絢斗と涼花
短めです
夏はますます、深まっていた。
暑さは夕方になると和らぎ、夜になると涼やかな風が吹くようになっている。涼花は夏の夜が特に好きだった。家から眺める外の夜は静かでたまに聞こえる車の音に耳を澄ましてるのが好きだ。
今はちょうど、夜の一歩手前、暑さが和らいできた頃だった。夕日が落ちかかり、空を茜色に染めている。
「夕方になって、涼しくなってきた」
ぽつりと絢斗が言った。どうやら、同じ事を思っていたらしい。
中学ではなく、涼花はフリースクールを選んだ。今まで当たり前だった場所《学校》は涼花にとっては苦痛で、絢斗にとっては楽しい場所《学校》だ。そんな二人は駅まで歩きながら肩を並べる。
絢斗はなぜか機嫌がよく、鼻歌を歌っていた。
そして、涼花も機嫌がよかった。一つ、区切りがつきスッキリしたのだろう。
「一区切りついて、すっきりした」
「それは、俺も嬉しい」
これからも、きっと絢斗は涼花が嬉しいときに喜んでくれる。
涼花の身の回りには、涼花を助けてくれる人が多くいた。香苗や絢斗はその筆頭だ。元々いたはずなのに、ギリギリまで我慢して結局行けなくなって。
自分から、遠ざけて。
それも仕方なかった。
もう、笑うのに疲れてしまって、毎日、目の前のことで手一杯で。
だから、今は仕方なかったと思いながら、広くなった視野で色んな人を見てみたい。
ふいに絢斗の鼻歌が消えた。なんだろうか、と涼花は少し後ろに歩いていた絢斗を振り返る。
「これからは、外で会おう」
無駄にさらさらな髪を、夕方の涼やかな風になびかせて絢斗は言った。絢斗と涼花は今まで学校で主に会っていたが、これからはそうはいかない。
「もちろん」
涼花は、ほんのりと微笑んだ。




