第19話
登場人物
―第十九話:誰もいない白―
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セラ
白の世界で目を覚ました存在。
三神もクロガミも消え、再び孤独な“LOOPの底”へ戻る。
無数の失敗した未来と向き合いながら、幼い頃の自分と再会する。
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幼きセラ
LOOPが始まる前の幼いセラ。
白の世界に現れた“記憶の欠片”。
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管理者
白の世界へ侵入した超越存在。
“CORE FRAGMENT”を検知し、幼きセラを削除しようとする。
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クロガミ
白の世界へ繋がる黒い扉の向こうから現れる観測者。
セラを迎えに来る。
第十九話
―誰もいない白―
白。
どこまでも白。
空もない。
地面もない。
ただ。
終わりのない静寂だけが広がっていた。
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セラ はゆっくり目を開ける。
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「……」
声を出しても。
響かない。
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誰もいない。
本当に。
誰も。
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三神も。
クロガミも。
フィリアも。
ララガミも。
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最初から存在しなかったみたいに。
消えていた。
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セラは静かに立ち上がる。
白い世界を見渡す。
何もない。
変わらない。
いつもの景色。
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「戻ってきたんだ」
小さな呟き。
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ここは。
白の世界。
LOOPの底。
失敗した未来が沈み続ける場所。
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セラは歩く。
コツ……
コツ……
足音だけが響く。
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どこへ向かっているのか。
自分でも分からない。
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ただ。
止まると。
全部終わってしまいそうだった。
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白い空間の奥。
ぼんやりと影が見える。
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近づく。
そこにいるのは。
全部。
自分だった。
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泣いているセラ。
壊れたセラ。
笑わなくなったセラ。
絶望したセラ。
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無数。
終わりなく。
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セラはその光景を見ても。
もう驚かない。
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「……増えたなぁ」
静かな声。
疲れ切った声。
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一人のセラが呟く。
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「もう無理だよ」
別のセラ。
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「また失敗した」
さらに別のセラ。
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「誰も救えなかった」
その声が。
白い世界に溶けていく。
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セラは目を閉じる。
聞き慣れた絶望。
全部。
自分の声だった。
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「うるさいな」
小さく呟く。
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「まだ終わってない」
その瞬間。
白い空間へヒビ。
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パキ……
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セラが顔を上げる。
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また。
世界が壊れ始めていた。
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遠く。
巨大な“目”。
白の世界を見下ろしている。
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管理者
静かなノイズ。
感情のない声。
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CORE CONFIRMED
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セラは苦笑する。
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「ほんと」
「しつこいなぁ」
管理者。
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LOOP CORE
DELETE
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白い光が集まる。
消去。
完全削除。
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セラは逃げない。
ただ静かに立っている。
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「消えたら」
「終わるのかな」
白い光が近づく。
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セラはゆっくり目を閉じる。
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その時だった。
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カァァァン……
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鐘の音。
優しい音。
白い世界へ響く。
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セラが目を見開く。
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「……え?」
ありえない。
ここに音は届かない。
誰も来れない。
そのはずだった。
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カァァァン……
もう一度。
鐘が鳴る。
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すると。
白い世界の奥。
小さな黒い点。
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それは少しずつ大きくなる。
黒い扉。
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ギギ……
ゆっくり開く。
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暗闇。
その向こう。
誰かが立っている。
顔は見えない。
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だが。
セラは知っていた。
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その気配。
その空気。
その面倒臭そうな存在感。
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そして。
聞こえてくる声。
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クロガミ
『何黄昏れとんねん』
静寂。
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セラの目から涙が落ちる。
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『迎え来たで』
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白い世界が。
少しだけ。
暖かく見えた。
―シロガミ―
白の世界。
静寂。
どこまでも続く白。
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黒い扉。
その前で。
セラ は涙を拭いていた。
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扉の向こう。
聞こえる声。
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クロガミ
『迎え来たで』
いつもの軽い声。
少し安心する声。
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セラが小さく笑う。
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「遅いよ」
クロガミ。
『世界崩壊対応で忙しいねん』
セラ。
「通常営業みたいに言わないで」
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その時だった。
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白い世界が揺れる。
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パキ……
ヒビ。
しかも。
今度は黒ではない。
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“白いヒビ”。
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クロガミの声が止まる。
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『……は?』
セラも振り返る。
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白い空間。
そこが裂ける。
ゆっくり。
静かに。
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そして。
現れた。
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白いコート。
白い髪。
白い瞳。
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まるで。
この世界そのものみたいな存在。
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シロガミ
静かに立っている。
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クロガミ。
『……おいおい』
珍しく。
本当に珍しく。
声が引きつっていた。
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セラ。
「……誰」
シロガミは答えない。
ただ。
ゆっくり周囲を見る。
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無数のセラ。
白の世界。
管理者。
全部を。
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そして。
初めて口を開く。
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「失敗作ばかりだな」
空気凍結。
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クロガミ。
『うわ最悪や』
セラ。
「知ってるの?」
クロガミ。
『知りとうなかった』
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シロガミが黒い扉を見る。
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「久しいな」
「クロガミ」
クロガミ。
『その呼び方やめぇ』
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セラが混乱する。
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「誰なの」
シロガミはセラを見る。
白い瞳。
感情がない。
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「お前がセラか」
静かな声。
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「なるほど」
「まだ壊れていないのか」
セラ。
「だから誰!?」
シロガミ。
「俺か?」
少しだけ考える。
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「白の観測者」
「シロガミ」
世界停止。
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クロガミ。
『出てくるの早すぎるやろ……』
セラ。
「観測者って何人いるの……」
クロガミ。
『ワシも知らん』
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シロガミが白い空間へ手を伸ばす。
その瞬間。
無数の絶望したセラ達が静止する。
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管理者の“目”が揺れる。
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管理者
UNKNOWN OBSERVER
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シロガミ。
「騒がしいな」
その一言。
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管理者のノイズが止まる。
完全停止。
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セラ。
「え……?」
クロガミ。
『相変わらず無茶苦茶やなコイツ』
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シロガミがセラへ近づく。
静かに。
ゆっくり。
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「聞こう」
「お前は誰だ?」
セラが固まる。
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「……私?」
シロガミ。
「そうだ」
「セラとは何だ」
白い世界。
静寂。
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セラは答えられない。
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すると。
シロガミが小さく笑う。
初めて。
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「なら」
「まだ終わっていない」




