第18/17話
登場人物
―第十七話・第十八話―
⸻
三神凌牙
LOOP世界へ送り込まれた一般男性。
クマガワタクミとの戦いの中で覚醒を始める。
白の世界で“本当のセラ”と出会う。
⸻
セラ
無数のLOOPを繰り返してきた存在。
現在は“白の世界”の最深部に孤独に存在している。
LOOPの核そのもの。
⸻
終焉のセラ
絶望した未来のセラ。
「世界は必ず終わる」と確信している。
白の世界にも存在している。
⸻
クマガワタクミ
始原のクロガミの本名。
世界を終わらせることで救済しようとしている。
三神へ“絶望した未来”を見せる。
⸻
クロガミ
現在の観測者。
三神へ「最後まで足掻け」と言葉を残す。
⸻
時頼の巫女
時間とLOOPを観測する最古の巫女。
三神の覚醒を見届ける。
⸻
フィリア
鐘楼を守る少女。
三神達の戦いを見守っている。
⸻
ララガミ
時の鐘を鳴らした少女。
LOOP世界崩壊の中でもクロガミを信じ続けている。
⸻
管理者
世界修正を行う超越存在。
白の世界へ侵入し、“CORE FOUND”を宣言する。
⸻
用語
白の世界
LOOPの最深部に存在する空間。
セラだけが存在していた孤独な領域。
⸻
LOOPの底
記憶・因果・失敗した未来が沈む場所。
無数の“セラ”が蓄積されている。
⸻
観測領域
クマガワタクミが展開した特殊空間。
滅びた未来や世界線を具現化できる。
⸻
CORE FOUND
管理者によるLOOP核発見宣言。
セラの存在がLOOPそのものの核であることを意味する。
第十七話
―三神 VS クマガワ―
赤い空。
終末時計。
逆回転。
止まらない世界崩壊。
⸻
鐘楼の外。
世界の境界線。
そこに二人は立っていた。
⸻
三神凌牙
そして。
⸻
クマガワタクミ
静かな対峙。
⸻
誰も口を開かない。
風だけが吹く。
⸻
遠く。
クロガミ が壁にもたれていた。
隣には。
時頼の巫女
フィリア。
ララガミ。
全員が見守っている。
⸻
三神が先に言った。
⸻
「お前の言いたいことは分かる」
クマガワタクミ。
「そうか」
三神。
「でも」
「世界を壊して終わりなんて認めねぇ」
静寂。
⸻
クマガワタクミ。
「まだ言えるか」
「その段階で」
三神。
「何度でも言う」
クマガワタクミが目を閉じる。
少しだけ。
苦しそうに。
⸻
「昔の俺と同じだ」
その瞬間。
空間が歪む。
⸻
観測領域展開。
⸻
世界が白黒になる。
時間停止。
空気停止。
音停止。
⸻
三神。
「うおっ!?」
クロガミ。
「始まったな」
⸻
クマガワタクミの周囲へ。
無数の時計。
無数の世界線。
崩壊した未来。
⸻
「これが現実だ」
静かな声。
⸻
「救えなかった世界」
「滅びた未来」
「死んだ仲間」
映像が流れる。
⸻
フィリアの死。
ララガミの消滅。
時頼の巫女の崩壊。
クロガミの最後。
⸻
そして。
三神自身が絶望し。
終焉のセラへ変わっていく未来。
⸻
終焉のセラ
彼は遠くから静かに見ていた。
⸻
クマガワタクミ。
「これがLOOPの終点だ」
「必ず辿り着く」
三神は震える。
息が止まりそうになる。
⸻
「だから」
「世界は終わらせるべきだ」
静寂。
⸻
だが。
三神は拳を握る。
⸻
「知らねぇよ」
クマガワタクミ。
「……何?」
三神。
「そんな未来」
「見せられても」
「だから諦める理由にはならねぇ」
空気が止まる。
⸻
クロガミが小さく笑う。
⸻
「言うと思った」
時頼の巫女も目を閉じる。
少しだけ安心したように。
⸻
クマガワタクミ。
「強がりだ」
三神。
「かもな」
一歩前へ。
⸻
「でも」
