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赫蒼の殲滅者  作者: 怪奇怪獣魔爾鴉男
25/39

第25話「吸血女子」

起き上がる度に胸が痛いんですが!!

A.


県某市の郊外にある洋館....そこには誰も住んでいる気配が無く、今まで何回も解体工事が行われた。


だが、その度に数名の作業員が、全ての血の一滴も無い木乃伊のような死体となって発見されるので工事は二度と行われなくなったらしい。


この出来事を知る者は口を揃えて呪いだと言う。だが 、真実は呪いよりも厄介かも知れない者の仕業である。




「呪いの館....とは安直だが、まさしく、その名に相応しい」



月夜の肉体改造の休憩がてら、千戦狂叫は友であり呪われた館という噂の正体であるフィエーアが現在、住居として使用しているその洋館に来訪していた。



「私は可愛いと思うんだけど」



「ロシアの衣装を着た人間が、洋館に住むとは、なんともアンバランスなものだねェ」



「ここは絶好の場所なんだ、解体工事に来た人の血を吸ったあとも肝試しに来るカップルとか居るしさ」



....コイツらみたいに。とフィエーアは笑いながら、触手により纏めて拘束した男女を見下ろした。


美男美女で一見、お似合いのカップルだが....肝試しに此の場所を選んだのは最悪のミスだ。



「いや....私だけは助けて!」



「なっ、お前....!」



痴話喧嘩を眺める趣味は、二人の狂人ともに無い....ただ腹が減った、早く食いたい。ただ研究材料として欲しい。と思うのみ。



「男の方は中々の肉体だ、材料として貰おう」



千戦狂叫のスカートの中から、色は白銀で側面がギザギザになっている触手が、ウネウネと出て来たかと思うと、合体し巨大な鋸へと姿を変えた。



「材料?何をする気だ!?」



「こうするのさ」



巨大な鋸は男の首に食い込み、ギコギコとゆっくり、されど確実に首を切り落とさんと上下に動き始めた。



「ぎゃああああああ!!」



「うーむ、なかなかの悲鳴だねェ」



「く、苦しい....いっそ殺してくれ」



「いいぞォ、恐怖と苦痛に溺れる人間の分泌するアドレナリンは私の研究には欠かせない! もっと苦痛と恐怖を感じてくれよォ!!」



狂った研究者の、鋸にもなる触手はアドレナリンを吸収し一旦、蓄えて置くことが可能なのだ。それを持ち帰って研究材料として使用するらしい。



「今の彼女には何を言っても無駄だよ」



「お願い、私はあんな目に遭うのは嫌っ....!?」



女の願いは非情にも届かず、容赦なくフィエーアの触手が首筋を貫き、どんどん血を吸い始める。


やがて触手は美人の面影を一片も残さず、醜い木乃伊へと変貌させ、主の空腹を満たした。



「ここまで強くなれば十分だよね、奴等を倒してヴォルフトの居場所を吐かせる....!」



降注ぐ豪雨...鳴り響く雷鳴....天を突くほどの不気味な嗤い、偶然、この時に周囲の森に迷い混んでいた若者が此の洋館の更なる恐怖伝説を伝えることになる。





第25話「吸血女子」




B.


うぅ....ひよりの鬼コーチ、さっき溺れたばかりの私に滝で打たれる修行と滝を切る修行をさせるなんて!


責めて水に関係ないメニューやってからにして欲しいんだけど、そう頼んだら、「甘ったれないの!」って断られちゃったよ。



「その顔は何?その目は何?その涙目は何なの!」



「ひよりの方こそ、何なの其の目! 水で透けてるからっていやらしい目で見てこのえっち!」



顔とか目とか言いながら、滝に打たれてびしょびしょになった体の方を見て....お年頃とは言えさー!



「バカ....!だ、誰がアンタなんかを、そ、そんな目で見るかっての!!」



「本当〜?」



「私は見てた、えろい」



「もう水無ちゃんってば....!」



大人びてるとは思ってたけど、そっち方面でも大人だったんだね。惜し気もなく、そんなこと言えるなんてスゴいよ。



「マセガキめ!」



「まあまあ、大人の私がいる限り大丈夫よ」



奈南さんは胸をトン、と叩いて誇らしげ、自信がある人って素敵....!!



