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義務教育にはハマりません。  作者: juri


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涼花と香苗 最終回

 ごろりと涼花はベットに転がった。夜は大体、お風呂から上がったあとは、少し本かテレビを見て眠る。毎日その繰り返しだ。だが、今日は違った。

      

 涼花は部屋の隅に置かれていた来客用の布団をベットの隣に敷く。枕とサラリとしたタオルケットを並べると、ガチャリとドアが開く音がした。


 「お布団敷いてくれてありがとー」

 

 ショートパンツとTシャツに着替えた香苗は、そう言いながら布団にダイブした。

 

 今日は初めて香苗が涼花の家に泊まりに来ていた。なにか、大それた理由があるわけではない。香苗が『涼花ちゃんの家泊まりたーい』と言い、『いいよ、じゃあ週末ね』と涼花が返した、いう簡単な会話があっただけだ。


 なんだか、あっさり香苗が泊まることになった。


 「なんか、いい匂いがする。香苗ちゃん今日、シャンプー家から持ってきたの?」

 「私、シャンプーはこだわりあるのよー」


 香苗の髪はフローラルな香りを漂わせていた。香苗の髪に手を触れると、サラサラツヤツヤしていて、いつもとは違う香りが部屋の中に充満している。


 「夏休みの宿題って終わったー?」

 「2週間前に終わった。ちなみに絢斗も昨日、終わったって」


 香苗は口をポカンと開き、唖然とした顔をする。この様子だとやっていないらしい。絢斗もぎりぎりにやる方だが、昨日やっと終わったと連絡が来た。紅茶以外のメールで絵文字がついたのは久しぶりだ。

 

 「夏休みの宿題って、前日に終わらせるものじゃないの?」

 「余裕を持って終わらせるものだってば」


 そろそろ夏も終わりだ。そんな様子で間に合うのだろうか、と涼花は香苗を見る。


 「大丈夫、大体土壇場でどうにか行くからさー」

 「土壇場って言っても限度があるでしょ」

 「へいきへいき、やる時やる女だから私」

 

 やる時はやる女、確かに香苗はやる時はやる。意外と周りにその苦労は見えてないが、やる時はやるのだ。表ではくだらないことをしていても、裏では思考を巡らせる。香苗はそんな人物だった。


 そんなところが、涼花は素直に好きだなと思う。


 「あの雨の日からさー、3ヶ月ぐらいだったじゃん?」


 そして、突拍子もない事を言い放つのも香苗という人物だった。


 そういえば、丁度3ヶ月ほど経つだろう。雨の中、原宿に行かない?と言われたあのときは人生で一番衝撃的だった。この先の人生にもそうそうないほどの出来事だっただろう。いや、そんなに頻繁に起こっても困るのだが。


 「そう言えば3ヶ月ぐらい経ったね」

 「激動でしたねー」


 香苗がほぼ激動の原因だよ、とは流石に涼花も言わない。その激動にわざとのっている事も言わない。


 ―――だけど、その激動が本当に


 「ありがとね」

 

 と思っている事は伝えておく。言わなければ伝わらない事はいくらでもあって、言わないほうが良いこともいくらでもあって。だけど、感謝の気持ちはわざと声に出さなければいけない。これは、絢斗から教わったことだ。


 「そうだよー、私は涼花ちゃんの恩人だからさー」

 

 わかっていない。どこまでも、香苗はわかっていない。自分で自画自賛をしながらも、自分の凄さを理解していない。


 (人に対する洞察力はいいくせに、香苗ちゃんは自己理解がまだまだだな)


 涼花は心の中でつぶやきながら、自分のベットに座る。寝るときに邪魔にならぬよう、器用に自分の髪を緩い三つ編みにしていった。


 「ねえ、香苗ちゃんって学校好き?」


 ふと、思ったことを涼花は口にした。


 「不登校生に聞くセリフじゃないよー」


 確かにそうだ、涼花はくくく、と笑う。


 「私、学校の自分のクラス嫌いじゃなかったんだ。好きだった」


 涼花の周りには優しい友人がたくさんいて、担任の先生にも恵まれていた。担任の加川先生も『俺は良い教師じゃないから』が口癖なのだが、悪い教師はわざわざそんなこと言わないだろう。

 

 「へぇー、私もー」


 香苗はごろごろと布団の上を転がる。 


 「だけど、フリースクール選んだんだ」

 「義務教育にハマる必要性はないからねー」


 枕に顔を突っ込みながら、香苗は言う。ちょっといい感じのセリフなのに、枕に顔を突っ込みながら言わないで欲しい。

 

 こんなところまで、香苗は香苗だった。


 涼花を涼花のままでいさせてくれた、香苗だった。

 

皆様、【義務教育にはハマりません。】のご拝読ありがとうございました!!


前話でお話がいい感じに締めてしまっていたので、最終回どうしようかな……と悩んで投稿するのが遅れてしまいました………


でも、【義務教育にはハマりません。】の最終回は涼花と香苗じゃないと!と思い今回投稿をさせていただきました!


以前の涼花と香苗は、たまに連絡を取る友人同士だったのですが、二人ともお互いのことを知っていくうちにお互いのことを深くわかるようになっていく……親友のような関係です!この2人で最終回を締めることができて本当に嬉しいです♪


……とはいえ、まだ終わりではありません!

これから、香苗の過去や、フリースクールテントの生徒たちの番外編も投稿する予定ですし、新作も投稿する予定です!そちらも一緒に見ていてくださると嬉しいです!


ここまで読んでくださった皆さま、ぜひ最後に感想や、この物語について思ったことなどをコメントしてくれると嬉しいです!

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