ホーン町
「じゃあ、タルタル。早速町に行こうか!」
「承知しました、ダンジョンマスター。お供いたします」
「ちょ、おい! 俺は!? どうすんだ!? 神だぞ! 放置するのか!? レイジいいいいいい!!!!」
うるさい神は放置して、俺とタルタル、それにテイムモンスターたちの一行はダンジョンの外へ出た。
外は日本の時間にして十四時くらいだろうか。
太陽(?)はまだ高い。
ダンジョンが、まだ少し明るいだけの地下室なので、外は少し眩しい。
目をぱちぱちさせながら光に慣れ、俺は町へ向かって歩き出した。
確か、北へ行ったところにホーン町があるって話だったな。
少し歩いてみるか。
その道中、俺はタルタルと話をすることにした。
「その、ワーキャットって人の町にも入れるの?」
「いえ。我々モンスターは基本的に入れませぬ」
「なぬ!? じゃあ、テイムしたモンスター売れないじゃねーか!!」
「ご心配はいりませぬ。人の町には『獣人』という種族がおりまして、我々ワーキャットと瓜二つなのでございます」
「何が違うんだ?」
「生まれ方……ですかね。我々モンスターは魔力から生まれます。その点、亜人は親から生まれます。そして、モンスターは一代限りですが、亜人は子孫を残していきます。代わりに、モンスターは亜人に比べて寿命がとても長いのです」
「なるほどな。人から見て見分けはつくのか?」
「ぱっと見では分かりません。ですが、モンスターは体のどこかにコアの石があります。それさえ上手く隠せば、亜人と何ら変わりありません」
「なるほど、よく分かったよ。ありがとう」
「まあ、魔力視認系の魔法を使われたら一発でバレるんですけどね」
「おい! 危ねぇじゃねえか! バレたらどうなるんだよ!!」
「討伐されますね」
「されますねって……あっさりしてんな……」
「まあ、これでも長いこと生きています。そうそうバレませんよ」
「まあ、もう行くしかないんだけどよ……」
男一人、獣人一人、モンスター五匹。
ぱっと見は怪しい集団だ。
だが町が近づいてくると、別にこれくらい普通なんだと思えてきた。
町の周囲には、奇抜な格好をした男や、ほとんど布だけの服を着た女、包帯をぐるぐる巻きにした人間(?)、犬耳の男、耳の長い女など、多種多様な人々が行き交っている。
俺たちなんて、森の中の一本の木みたいなものだ。
まったく目立たない。
さらに少し歩くと、町の入り口らしい大きな門が見えてきた。
「ここが入り口か?」
「そのようですね。では、中へ入りましょうか」
「ちょ! 見るからに守衛って感じだろ! そんなすんなり入れるのかよ!?」
「まあまあ、いいからいいから」
いかにも強そうな門番が、じーっと俺たちを見つめている。
俺たちが動くたびに、門番の首もこちらを追って動く。
……怖い。
普通に泣きそうだ。
すると、その門番が口を開いた。
「ホーン町へようこそ! ごゆっくりお過ごしください! 私はこの町のガイド、モルガンです。分からないことは何でもお聞きください!」
見た目に反して、とても丁寧な接客だ。
かなり好感が持てる。
「では、町のモンスター買取所を教えてください」
タルタルが慣れた様子で尋ねる。
「かしこまりました! こちらの道を真っ直ぐ進み、突き当たりを左へ曲がってそのまま進んでいただくと、黄色い建物が見えてまいります。そちらがモンスター買取所でございます!」
これまた丁寧な説明だった。
最後に、
「ありがとう、モルガン。良い一日を」
「お客様もホーン町をお楽しみください!」
と挨拶を交わし、俺たちは門を後にした。
……
「え!? そんなすんなり!?」
「ええ。門番は基本的に行政サービスですから。町へ来る方を歓迎するのが役目です。どの町も観光客を欲していますしね」
タルタルは少し笑う。
「もっとも、この国では人同士の争いがほとんどありません。人とモンスター、人とダンジョンの争いはよく起こっていますが」
「じゃあ、タルタルがモンスターだってバレたら……」
「討伐隊が結成されるでしょうね」
「マジか……」
「マジです」
そう話しているうちに、タルタルが足を止めた。
「さあ、レイジさん。着きましたよ」
目の前には黄色い建物。
そして、その看板には――
『モンスター買取 買いブツくん』
「上手いこと言ってんじゃねえ!!!!」
黎二は思わずツッコんでしまった。