「大丈夫じゃないよ、私が来たからには」



「!!」



「アンタはこの前の蟲女!」



奈南さんの背後に触手を蠢かせながら、前に遊園地で戦ったロシアの民族衣装を着た女の子が立ってる!!



「ひっ、誰これキモっ!」



透明になる能力があるから気付けなかったよ、水無ちゃんは微かな気配を感じ取っていたけど、表情を見る限り今回は気付けなかったみたい。



「酷いなあ、というか私にはフィエーアって名前が有るんだけど」



「はあっ!!」



焔を放ち、奈南さんに当たらないようにフィエーアの触手だけを焼き切った。あの触手は人間の血を吸うし、きっと彼女は奈南さんの血を吸おううとしてたに違いないから!



「バカだけど学習能力はあるんだね」



....バカ呼ばわりも酷くないかな、慣れてるけどさぁ!



「奈南さん早く逃げて!」



「あわわわ、分かりました」



名前も見た目も可愛いらしい、けど能力と性格はとっても怖い相手だから油断は禁物....!!



「また来たの?」



「今度こそ倒すよ、不死身なら捕らえれば永久に血を吸えるしさ!」



「嫌だよ、そんなの!」



生き地獄....実際は三時間なんだけど、いや修行を始めてから三十分は経ってるから、いま負けたら約二時間三十分か。


そんなに長い間、血を吸われ続けるなんて考えるだけで身震いしちゃうよ!



「わわわ....なにあれ触手?!」



「ひより、奈南さんと一生に隠れてて!」



「分かったわ!」



触手を見てぽかーんとしてる奈南さんの手を引いて、ひよりが庭方面に走って行く。大丈夫かな、離れた場所で襲われたら守り切れないし....。



「大丈夫よ、見つからないとこ隠れるから、安心して戦いなさい!!」



不安に思ってると、ひよりは立ち止まって笑顔でそう言ってくれた。彼女が幼馴染で良かったよ、神様に感謝しなくちゃ!



「有り難う!」



「へえ勝つ前提かあ」



「勝たなきゃいけないもん!」



焔の弾を飛ばすも、ぜんぶ触手で弾かれて返って来た! 水無ちゃんが水の障壁を張ってくれたから助かったけど....



「前より触手の速度が速くなってるよ!」



「たぶん、あいつも人々の生き血を啜って強くなった」



食事するだけで強くなるなんて狡いよ....いやいや、そうじゃなくって!!



「許せないよ、今度こそ倒さなきゃ」



「ねえねえ、君は牛肉や豚肉は好き?」



「えっ、あっ、うん」



いきなり変な質問だなあ、つい答えちゃったけど隙を作る作戦なんじゃ?!



「じゃあ牛や豚が可哀想!それを食べるなんて許せないって言われたらムカつかない?」



「え....」



言われたこと無いから、全然わかんないよ。お肉を食べ過ぎると太っちゃうから好きだけどあんまり食べないし!



「牛や豚は法律で食べて良いけど、人間を殺して食べるのは御法度」



「え〜人殺しの君が言うの?」



ムカつくことにフィエーアは、水無ちゃんを馬鹿にした様に嗤うとゲジゲジと蛭のハーフみたいな虫を大量に吐き出してきた。


うわあああん、キモいよぉ!こんなのに血を吸われるなんて絶対に嫌!!



「こっち来ないで燃え尽きて〜!」



燃える蟲で出来た白い柱を突っ切って、水無ちゃんがフィエーアに錫杖を手に立ち向かう!




「悪い能力者を、もはや人とは呼べない」




「滅茶苦茶だね、暴論だ」




「まだ子供なもので」




スゴいよ水無ちゃん、前よりもスピードアップした無数の触手を錫杖で全部、捌いちゃうなんて!!



「えーい!」



「ぐえっ!背中を狙うなんて、卑怯だね」



水無ちゃんと互角のぶつかり合いをしているフィエーアに、焔を纏ってパンチを浴びせることに成功!!



「ゴメンね、悪い子を倒すには卑怯とか言ってられないから」



「それもそうだね、なら私もどんな手を使ってでも血を貰うよ!」



フィエーアの姿が一瞬にして消えちゃった、そっか、彼女は透明になる能力を持っているんだった!



