↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赫蒼の殲滅者  作者: 怪奇怪獣魔爾鴉男
26/39

第26話「メイドイン天国」

猫が撫でた過ぎて咽びなく

A.


暗い海の上、某国の密航船が嵐に襲われ激しく揺さぶられている。だが船員たちは嵐に慣れていた、彼らが恐怖したのは船に巻き付き仲間を次々と海に引きずり込む巨大な十本の触手....!



「どうなってんだよ....」



「駄目だ銃もナイフも通用しねえ!」



対人戦なら一人で五十人を殺せる精鋭達でも、武器も肉体も通用しない巨大な触手の前には為す術はない!



「あひひひひふひひひひひ」



「オイどうした!?」



「馬鹿な....狂ったと言うのか。どんな地獄じみた拷問にも耐えて来た我が同志が!」



そう言っていた隊長も軈て気が狂い、不気味にケタケタと笑いながら自ら海の底へ飛び込んでしまった。



「やはりフィエーアもヴォルフトも居ないと少し寂しいね」



海へ沈んだ....いや、引きずり込んだ密航者をメスで切り刻み、奇っ怪な機械に次々と放り込んでボタンを押すと、白衣の幼女は溜め息をついた。



「ざまあないぜ」



「何時から海蛇になった....君でもここまでは来ないかと思ったのに」



千戦狂叫は自身が唯一と言って良い苦手な人物、イグが背後に立っていたので、ハイな気分が萎えてしまった。



「随分と嫌われたなあ俺もよ」



「裏切るし毒怖いし、居ると落ち着かないのは仕方がないよォ」



「まあ良い、俺もテメエら嫌いだしな」



イグも何時も狂気じみた研究に没頭する彼女のことは好きじゃない。人間の心を失い、人命を虫けらの如く扱う者を好きにはなれなかった。



「そんなことよりも何故に来た?」



「決別だよ、認めたくねえがテメエは強え。だから今までアイツを影から見守って来たが、協力させて貰う」



「それなら君が一人で向かってくれば良いじゃないか、十分に私を倒せるだろう?」



「相討ちでならな。だがそんなのオレはゴメンなんだよ」



両者の力は互角、イグが毒を流し込んだ瞬間に出来た隙を突き、千戦狂叫は彼女を殺すだろう。だが、その後に毒が回り千戦狂叫も死ぬ。



「ちぃっ、厄介だねェ。じゃあ私も部下を引き連れてくよ」



「上等だぜ、まあアイツとオレなら上手くやれるさ」



イグは煙草に火を研究室の壁を迷惑に裏拳で破壊し、海へ出た。そのせいで海水が入って来た為に、千戦狂叫に従事する機械助手たちが、急いで壁の修理を始めた。



「....ふ、ははははは今宵、完成したとも知らないで!!」



やがて修理が終わり、侵入してきた海水がマシンで吸いとられると、幼いマッドサイエンティストは高らかに笑う。



「なんだ....そ、それは!!」



まだ改造手術は途中だが、麻酔が切れ痛みで目を覚ました月夜は、高笑いの理由を見て息を呑んだ。



「起きたのか月夜。驚いたかい?」



「クソっ、私に殺される前に殺されるなよ!」



一体、月夜は何を見たのだろうか....?




第26話「文化災」



B.


数ヶ月前、フィエーアを倒して以降は悪い能力者は現れてない、お陰で休校中だった学校も始まったし。その間も、お姉ちゃんを探したけど全然見つからなかった、そうして時は流れ、今日....



「文化祭の日がやってきた〜!」



「こら、ちゃんと亜神祭って言いなさいよ、皆で決めたんだから」



模擬店とか演劇とか色々と楽しいことが一杯な行事、それが亜神祭。うちのクラスはメイド喫茶をやるんだけど、徹夜で準備したから少し眠い!



「メイド喫茶は十二時から、それまで色んなとこ回ろう!」



「ええ、せっかくだから楽しむわよ」



よーしひより、水無ちゃん、今日はとことん楽しむよ! ....ってアレ....?



