


 ドライヤーが冷風に切り替わって、少しして。スイッチが切られた。


「好きだよ、ほーちゃん」


 言って、俺の髪を滑る指に。



『……柔らかいね、髪』



 この前、桐生すみれから言われた言葉が、感触が、重なった。


「みけ。俺は――――」

「分かってる」


 言葉とともに、背中にみけの手が当てられた。縋り付くように、上半身に巻いているタオルが握られる。


「ほーちゃんがみけののこと、好きじゃないのも……なんとも思ってないのも、分かってるから……っ!」


 背に置かれた手が震えても、みけの声が泣き声に変わっても。振り向いて抱きしめることはできない。


 俺が、みけを。

 春日野みけのを好きじゃないから。


 恋愛的な意味で、彼女を見ることは。今も、この先もずっとできないから。


「だから……っ! 明日の、朝まで、いいから」


 外では相変わらず、雨が降り続けていて、あの謎の声がしていて。

 閉じ込められたように、この家から出ることはできないから。



「そうしたら――――」



 振り向くことも、できはしないのに。



 雨は、まだ止まない。

お読みいただきありがとうございました!

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