一家に一匹
早速俺たちは、モンスターを買い取ってくれる【買いブツくん】に入店することにした。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」
「店主が鬼人族だって、よく分かりましたね」
「鬼の方だった!」
タルタルとそんな会話をしていると、奥から店主がやってきた。
店主は赤い肌に角が生えている、まさしく鬼であった。見た感じ、女性のようだ。
「いらっしゃい、お客さん。何をお求めで?」
「ああ、えっと、モンスターの買取をお願いしたいんですけど……」
「ああ、買取ね。そこのスライムとゴーレムかい。まったく、雑魚は使い道がないから買い取っても困るんだけどね……って、これは!!!」
「どうかしましたか?」
「ちょっと、あんた!! 来ておくれよー!!」
そう言って女性の鬼人が奥へ呼びかけると、彼女よりもさらに大柄な鬼人がぬっと姿を現した。口には立派な牙が生えている。
「なんだよ。俺は休憩中だってのに……。スライムとゴーレム? そんなの緊急でも何でもないだろ」
「あんたの目は節穴かい!! こいつらは一家に一匹と名高い【クリーンスライム】と【キャリーゴーレム】じゃないか!!」
(ん? そいつら、召喚DPめちゃくちゃ安いモンスターだぞ? そんなに驚くようなもんなのか?)
「なに!!?? 町長案件じゃねえか!! おい! こいつら、すぐに買い取らせてくれ!」
「いいですけど……いくらで買い取ってくれますか?」
「ああ、そうだな。クリーンスライムが一匹金貨三枚、キャリーゴーレムが一匹金貨五枚。合計金貨十九枚でどうだ!!?」
「えぇー……」
俺が驚いて呆然としていると、鬼人は少し声を荒げて言った。
「なんだ! 足りねえのか!? じゃあ色付けて金貨二十枚だ! これ以上は出せねえ!」
「分かりました。いいですよ」
「おい! そこの猫! お前がテイマーだろ? 所有権を俺に移してくれ!」
「はいはい、いいですよ」
タルタルと鬼人が青色の光に包まれる。
どうやら、モンスターの所有権が移ったようだ。
それにしても、金貨はおそらくこの世界でも価値の高い通貨だろう。
ダンジョンマスターには不人気なモンスターが、ここまで高値で売れるとは思わなかった。
「おい、あんた。こいつらをどこで捕まえたんだ?」
「それはですね、その……」
おそらく需要の高いモンスターなのだろう。
ここで「ダンジョンで手に入れた」と話せば、スライムとゴーレム目当てに人が殺到するかもしれない。
まだ防衛体制も整っていない。
ダンジョンの情報を伝えるかどうか迷っていると、
「そうか、そうだよな。自分の狩場を教える冒険者はいないか」
鬼人は勝手に納得したようだった。
「じゃあ、こうしてくれ! またこいつらを捕まえたら、またウチに卸してくれ!」
「わ、分かりました」
「じゃあ買取代金だ! また来な!」
女性の鬼人から代金を受け取り、俺たちは店を後にした。
まるで嵐のような時間だった。
とりあえず、タルタルに確認してみる。
「金貨って、どれくらいの価値があるんだ?」
「ええと、町役場の職員で月給が金貨十八枚程度と言われています。ですので、マスターは今、職員一か月分ほどの給料を稼いだことになりますね」
「職員の人たち……」
なんだか職員時代を思い出して、涙が出そうだった。
似たような給料で毎日頑張っていたのに、今回はそこまで苦労することなく一か月分の給料を手にしてしまった。
少し感傷に浸っていると、タルタルがおずおずと声をかけてきた。
「あのー……しんみりしているところ申し訳ないのですが、私、お腹が空きまして……」
言われてみればその通りだ。
俺も腹が減ったし、こんな大金をポケットへ突っ込んだままダンジョンまで帰るのも不安である。
俺たちは町の商店街で、少し買い物をしていくことにした。