「何この子、超可愛いんですけど」



「ゴスロリ幼女たまらんですな〜」



「....知らない奴等に囲まれた」



気付いたら水無ちゃんが女子たちに囲まれて、撫でられたり頬っぺたを引っ張られたりしてる。 もう、水無ちゃんは困ってるじゃん!!



「やめて〜水無ちゃんは人見知りで....っていたーい!」



あうぅ、突き飛ばされて尻餅ついちゃった。みんな水無ちゃんに夢中で困ったよ....確かに可愛いし仕方ないけど!



「大丈夫? 」



「ありがとう〜」



すました顔でひよりが私の手を引っ張って立たせてくれた、少女漫画の男の子より格好いいかも!



「まるでバーゲンセール時のおばちゃん達だわ」



「若い女の子にそんなコト言ったら怒られちゃうよ!」



年頃の女の子をおばちゃん呼ばわりなんて、ひよりは度胸あるなぁ、幸いみんな水無ちゃんに集中してて誰も聞こえてないみたいで良かったよ。



「きゃああああ凄くキュート!」



「ちょっと、どこの娘〜? すごく可愛いじゃん!?」



「彼女は緋美華と私との間に産まれた娘」



「ええっ!!」



石掘さんが、この前と同じ様な嘘ついてる。バレバレな冗談だけど、ひよりと水無ちゃんは彼女を睨んでて怖い!



「嘘ついてんじゃないわよ、ていっ」



「いたあ!」



突っ込みを入れた三尋木さんに、ひよりと水無ちゃんは親指を立てた。いつも言い争ってる二人だけど絶対に仲良いよね、喧嘩するほど何とかって奴?



「みんな退いて、私は緋美華と一緒にいたいの。邪魔しないで」



ギロリ。水無ちゃんが子供とは思えない目力で自分を小動物みたいに扱う女子達を睨み付けると....



「た、退散〜」



「怖いよ〜!」



....みんな一目散に逃げて行った。石堀さんはありゃまと頭を掻いて、三尋木さんはゴメンねと、この二人はその場に残ったけど。



「行こ。緋美華とおまけ」



「誰がオマケよ、口を慎みなさいよクソガキ!」



呆れた、また喧嘩して....!



「もう二人とも、喧嘩するなら私一人で回るよ!」



「ごめん」



「良いじゃ有りませんの、あなたひとりで回れば。ワタクシが風見さんをエスコートしますし!」



「そして私がお嬢様の護衛を」



あ、金城さんと椋椅さん!! 夏休みに退院したから運動会と亜神祭に参加できて良かったよね。



「誰がアンタとなんて....私は、その、コイツと一緒が」



ひより....私のことをそんなに心配してくれて、嬉しいよう!



「じゃあ皆で回ろう!」



「仕方ないわね」



とか言いつつ満更でも無さそうなひより可愛いなぁ、口に出したら照れ隠しで怒られちゃうけどー!



「風見さんが側にいるなら十分ですわ!」



こうして皆で楽しむことに.....まずは可愛い後輩である一年生の劇、内容はコミカルにアレンジされた白雪姫!!



「ダメだよぉ、それは毒リンゴだよ! 食べちゃダメだよ〜!!」



「ヒーローショー見に来た子供か!」



しまった、皆の迷惑になるのについつい騒いじゃった。 ひよりに怒られるって思ったら手遅れだったよう!



「騒がしいですわね、精神面がお子様ですわ。それにしても下手な演技だこと、私ならもっと迫真の演技が出来ますけど!!おーっほっほ!!」



「アンタこそ五月蝿いのよ!!」



「痛いですわ、愛の鞭ですわ!」



.....ひよりに怒られて暫く静かに見てたんだけど、キス、キスシーン来ちゃったよ!


王子様のキスで目覚めるお姫様っていうシチュエーションは女の子なら誰もが憧れる。


だから私もこのシーンでドキドキしてすごーく、テンション上がっちゃうよ〜!



