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異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


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第16話

登場人物


―第十六話:クマガワタクミ―



三神凌牙


LOOP世界へ送り込まれた一般男性。

セラの記憶と同期しながら、世界の真実へ近づいていく。



セラ


幾度ものLOOPで戦い続けた存在。

現在は三神の中で記憶が覚醒し始めている。



終焉のセラ


絶望の果てに生まれた未来のセラ。

「世界は救えない」と断言する危険存在。



クロガミ


現在の観測者。

感情を持った“失敗した観測者”と呼ばれている。



クマガワタクミ


始原のクロガミの本名。

最初の観測者であり、管理者を創造した人物。


かつては普通の人間だった。



管理者


クマガワタクミの“同期”から生まれた世界修正存在。

現在は制御不能となり、創造主すら排除対象にしている。



時頼の巫女


時間とLOOPを観測する最古の巫女。

クマガワタクミの過去を知る存在。



フィリア


鐘楼を守る少女。

世界崩壊の中でも希望を捨てていない。



ララガミ


時の鐘を鳴らした少女。

クロガミを強く信じている。



用語


クマガワタクミ


始原のクロガミの本名。

最初に観測者となった人間。



同期


クマガワタクミと同じ時代を生きた存在。

後に“管理者”へ変貌した。



観測者


LOOPと世界を監視する存在。

“クロガミ”は役職名であり、個人名ではない。



世界修正機構


世界崩壊を防ぐために作られたシステム。

現在は暴走し、世界そのものを消去し始めている。

第十六話


―クマガワタクミ―


崩壊した空。


赤い雷。


止まらない終末時計。



十四文字時計は。


まだ逆回転を続けていた。



カチ……


カチ……



その音を聞きながら。


三神凌牙 は座り込んでいた。


頭が追いつかない。



観測者。


管理者。


始原のクロガミ。


終焉のセラ。


全部繋がっている。


だが。


まだ足りない。



「なぁ」


三神が顔を上げる。



「始原のクロガミって」


「結局誰なんだ」


静寂。



クロガミ は黙る。


珍しく。


笑わない。



その横で。


時頼の巫女 が小さく目を伏せた。



「……話す時が来ましたか」


空気が重くなる。



遠く。


白いコート。



始原のクロガミ


彼は静かに時計を見ていた。



三神。


「お前」


「本当に誰なんだよ」


始原のクロガミはゆっくり振り返る。


その瞳。


冷たい。


だが。


どこか寂しい。



「昔の名前か」


静かな声。



「もう忘れたと思っていた」


クロガミが苦しそうに言う。



「やめとけ」


始原のクロガミ。


「今さら隠しても無意味だ」


沈黙。



そして。


彼は言った。



「俺の名は」


「クマガワタクミ」


世界停止。



三神。


「……は?」


フィリア。


ララガミ。


時頼の巫女。


全員が黙る。



クマガワタクミ


それが。


始原のクロガミの本当の名前。



三神。


「人間……だったのか?」


クマガワタクミ。


「昔はな」


静かな返事。



クロガミが壁へ寄りかかる。


疲れ切った顔。



「ワシと同じや」


三神。


「え?」


クロガミ。


「観測者になる前は」


「ただの人間やった」



三神の背筋が凍る。



「待て」


「じゃあ管理者って……」


クマガワタクミが空を見る。


巨大な“目”。



管理者


ノイズ。


絶叫。


崩壊。



クマガワタクミ。


「アイツは俺の同期だ」


静寂。



「同期……?」



クマガワタクミ。


「同じ世界で」


「同じ時代を生きた」


「同じ絶望を見た」


「……親友だった」


空気凍結。



クロガミが目を閉じる。


知っていた。


全部。



三神。


「親友……」


クマガワタクミ。


「名前はもう失われた」


「管理者になった時点でな」


時計が鳴る。


ゴォォォン……



クマガワタクミが静かに続ける。



「世界は壊れた」


「何度救っても」


「人は争い」


「神は狂い」


「滅び続けた」


その瞳。