「お前みたいにはならない」
その瞬間。
クマガワタクミの表情が変わる。
ほんの少しだけ。
怒り。
⸻
「俺を否定するか」
三神。
「する」
即答。
⸻
超振動。
空間崩壊。
⸻
クマガワタクミの背後へ。
巨大な観測輪。
⸻
OBSERVER SYSTEM
FULL OPEN
⸻
世界が裂ける。
⸻
三神。
「うわっ!?」
クロガミ。
「避けろぉ!!」
白い閃光。
消滅光。
⸻
三神が飛ぶ。
ギリギリ回避。
地面消失。
空間蒸発。
⸻
フィリア。
「威力おかしいですよ!?」
クロガミ。
「アイツ基準で喋るな!!」
⸻
クマガワタクミ。
「終わらせる」
「今ここで」
その瞬間。
三神の中。
セラの記憶。
LOOPの記憶。
全部が共鳴する。
⸻
鐘。
炎。
仲間。
涙。
笑顔。
⸻
そして。
クロガミの声。
⸻
『最後まで足掻けや』
⸻
三神の瞳が光る。
⸻
「……負けねぇ」
世界震動。
⸻
黒い炎。
白い雷。
二つの力が混ざる。
⸻
時頼の巫女が目を見開く。
⸻
「まさか……」
クロガミ。
「覚醒しよった」
⸻
三神の背後。
巨大な鐘の幻影。
そして。
無数の世界線。
⸻
クマガワタクミが初めて驚く。
⸻
「お前……」
三神は拳を構える。
⸻
「終わりたきゃ」
「一人で終われ」
静寂。
⸻
「俺は」
「まだ諦めてねぇ!!」
第十八話
―白の世界―
静寂。
音がない。
風もない。
空もない。
⸻
ただ。
白。
どこまでも。
果てなく。
真っ白な世界。
⸻
三神凌牙 はゆっくり目を開けた。
⸻
「……ここ」
声が響かない。
地面も曖昧。
上下すら分からない。
⸻
さっきまで戦っていたはずだった。
クマガワタクミ。
観測領域。
崩壊。
閃光。
⸻
全部消えていた。
⸻
「夢……?」
違う。
もっと嫌な感覚。
⸻
三神は歩く。
どこへ向かうでもなく。
白の中を。
⸻
足音だけが響く。
コツ……
コツ……
⸻
その時。
遠くに人影。
⸻
一人だけ。
立っていた。
⸻
長い髪。
白い服。
静かな瞳。
⸻
セラ
三神が止まる。
⸻
「……お前」
セラは微笑む。
優しく。
悲しそうに。
⸻
「やっと会えたね」
静寂。
⸻
三神。
「ここどこだよ」
セラ。
「記憶の最深部」
「LOOPの底」
三神。
「LOOPの……底?」
⸻
セラが白い世界を見る。
⸻
「ここには私しかいない」
その声。
あまりにも孤独だった。
⸻
三神。
「クロガミ達は?」
セラ。
「届かない」
「管理者も」
「クマガワタクミも」
「誰も」
白。
永遠の白。
⸻
三神は少し寒気を覚える。
⸻
「……ずっとここにいたのか」
セラは笑う。
弱い笑み。
⸻
「うん」
「何回も死んで」
「何回もやり直して」
「気づいたら」
「ここにいた」
静寂。
⸻
「最初は怖かった」
「でも慣れた」
三神。
「慣れるなよ……」
セラ。
「そうだね」
少しだけ笑う。
⸻
白い空間の奥。
無数の影。
⸻
全部。
“セラ”だった。
死んだセラ。
壊れたセラ。
絶望したセラ。
⸻
終焉のセラもいる。
遠くでこちらを見ていた。
⸻
三神。
「何なんだよこれ……」
セラ。
「失敗した私達」
「全部」
静寂。
⸻
三神。
「お前」
「なんで戦ってたんだ」
セラは少し考える。
そして。
小さく答えた。
⸻
「誰かを守りたかった」
白い世界。
何もない。
⸻
「でも」
「守れなかった」
その瞬間。
白い世界へヒビ。
⸻
パキ……
⸻
三神。
「!?」
セラが目を細める。
⸻
「もう時間がない」
三神。
「どういうことだ」
セラ。
「クマガワタクミが」
「世界を閉じようとしてる」