「二人とも女子だけどね」



「でもお似合いだよ!」



女の子らしい雰囲気だけどクールでボーイッシュな顔立ちの王子様役にふわふわした雰囲気のお姫様役。



「私もあれ。やりたい、貴女と」



「起きてる時でもやってたじゃん水無ちゃん!」



「でも結構前から敵現れないから、ご無沙汰」



それもそうだね。いやご無沙汰は平和の証拠だから有り難いんだけど、水無ちゃんは私とキス出来ないから不満みたい。



「欲張りな子供ね!私だって....やりたいわよ」



「でしたら風見さんがお姫様役でわたくしが王子様役でそういう劇、いえ! ドラマを作りますわよ」



「いやアンタとじゃなくて」



「お嬢様、そのシーンの練習は私が!!」



なんだかまた騒がしくなっちゃった、他の生徒たちが迷惑そうにこっちを睨んでる。本当にごめんなさい〜!



「ああもう劇に集中できない....」



「うるさい!!」



今度は三尋木さんに怒られちゃった。良く見ると彼女の隣に座ってる石掘さんは白目を剥いてる、静かだと思ったら気絶してたんだね....南無三!




C.


劇を見て、お化け屋敷に行った後に飲食店を巡って....もう、お腹がいっぱいだけど、十二時が近い。メイド喫茶の準備をしなくちゃ!!



「よいしょ、よいしょ....ん?」



三尋木さんがスマホを見つめて眉をしかめてる、どうしたんだろう....?



「困ったなあ、翔琉(かける)ちゃん、風邪で来れないって」



あらら、翔琉ちゃんが休んじゃったら本来より大変になっちゃう。でも私が彼女の分も頑張れば良いや!



「へーきへーき、私が翔琉ちゃんの分も頑張るよ....?」



意気込んでたら、袖を引っ張られたので目線を下げてみると水無ちゃんの上目遣いが視界に....可愛すぎる〜!



「わたしも手伝うよ」



「いいの?でもサイズは....あ、都合の良いことに割りと合う」



....という訳で、私たちと一緒に水無ちゃんもメイド喫茶のお手伝いしてくれる事になった!



「似合う....かな」



恥じらいうメイド服姿の水無ちゃん、これはもう反則的な可愛さ、可愛すぎて意味が分からない!



「うん。すっごくもうすっごくすっごく似合うよ!?」



「大袈裟ねぇ」



えー、これでも過剰な表現を抑えて言ってるのに。



「緋美華も似合ってる。可愛い」



「ホント? 嬉しいー!!」



いやーん、水無ちゃんに誉められちゃったよ。あれ....ひよりがチラチラこっち見てる、そっか自分も似合ってるのか聞きたいけど恥ずかしくて聞けないんだね。



「ひよりも似合ってるよ!」



「でもなんか恥ずかしいわ....だから反対したのよ」



「なに言ってるの超可愛いよ?」



もう何で自分に自信を持てないの、あんなにモテモテなのに....女の子からだけど!



「ほ、ほんと?お世辞じゃないでしょうね」



「ひよりと私の関係じゃん、お世辞なんて言わな」



「お世辞だったらぶっ殺しますわよ春野 緋美華! 椋椅、私より風見さんの写真撮りまくって!!」



殺されちゃうのは、ちょっと嫌かな....でもお世辞じゃなくて本音だから恐れることはないもんね。



「お任せを....」



さっきまで金城さんのメイド服姿を撮影しまくってた椋椅さんのカメラがひよりに向いた。



「ちょっと辞めて下さいよ!!てか椋椅さんも手伝ってくれません?」



「既にメイド服ですし!!」



ひよりの言う通りだよ、椋椅さんは私たち素人とは違って本職の人だもん。スキルというかレベルが五十くらいは違うはずだし、手伝ってくれたら百万人力なんだよーっ!



「タダ働きは嫌です」



「うわきっぱり!」



「現代の大人達も椋椅さんを見習って貰いたいわね。はぁ、仕方ないか、無理に手伝って貰うのも悪いしね」



「椋椅、風見さんの頼みですわよ。手伝いなさい」



「分かりました」



いつも思ってたけど椋椅さんって金城さんに凄く忠実だよね、メイドなのを差し置いても。



「まさに鶴の一声ね、ありがとう金城」



「お、お礼を言われるなんて嬉しいですわ! 今やワタクシは鶴を超え鳳凰にすら匹敵する....」



「....コイツは放っておいて、始めるわよ!」



「えいえいおー!」



開店時間が来た、よーし、頼れる仲間たちとメイド喫茶を盛り上げるよー....っと早速のお客さん、いきなり二人も来てくれた!



