クリーンスライム
こうしてダンジョンの卵が出来上がったわけだが、次は何をすればいいんだ?
早速、ダンジョンの卵へと続く階段を下りながらそう尋ねると、クロノスは答えた。
「今のダンジョンは一階層だけあって、他には何もない状態だ。ここから階層を増やしたり、内装をいじったり、モンスターを配置したりしていくわけだが、それにもDPが必要になる」
「えー、初心者ボーナスとかないのかよ?」
「初期DPは全員共通だ。1000DP」
「まあ、いいか。んで、そのDPはどうやって使うんだ?」
「【オープンリスト】と唱えろ。今できることが一覧で表示される。ほら、やってみろ」
「【オープンリスト】」
ブンッ――。
軽い電子音とともに、目の前へPCのポップアップ画面のようなものが現れた。
「うおっ! びっくりした……これがリストか」
「どんなのがあるんだ?」
「こんな感じだ」
俺が画面を見せようとすると、クロノスが首を振る。
「リストは基本設定で他人には見えないようになってる。ダンジョンの最重要機密だからな。設定を変えれば俺にも見えるぞ」
「なるほど」
設定画面を開く。
「これか。……って、まんまPCの設定画面じゃねぇか」
俺は『他人にも表示』へチェックを入れた。
「よし」
「どれどれ……これがお前のリストか」
クロノスが興味深そうに覗き込む。
「……ほう。なるほどな。おっ、こんなのもあるのか」
「ちょっ、俺もまだちゃんと見てないんだから先に見るなよ!」
慌てて画面を取り返す。
⸻
【リスト】
メニュー
物品▼
* モンスター(知能なし)
* 消耗品
* 備品
工事▼
* 新設
* 修繕
委託▼
* 管理
* 業務
* モンスター(知能あり)
⸻
「なんか見たことある画面だな……」
最適化された結果なのかもしれないが、この画面は公務員時代によく使っていた庁内システムによく似ていた。
「ほら、早速モンスターでも召喚してみろよ」
言われるがまま、俺は『物品』から『モンスター(知能なし)』を選択する。
すると一覧が表示された。
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物品▼
モンスター(知能なし)
・クリーンスライム 1DP
・キャリーゴーレム 5DP
・セラピーバット 5DP
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……見るからに無害そうな奴らばかりだ。
横に表示されているDPは、おそらく消費DPだろう。
俺は『クリーンスライム』をタップした。
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クリーンスライム
落ちているゴミを食べながら移動するスライム。
必要数【 】
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説明文の下に数量入力欄があった。
とりあえず【3】と入力し、確定を押す。
すると、仰々しい魔法陣が床に浮かび上がり、その中から緑色のスライムが三匹、ぷるんと飛び出してきた。
「おっ、クリーンスライムか」
クロノスが嬉しそうに頷く。
「こいつらは攻撃なんかしないが、ゴミを食ってくれる。地味だけど便利なんだ」
そしてニヤリと笑う。
「さあ、ダンジョンマスター。こいつらに命令してみろ。マスター権限でモンスターはお前の命令を聞くはずだ」
「無理だぞ」
「……へ?」
「無理だって」
俺は肩をすくめる。
「俺の縛り、忘れたのか?」
「縛り?」
「俺はこのダンジョンで生み出した資源を使えない」
「…………」
クロノスの動きが止まる。
「モンスターもダンジョン資源だからな。当然、命令権も使えない」
「いや待て待て待て待て!」
クロノスは慌てて叫んだ。
「それじゃダンジョンマスターじゃねぇじゃねぇか!!」
俺はそんなクロノスを横目に苦笑する。
一方その頃、クリーンスライム三匹は、命令されることもなく、のそのそとゴミを探し始めていた。