完全な絶望。



「だから俺達は決めた」


「感情を捨て」


「世界を修正する側になると」


三神。


「それで管理者を……」


クマガワタクミ。


「作った」


静寂。



「だが」


「アイツは壊れた」


空の“目”が揺れる。


まるで怒るように。



CREATOR

LIAR



全員が凍る。


管理者が喋った。


初めて。



クマガワタクミ。


「……そう思うよな」


悲しそうな声。



「俺は逃げた」


「感情を捨てきれなかった」


「世界を壊す覚悟も」


「完全に救う覚悟も」



クロガミが小さく言う。



「だからアンタは」


「ワシに全部押し付けた」


クマガワタクミは否定しない。



三神。


「じゃあお前は」


「何のために戻ってきた」


静寂。



クマガワタクミは三神を見る。


まっすぐ。



「確認しに来た」


「お前が」


「俺と同じ絶望へ辿り着くかを」


その瞬間。


終焉のセラが笑った。



終焉のセラ


「もう辿り着いている」


空気が凍る。



終焉のセラ。


「だから俺はここにいる」

―クマガワタクミの前世―


静かな部屋。


窓の外では。


世界が終わりかけていた。


だが。


この部屋だけは妙に落ち着いている。



古い机。


止まった時計。


そして。


一枚の写真。



写真には二人の少年が写っていた。


笑っている。


普通に。


どこにでもいる学生みたいに。



クマガワタクミ


そして。


もう一人。


顔だけが焼け焦げて見えない。



その写真を。


三神凌牙 が見つめていた。



「……誰だよ」


静寂。



背後。


缶コーヒー。


もうお約束。



クロガミ


「昔話や」


三神。


「軽く言うなよ」



クロガミは写真を見る。


珍しく。


少し寂しそうだった。



「クマガワタクミはな」


「元々ただの高校生やった」


三神。


「高校生!?」


クロガミ。


「ワシら全員そうや」


「元は普通の人間」



三神が写真を見る。


制服。


夕焼け。


普通の日常。



「……信じられねぇ」


クロガミ。


「ワシもや」



その時。


部屋の奥。


白いコート。



クマガワタクミ


彼は静かに写真を手に取る。



「懐かしいな」


その声。


今までより少しだけ人間らしい。



三神。


「前世って何があったんだ」


クマガワタクミはしばらく黙る。


そして。


小さく言った。



「世界が終わった」


静寂。



「突然だった」


「空が裂け」


「海が消え」


「人が消えた」


時計の音。


カチ……



「俺達は生き残った」


「ほんの数人だけ」


三神。


「なんで……」


クマガワタクミ。


「分からない」


「ただ」


「最後まで残った」


その瞳。


強烈な疲労。



「毎日人が死んだ」


「助けられなかった」


「何も出来なかった」


静かな声。


なのに重い。



「だから俺は願った」


「もう二度と世界を壊したくないと」



三神。


「それで観測者に?」


クマガワタクミは頷く。



「管理者も同じだった」


「アイツは誰より優しかった」


空気が止まる。



「だから壊れた」


窓の外。


巨大な“目”。



管理者


静かにこちらを見ていた。



クマガワタクミ。


「優しい奴ほど」


「世界に絶望する」


クロガミが苦笑する。



「それは分かるわ」


三神。


「分かるな」



クマガワタクミが写真を見る。


焼けた半分。


見えない顔。



「……あの日」


「俺達は約束した」


静かな声。



「次の世界では」


「誰も泣かせないと」


その瞬間。


写真の裏から。


古びた学生証が落ちる。



三神が拾う。


そこに書かれていた名前。



熊川 拓海

城乃内高校 二年A組



そして。


その横。


もう一枚。


焼け焦げた学生証。


名前だけが辛うじて読めた。



神代――


文字が途中で消えていた。



クロガミの笑みが止まる。


クマガワタクミも黙る。



三神。


「……誰だよ」


静寂。



その時。


外から。


終焉のセラの声。



終焉のセラ


「思い出すな」


空気凍結。



「その名前を思い出した瞬間」


「全部終わる」

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