「いらっしゃいませ〜」



「みんな可愛いからね、このクラスの女の子は!」



やーん、クラス纏めて誉められちゃった。余計に頑張る気になるってもんだよ!



「お帰りなさいませ、ご主人様って言ってみてよう」



「お帰りなさいませ、ご主人さま(はぁと)」



笑顔で、指でハートを作って、元気いっぱい御挨拶....練習通りに出来たかな?



「ぶひいいいいいいいコレがメイド萌えかあああああ!!」



わーい成功だ、こんなに喜んで貰えるなんて嬉しいな。鼻血を吹き出して他のお客さんのオムライスにぶっかけなければもっと嬉しかったんだけど!



「ぎゃー!私のオムライスがああああ!!」



「じゃあ私が食べてあげますね」



石掘さんがいつの間にか鼻血とケチャップが混ざったオムライスを手にしていた。お客さんが、あっ....て言った時にはもう既に彼女の胃袋行きに....!



「このバカもの!!」



ドゴォ、擬音にするとそんな感じの鈍い音がクラス中に鳴り渡った。張り切ってるのかツッコミパワーも何時も以上みたいだね、三尋木さん!



「ねえもう可愛いわこの娘〜!」



「うるさい。早く注文して」



水無ちゃんの様子はどうかな? とお皿をお客さんに運びながら見てみたけど、なんかイライラしてない?



「生意気だけどそこが可愛い、ツンデレメイドさんだ!!」



ツンデレじゃないよ、水無ちゃんはひより曰く、くーでれ? だから違うんだよ〜!



「ツンデレはあっち。可愛いって言われるならアレに言って、緋美華意外に褒められてもなんかむかつく」



水無ちゃんが指差した方には本物のツンデレ、ひよりの姿。クラスの皆からも真面目に接客するよりツンデレ全開でやって欲しいと頼まれた通り....



「べっ、別にアンタのために作ったんじゃないんだからね!!」



恥ずかしそうではあるけど頑張ってやってるね、でも普通にひよりが接客するとなると真面目に丁寧になりそう。



「きゃー、風見先輩っ! 素敵ですぅ〜〜〜」



ひより目当てに来た女の子たちが、目をハートにして黄色い悲鳴をあげている。ツンデレメイド....ひよりにはピッタリかも!



「ああ、風見さんのメイド服。見惚れてしまいますわ....あっ」



お客さんよりも、ひよりに目が行ってしまった金城さんが、お皿を落として割っちゃった!



「オイ品物を落とすなよ」



「はいはい金。これで元より得しましたわね、良かったじゃないですの」



一万円札....金城さんはお金さえ出せば何とかなると思ってるんだから、もう!



「う、うう、なんてクソ接客だ! あのメイドを見習えよな」



「またのご来店をお待ちしております」



皮肉にもお客さんが見習えと言った人は椋椅さん、本職のメイドさん....!



「あれはワタクシのメイドでしてよ、本物だから対応が完璧なのは当然ですわ」



「うそーん」



あはははは、ここは何て個性的なメイド喫茶。順調って言えば順調....なのかな、とにかく此のまま行けば成功で終わるね!



「ふふふ、やっと出番が来たか。敢えて修行の時間を奴等に十分に与え、より強くなった所を狙えとは、我が主の言うことは良く分からぬが....」



「あの方は意味のない事は言わないわぁ、黙って命に従っていれば良いのよぉん」



あれー? このフード姿の二人組のお客さん達の会話、すごく怪しいよ、なんの注文もせずメイド服姿も一ミリも見てないし!



「あの? 何かご注文は....」



「貴様らの命でも頼もうか」



....この雰囲気、久しぶりだから直ぐには気付けなかったけど悪い能力者だ....!!



つづく


メイド服にはパンプスかブーツかヒールか迷いますな

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。