「厄介ではあるけど、広範囲ごと吹き飛ばせば」



「わかっ....!?」



ヌメヌメしたもの、見えないけどきっと触手で思い切り太ももを叩き付けられた! うぅ、さては広範囲攻撃をさせないつもりだね〜!



「きゃっ....気配の消し方も完璧になってる」



「どこから来るのか分かんないし、攻撃も邪魔されるしピンチなんじゃ!?」



脚、腕、背中と色々な箇所を見えない触手で叩き付けられて、ダメージが蓄積していく、駄目だ....立ってるのもキツくなって来た。



「早くなんとかしないと負けちゃう!」



強い敵に負けない為に特訓したのに、全くの無意味だなんてあんまりだよう!



「血をばら蒔いて色を....」



「駄目、奴は前にその血も吸ったから」



「だよね....」



万事休す、か。私と水無ちゃんはもう、滝壺の中で膝を突いて動けない!



「うあっ....う」



「きゃっ、あ、ああ....」



尖った物が私のおへそに突き刺さって痛みが走ったかと思うと目眩と倦怠感に襲われる。貧血の症状....血を吸われているんだ!!



「えいっ!」



「ぎえあああああ!!」



私は自身に焔を纏わせ、それは触手を伝い、本体も炎上させた。その焼き焦げた不快な臭いのする場所、それがフィエーアの居場所!!



「そこだ、焔神力キック!!」



「うん!」



私の焔を纏ったキックと水無ちゃんの水を纏った拳が同時に最も臭いのする場所を攻撃。手応えあり、つまり大当たり!!



「滝で助かったよ!」



滝壺に飛び込んで消火するくらいにはまだ体力が....あれで倒れないだなんてタフな奴....!!



「また何処にいるのか、分からなくなっちゃった」



「ううん、大丈夫!」



「げぇっ、何で分かったの!」



気付くと、水無ちゃんに触手を握られた状態で火傷が治りきってないフィエーアが姿を現した。



「愛する者の焔の匂い」



「わけわかっ....!?」



うわっ、フィエーアの居る場所だけ水位が上がって行くよ!!



「お前が水の中に入った時点で私の勝ちは決まってた」



「溺れさせる気かぁ、そうはいかないよ」



「邪魔しちゃうもんね!!」



フィエーアが自分の周囲の水を触手で吸おうとしたから、脇腹を殴って邪魔しちゃった! それまでに脇腹を貫かれたりしたけど勝てたんだから問題なーしだね!!



「げほおあ、溺れげぼばぶぼ」



「上がって来るな、沈め沈め」



浮上しようともがくフィエーアの頭を踏みつけて沈め、伸びてくる触手を水の刃で切断する水無ちゃんの目は何時にも増して輝いてる!



「あ....気絶したみたいだよ?」



白目を剥いて泡を吹きながら、フィエーアがプカプカ浮いてきた。何とか勝てて良かったよ。



「なら私たちに引き渡して〜!」



あれ?この声は....!



C



「石堀さん、生きてたんだね....良かった!」



「ふふふ私を舐めちゃいかんよ緋美華〜」



この石堀とかいうのは、確か緋美華のクラスメイトで前にヴォルフトを捕まえたけど何か吹き飛ばされて行方不明になってた奴。



「帰って来たんだ」



「残念そうな顔はなにさ〜」



抱き合って頭を擦り付け合うなんて、仲良いな二人とも、思わず嫉妬してしまう。



「それにしても疲れた。コイツが一緒だから余計にね」



「あいったー!」



コツンと、三尋木が石堀の頭を小突いた。やっぱりこのコンビ、緋美華と風見ひよりの関係を彷彿とさせるな。



「とにかくフィエーアは確保させて貰うよ。ちゃんと出れないように閉じ込めて置くから安心してね」



「じゃ、また後でね」



「うん。任せたよー!!」



フィエーアを縄で縛り背負うと、緋美華の友人コンビは手を振って去って行った....いや、見てたなら助太刀しろよ。



つづく



吸血百合はだいたい名作なんですよねえ、なんか相性いいもんねえ

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