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義務教育にはハマりません。  作者: juri


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10/13

涼花とおはよう前編

 ゆらりゆらりと右へ左へ揺れていた。時折ばさっと音がし、前にかくんとなる。


 どれだけ、眠かったのか、と涼花は電車に乗りながら横に座る少女を見る。今日はフリースクールテントに初めて行くから涼花の時間に合わせて起床してくれたのだろう。


 横で揺れているのは少女――香苗だ。


 香苗はパリッとした半袖シャツのワンピースを着ていた。髪をポニーテールに縛っていて夏真っ盛りの今にはぴったりな装いだ。頭が動くたびにポニーテールがバサッと窓ガラスに当たる。


 涼花は香苗の頭を手でそっと自分の肩に乗せると同じく目を瞑った。




「今日は人が少なくて、午後になってくると増えると信じたいのだけど」


 上品に頬に手を当てながら、フリースクールテントのスタッフ都は嘆いた。


 涼花は何度か契約のためにテントに訪れた事はあり、都とも何回か会ったことがある。マダムって感じの人だ。この人に会って何人がそう思っただろうか。


 そんな都が言うようにテントには香苗と涼花以外おらず、貸切状態だ。


「都さーん、水筒忘れちゃったからお水くーださい」

「はいはい」


 香苗が言うので、都は紙コップを出し手渡す。


 テントはとても開放感があった。ビルの上にあるため、下が見下ろせる。部屋にはソファが一つあり、向こうの部屋には勉強机とダイニングテーブルが並んでいる。


 なかなか洒落ていて、ウォーターサーバーも完備されているのだから、設備は整っている。ウォーターサーバー以外にも、レンジや冷蔵庫、加湿器などが置かれており家と変わらない。


 本棚も置かれているので、後であさろうと涼花は決意している。


 ちょろちょろと音をたてながら香苗は紙コップに水を入れる。


「ここのウォーターサーバーあんま美味しくないんだよなぁー、水道水の味ー」


 香苗はもらっておいて、不味いと文句を言う。


 (そんな言うなら水道水汲んで来い)


「そうなのよ、ここ不味いの。でも、私は清潔だから不味くても気にしないわ」


 都は都で極論ともいえる意見を言う。


 そんな会話をしているとピンポーンと音がなった。


 ピンポーンの後にベートーヴェンの運命が鳴り響いている。テーマソングなのだろうか。


「なんか、初期設定がインターホンの音の後に運命だったらしいよー、めんどくて、そのまんま運命」


 涼花の思いに気づいたらしい香苗は、水の入った紙コップを持ったまま、小話を入れてくる。それにしても、初期設定がおかしくないか。


「おはよう」


 なんだか言いづらそうにドアの方から声がかかった。マッシュヘアの同い年ほどの少年が涼花と香苗の前に立っている。銀色のロングネックレスをしていること以外は特徴の無いシンプルな装いだ。


「おはよー」

「初めまして」


 ギロリと睨むように偵察される。少年はバッグも置かず、下から上へと涼花を見た。どうすればいいか分からず、涼花はしばし突っ立つ。沈黙を破ったのは香苗だった。


「白井涼花ちゃん、中学2年で同い年だねー。それと、海斗くん偵察の視線やめようー。涼花ちゃんは別に海斗くんをとって食わないからね」


 海斗は警戒の視線をほんの少し柔らかくした。だが、まだ海斗が作り出す壁は富士の山ほどある。


「初めまして、幸村海斗ゆきむらかいとです。香苗ちゃんからお話は伺っております。」


 (なぜ、敬語)


「こちらこそ初めまして、白井涼花です」


 涼花が言い終わると海斗はすぐにバッグを置きに行ってしまう。呆然としている涼花の肩に手香苗は手を置く。


「大丈夫、私の時は2ヶ月は話しかけてくんなオーラ出されたから」

「はーい勉強の時間です!」


 都さんの声で短くとも長い1日が始まった。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

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ご拝読ありがとうございました!!!

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