商店街
本日の業務を終えたタルタルと、日銭どころか一か月分の給与を手にした黎二は、買い物をするため商店街へやって来ていた。
「ここがホーン町の商店街か。意外と人が多いな」
「そうですねぇ。町規模での商店街としては、かなり栄えている方ですね」
異世界で初めて見る商店街は、地球にいた頃のものよりも栄えていて、活気に満ちあふれていた。
地球の商店街は昔は栄えていたのだが、大型ショッピングセンターの建設によって客がそちらへ流れ、黎二が転移する頃にはシャッター商店街となってしまっていた。
(なんだか、この空気は好きだ)
黎二は、この活気にあふれる町を好きになりつつあった。
「マスター、お腹が空きました……」
タルタルがうるさいので、先に財布を買ってから、こいつに何か食わせることにする。
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革製品店を見つけたので入ってみると、ずんぐりむっくりのおじいさんが店番をしていた。
「あの~、すみません。財布が欲しいんですけど……」
そのおじいさんはこちらを一瞥すると、鼻を鳴らしてこう言い放った。
「小僧に買える値段の物は、うちにはねえよ。出直してきな」
「……いくらくらいですか」
「フン」
「いくらくらいですか!!」
「……土産代わりに教えてやる。うちは金貨三枚からの高級志向店だ!」
黎二はポケットから金貨五枚を取り出し、店主に見せてから、
「機能的なやつをもらおうかな」
と言った。
店主はすぐに態度を変え、
「こちらなんていかがでしょう! こんなのもございます!」
と、色々勧めてくる。
聞くところによると、このずんぐり爺さんはドワーフらしい。
技術力があり、プライドが高いのが特徴とのことだが、資本で殴るとはまさにこのこと。
これが金の力だ! ははは!
……まあ、冗談はさておき、技術力があるのは本当のようで、【収納】の魔法が常時かかっている財布が手に入った。
見た目以上に硬貨が入り、デザインもスタイリッシュでとても気に入った。
「じゃあ、飯を食おうか」
「待ってました!」
ワーキャットは魚が好物だったはずなので、魚料理の店を適当に探していると、
【魚勝】
なんとも「まさに!」という感じの店があったので、早速入ってみる。
「へい、らっしゃい!」
おお、これは魚人というやつか!
鱗、エラ、ヒレなど、魚の特徴を持った亜人が、ジャパニーズ板前スタイルでカウンターに立っている。
ああ、そういえば、この世界には異世界召喚があるんだったな。
その地球人が和食を広めたとか言っていたっけ。
そして、その勇者がダンジョン問題の元凶だった。
そんなことを思い出しつつも、今は寿司を楽しむべく注文する。
「大将! おまかせで!」
「あいよ! 了解した!!」
「レイジさん。このお店の注文の仕方、何で分かったんです?」
タルタルがそう聞いてくるので、俺は胸を張って答えた。
「これが王道なんだよ!」
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腹いっぱい寿司を堪能した(銀貨六枚だった)俺たちは、そろそろダンジョンへ戻ることにした。
帰り際、さすがにお土産を買わないとクロノスが怒るかな、と思い、饅頭(銅貨三枚)を買っておいた。
道中は特に何事もなく、ダンジョンへ到着した。
地下へ続く階段を下っていると、下からワーワーと騒がしい声が聞こえてくる。
タラリ、と黎二の頬を汗が伝う。
(冒険者だ……やばいか)
急いで階段を駆け下り、そこで目にしたのは――
冒険者と野球拳をするクロノスの姿だった。




