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111.やってダメならこじ開けろ

「くっ、ぬぬ……」

 釘を何本も打ち込まれているだけあって、なかなか固いドア。それでも絶対にこじ開ける事が出来ない固さでは無い。

「ぬぅっ、ぐっ、くそ……」

 無理に力強くこじ開けようとすれば、それだけでドアの一部が変形して2度と開かなくなってしまうかも知れない。

 それから自分のショートソードが折れてしまう危険性だって無い訳では無い。

 ゆっくり少しずつ少しずつ、息を吐きながらギコギコとショートソードを上に下に、手前に奥に動かして目の前のドアを開いて行く。

「くぅ……あっ、ぬああっ!!」

 額に汗をにじませながら、ドアを少しずつ変形させてやっとの思いでバキッとロックの金具を壊して開いた。

「あー……疲れた……」

 何故にドアを開けるだけでここまで疲弊しなければいかんのだ……と思わず本音がポロリと口から出ながらも、ようやく開いた目の前のドアを見て安堵の息を吐くニール。


 しかし、その安堵の息はすぐに驚きの叫び声に変わった。

「っあ……むぐ!?」

 ギリギリの所で慌てて自分の右手で口を押さえて、絶叫を呑み込む。

(な、何だありゃあ……!?)

 薄暗い室内の中に見えた「それ」は余りにも巨大過ぎて、そして唐突過ぎてニールは思わず後ずさる。

 一旦そのまま後ろ歩きでドアの外まで出て、息と心を整える。

「……何だ、あれは……」

 ニールがそのドアの奥で見たものは、明らかに自分に向けられている1つの視線。

 目が合ってしまったので思わずこうして外に出て来てしまったものの、ドアに耳を張り付けて中の様子を窺ってみても別に襲い掛かって来る気配は無い。


 だが、このままドアの中に入って行くのは危険だと判断して一旦こっちのドアの先の調査は後回しにし、まずこの状況を伝えるべく出入り口のドアから外に出て、外で待っているパーティメンバーに報告。

「おっ、どうだった?」

「何か見つかったかい?」

「って、何か顔色が悪いわよ……大丈夫?」

 ギラギラと目を輝かせて近寄って来るエルマンとイルダーだが、彼の変化に先に気が付いたのはミネットだった。

「いや、それがだな……ええと、こんなでっかい何か得体の知れないのが居てだな。で、部屋が左右に分かれていてドアがガッチリ閉じられていて、穴がこうやってドアに一杯あって……」

「ちょちょちょ、まずは落ち着け。あんた今、自分の言葉が相当メチャクチャになってるぞ」


 シリルに突っ込みを入れられる位にパニック状態になっているニールは、一旦エリアスから皮袋に入っている水を受け取ってそれを少し飲んで落ち着く。

「……落ち着いたかい?」

「ああ、少しはな……。だけどこの塔は色々とまずい事になっていそうだ」

「どう言う事なのよ?」

 エリアスに水の入った皮袋を返し、今度こそ落ち着いたニールはミネットを始めとしたパーティメンバーに自分の見たままの光景を話した。


「……そんなでかい魔物が居たのか?」

「いや、魔物って決まった訳じゃない。あれは寝ているのかどうか知らなかったけど、こっちの存在には気が付いていない様だった。大きさは……ええと何だっけ、エリアスが前に修練場で出していたあのでっかい……」

「アディラードの事かい?」

「それだ。そのアディラードよりはかなり小さかったけど、それでも俺達の背丈から見たらかなり大きそうな奴が居たんだよ」

 身振り手振りも交えて必死に説明するニールだが、実物を見ていない彼等にとってはいまいちイメージが出来ない様子である。


 それとは別に、自分があの塔の中に入った時には外から見て何か変化が無かったのだろうか?

 その事を5人に尋ねてみたニールだが、不思議な答えが返って来る。

「それがさー、あんたが出入り口らしきドアを開ける仕草をして中に踏み込んで行ったら、何も無い空間に溶け込む様にしてあんたの姿が消えちゃったんだよな」

「何だって?」

 シリルの発言からすると、どうやら自分の姿は外からはまるで見えない様だ。

「と言う事はもしかして、この塔はそうやって外から見えない様になっているのか?」

「そう……らしいな。今でも俺達の目には何も見えないんだが、この辺り一帯にかなり強い魔力が流れているのは分かるよ」

 エリアスからも妙な事を言われ、やっぱり今の段階で……いや、もしかしたらこの先も塔の中を調査出来るのは自分だけかも知れないと考えるニール。


 と言う訳で彼は再度塔の中に踏み込む事になったのだが、不安な気持ちは最初に踏み込んだ時より更に増している。

(確か「押してダメなら引いてみろ」って恋愛のフレーズを兼山から教わった気がするが、言葉通りに受け取るならあのドアを押してもダメ、引いてもダメ、だから俺はこじ開けた。開けようとしてもダメならこじ開けろと思ってやってみたが、まさかこじ開けた先にあんなものが鎮座していたなんて……)

 これから右のドアに向かい、同じくショートソードを使ってこじ開けに架かるのだが、こっちのドアをこじ開けたらまた同じ様なのが居た……とかの展開だけは本当に勘弁して欲しい。

 その願いだけで頭が一杯のニールは、右のドアに開いている穴に対して緊張しながらショートソードを差し込んだ。

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