白い空間が崩れ始める。
⸻
終焉のセラが遠くで呟く。
⸻
終焉のセラ
「無駄だ」
「結局全部終わる」
セラは振り返らない。
⸻
「違う」
終焉のセラ。
「同じだ」
静かな声。
壊れた声。
⸻
「お前も」
「いずれ俺になる」
白い空間が崩壊していく。
⸻
セラが三神を見る。
まっすぐ。
⸻
「お願い」
静かな声。
⸻
「私を終わらせて」
世界停止。
⸻
三神。
「……は?」
セラ。
「私がいる限り」
「LOOPは終わらない」
静寂。
⸻
「だから」
「私を消して」
三神が後退る。
⸻
「ふざけんな」
セラは笑う。
泣きそうな顔で。
⸻
「優しいね」
その瞬間。
白い世界が大きく割れた。
⸻
黒いヒビ。
そこから。
巨大な“目”。
⸻
管理者
侵入。
⸻
CORE FOUND
⸻
セラが静かに目を閉じる。
⸻
「来たね」
―セラに戻り、白の世界とは―
白い世界。
何もない。
音もない。
風もない。
⸻
ただ。
真っ白。
永遠みたいな静寂。
⸻
その中で。
セラ は座っていた。
膝を抱えて。
静かに。
⸻
そこへ。
ゆっくり歩いてくる。
⸻
三神凌牙
三神は周囲を見る。
改めて。
何もない。
⸻
「……ここさ」
「マジで何なんだ」
セラは少し考える。
そして。
困ったように笑った。
⸻
「墓場かな」
三神。
「重っ」
⸻
セラは白い空間を見る。
遠く。
無数の影。
全部。
“自分”。
⸻
「ここはね」
「失敗した私達が流れ着く場所」
静かな声。
⸻
「泣いた私」
「諦めた私」
「壊れた私」
「全部ここに沈んでる」
三神。
「嫌すぎる場所だな……」
セラ。
「うん」
即答。
⸻
その瞬間。
遠くで終焉のセラが座っている。
⸻
終焉のセラ
無言。
でも聞いてる。
⸻
三神。
「……戻れないのか?」
セラ。
「昔は戻れた」
静寂。
⸻
「でもLOOPを繰り返すたび」
「ここに近づいて」
「最後には出られなくなる」
三神。
「お前は?」
セラ。
「半分ここ」
笑う。
寂しそうに。
⸻
「だから今」
「あなたが動いてる」
三神は目を細める。
⸻
「俺が……代わり?」
セラ。
「うん」
静寂。
⸻
白い空間。
そこへ小さな鐘の音。
⸻
カァァァン……
⸻
セラが目を閉じる。
懐かしそうに。
⸻
「フィリアの鐘だ」
三神。
「届いてんのか」
セラ。
「ずっと届いてた」
少しだけ涙。
⸻
「だからまだ」
「完全には壊れなかった」
三神は何も言えない。
⸻
その時。
空間へ黒いヒビ。
⸻
パキ……
⸻
三神。
「またかよ」
セラ。
「管理者が近い」
静寂。
⸻
三神。
「なぁ」
「お前はどうしたい」
セラは少し驚く。
⸻
「どうしたい……?」
三神。
「消えたいのか」
白い世界。
沈黙。
長い沈黙。
⸻
やがて。
セラは小さく言った。
⸻
「……本当は」
「生きたかった」
世界停止。
⸻
「普通に」
「笑って」
「誰かとご飯食べて」
「怒られて」
「泣いて」
「それだけでよかった」
涙。
白い世界へ落ちる。
⸻
「でも」
「それが一番難しかった」
三神が目を閉じる。
苦しそうに。
⸻
終焉のセラが遠くで呟く。
⸻
「だから世界は終わる」
セラは首を振る。
静かに。
⸻
「違う」
終焉のセラ。
「何が違う」
セラ。
「まだ」
「諦めてない人がいる」
静寂。
⸻
その瞬間。
白い世界の遠く。
小さな黒い扉。
⸻
ギギ……
ゆっくり開く。
⸻
三神。
「……何だあれ」
セラが目を見開く。
⸻
「嘘」
その扉の向こう。
聞こえてくる声。
⸻
クロガミ
『おーい』
『迎え来たでー』
⸻
三神。
「軽っ!?」




