階層を増やそう
さて、名前が決まったものの、まだこのダンジョンには何もない。
試しに生み出したモンスターも売っぱらってしまった。
じゃあ、次にすることは――
「よし、階層を増やそう。」
「よっしゃ来た!」
盛り上がる二人。
そこへ、
「あのー、私はもう帰りたいんですが……」
と、タルタルが口を挟んできた。
「ああ、そうだったな。んで、俺はどうすればいいんだ?」
「でしたら、この業務完了届にサインをいただきまして……はい。それから検査員の証明が必要ですので、今回はクロノス様にもサインをいただきまして……では、こちらが請求書になります。」
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請求書
ハームレス
ダンジョンマスター 黎二 様
この度はワーキャット派遣サービスをご利用いただき、誠にありがとうございました。
業務の完了に伴い、下記のDPを請求いたします。
一金 100DP
以上
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……まあ、ご丁寧なこと。
「確かに拝受した。んで、どうやって払うの?」
「ダンジョンマスターの機能からお支払いいただけたかと存じます。」
「【オープンリスト】」
メニュー
物品▼
工事▼
委託▼(完了していない業務があります)
ん、これだろうな……
委託から今回の業務まで進んでいくと……
ワーキャット派遣サービス
請求払い
あった。これを選んで……
ワーキャット派遣サービスに100DPを支払いますか?
YES/NO
じゃあ、YESを選んで……
払えたっぽいな。
残りのDPを見ると1087になっていて……
「あれ? 増えてる? なんで――」
「はい! 確かに受け取りました! では、失礼いたします~!」
タルタルは元気よく帰っていった。
だが、黎二の意識はまったくそちらへ向いていなかった。
「なあ、DP増えてんだけど!」
「ああ、そりゃ増えるだろ。冒険者が少なからず滞在したんだぞ。しかも、まあまあ高ランクだ。」
「それだけで二百DPくらい溜まったぞ。これは……いける!!」
楽しそうにする黎二を、クロノスはニヤニヤしながら眺めているだけだった。
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「さあ、早速階層を増やそう!!」
「めっちゃエネルギッシュじゃん。んで、どうやって増やすか知ってるのか?」
「え? リストで選べばポーンと増えるんじゃないの?」
「それはダンジョンの機能としてならあるな。ただ、お前はダンジョンの機能は使えないだろ?」
「え……でも、リストとかメニューとか使えるじゃねえか。」
少し震える声で尋ねると、返ってきた答えは非常に無情だった。
「あれはダンジョンマスター固有の能力。ダンジョンを改造したり、階層を増やしたりするのは、ダンジョンの能力をマスター権限で使用しているだけだ。」
「ってことは俺、階層を増やすには大掛かりな工事が必要ってことかよ。」
「そうなるな。んで、明日には冒険者の間で噂が広まるだろう。このダンジョンでは金になるモンスターが獲れるってな。」
「そうなると、冒険者は……」
「わんさか来るだろうな。」
「畜生!!」
「さあ、手腕の見せ所だぞ、ダンジョンマスター。」
「やってやる……なんとか生き延びてやる……」
黎二は早速手を打つことにした。
「まずはリストから委託、工事を開いて……」
委託▼
工事
「工事を選択……」
工事▼
修繕
建築
「さらに建築を選択……」
建築▼
モグラ工務店
ネズミ工業
ドワーフ興業
「時間が惜しい! モグラ工務店でいこう!」
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モグラ工務店
地下仕事はお任せ。夜目が利くので三交代で作業します。
契約DP:100DP/1日
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なかなか作業スピードは速そうだ。
ひとまずここに頼もう。
うむ、工期次第で最終的な請求額が変わる感じか。
お願いをしよう。
工事を発注しますか?
YES/NO
YESだ!
ここで悩んでいる時間はない!
召喚魔法陣が現れ、ヘルメットをかぶった者、メジャーを持った者、ツルハシを担いだ者など、さまざまな現場姿のモグラが五体現れた。
「おう、俺たちがモグラ工務店の現場作業員だ。どんな仕事をすればいい?」
「えー、皆様には地下の階層を増やしていただきます。ですが何よりも時間がありません。測量や設計をしている時間もないので、いきなり作業から始めていただきます。」
すると、モグラたちがざわついた。
「兄ちゃんよ。設計書も何もなしに俺たちに作れってのか。いい度胸してんな。俺たちはな、適当な仕事はしねえ。職人なんだ。」
「分かっています。皆様の目を見れば分かります。」
こういう町民も相手にしたことがある。
こういう人たちは、自分の仕事に誇りを持っている。
「皆様は穴を掘るのは得意ですか?」
「得意どころの話じゃねえよ。俺たちは、それができなきゃ成人と認められねえ。」
「なら、なおさら心強い。」
「まどろっこしいのは好きじゃねえ。単刀直入に言いやがれ。」
「皆様には穴を掘ってもらいます。広さ一万平方メートル、高さ二メートルの巨大な穴です。それを地下三階とします。広さ、高さ、そして安全性。この三つだけ満たしていただければ、他は何もいりません。」
「兄ちゃん、それは地下2階っていうより、ただの穴なんじゃねえか?」
「ええ、穴です。ただし、この大穴をこれから舗装したり、手を加えたりして、しっかりした部屋にしていきます。皆様にお願いしたいのは、完璧な穴を掘ることです。」
「はっはっは!! そりゃ考えたな、兄ちゃん。モグラに穴だけ掘らせて、あとは別に発注するってわけか。理にかなってるじゃねえか! それなら掘ってやるぜ、完璧な穴をよ!」
「はい! お願いします! 穴の出来栄え次第では、舗装工事などもお願いするかもしれませんよ?」
「気合も入るってもんよ。このモグラ工務店代表、コンスモールの名に懸けて、完璧な穴を掘ってやるよ!」




